2021-01-01から1年間の記事一覧

最終飛行

星の王子様で知られるフランスの作家サン-テグジュベリが主人公の長編小説。パイロット出身で大戦中は空軍で偵察任務にあたる。すでに予備役編入の年齢だが、本人は祖国愛から従軍を志願。最期は撃墜され戦死を遂げる。占領下の祖国を離れ北アフリカ、さらに…

ハイブリッド戦争

副題にあるようにロシアの最新の国家戦略を、テクノロジーと地政学的な戦略から解説する。サイバー攻撃とハードパワーにより、民意を有利に導き、軍事力と結合させるハイブリッド戦略。クリミア併合と米大統領選で成果を上げる。正確な評価は証拠が残らない…

シークレットエクスプレス

ジェットコースター小説。青森から佐賀までの緊急貨物輸送。自衛隊の訓練を偽装しているが、実は原発の廃棄燃料輸送。不祥事から表に出せない裏事情。JR貨物の運転士出身のプロが主役。新聞社の女性記者と原発反対派が列車を追う。最後は小泉首相がモデルの…

最後の読書

連載エッセイ。老境に入った自らの読書に関する近況を綴る。残りの人生を考えざるを得ない年齢。過去の膨大な遍歴を見返すと本人も自覚されているが少年期、青年期に立ち返るものが多い。書評の部分では同世代の作家の動向に関するものも多い。残念ながら世…

経済成長なき幸福国家論

対談。長期的な人口減少により日本経済の下り坂傾向は避けようがない。藻谷氏は人口動静を論じる。一般の認識とことなり東京は急激に高齢化が進む。高齢者の絶対数が多い。平田氏はユニークな活動をする地方自治体を紹介する。首長により面白い取り組みは現…

犬部

北里大学獣医学部の動物愛護サークルを描くノンフィクション。捨てられた犬猫を保護し、里親を見つける活動を続ける。その実態は生半可なものではなく、自らの生活を犠牲にしての闘いが続く。メンバーは獣医師の卵であり、意識は高いが葛藤は続く。一時廃部…

仕事ができるとはどういうことか

対談。ビジネス社会における「スキル」と「センス」を評価する。日本社会では前者に重きをおくが、重要なのは後者。定量的に評価しにくい能力であるが、一定以上の組織を率いるには必須。思考法はインサイドアウト。仕事は自らの意思の表明。著名な実例をあ…

ふくしま原発作業員日誌

原発事故から10年。現場で戦った作業員たちの記録。報道管制が厳しい中、丹念な取材で人間関係を構築。それぞれの思いと現場の理不尽さを描く。彼らを支えるのは郷土愛と使命感。厳しい労働環境と被爆の恐怖の中での奮闘には頭が下がる。もちろん危険手当…

金融バブル崩壊

警告の書。現在の金融市場は完全にバブルであり、早晩崩壊が避けられない。コロナ下で財政出動が加速され、行き場のない市場がマーケットを押し上げている。次に来るのはハイパーインフレ。理論的に考えるとまったく正しい見解。対策としては銘柄を選抜した…

変化の時を生き抜く

富士ソフト創業者野澤宏の伝記。大学卒業後、専門学校の講師を経て、教え子と自宅で創業。独立系ソフトベンダーとして一代で巨大企業を築く。強みはランプサムでの受注とハードへの組み込み技術。時代の追い風もあるが、積極的な経営は見事。勝負は人材と新…

晩年の子供

短編集。少女時代の体験をもとに描かれた8篇。小学生の高学年から思春期まで。精神の成長と性への嫌悪と感心を女性視点から描く。踏み込んだ赤裸々な表現は作者の真骨頂。引き込まれるように読ませて頂いた。初版は90年頃の作品だが古さを感じない。何か…

世界最先端8社の大戦略

タイトル通り、8社の戦略モデルを解析、解説する。Tesla, Apple,Salesforce, Walmart, Microsoft, Peloton, DBS, Amazon。良く知られた巨大IT企業だけでなく、新興企業、既存事業から大転換を果たしたモデルも紹介。DXがキーワードだが表面的なものでなく…

リーダーの仮面

筆者はあらたな組織論「識学」を提唱。実践のため同名で会社を設立。経営している。リーダーは感情を務めて排し、仮面をかぶることで部下を指導、育成する。ポイントは5つ。ルール、位置、利益、結果、成長。人の能力に大差はないとし、公平な競争を導く。…

ブロークンブリテンに聞け

イギリスブライトン在住の著者によるコラム。日本の文芸誌群像に連載。格差が進む英国社会で底辺側から見た鋭い論評。ブレクジット、王室問題、コロナ対策と国を二分する論争が続く。日本から見るとどうしても遠い実相が良くわかる。映画や音楽の話題になる…

一俗六仙

エッセイ集。前半は経営者として日立のV字回復に挑んだ時代を振り返る。ラストマンとしての心構え。後半は引退後の生活。タイトルは週七日のうち、1日を俗社会に繋がり、残り6日は趣味に生きるとする意味。なかなか多忙で充実されており、俗の比率が高いよ…

アンブレイカブル

連作小説。主人公は内務省のエリート官僚。特高警察を指揮し、戦前戦中を通じて思想弾圧、小林多喜二や三木清を死に追い込む。はじめは理想を追う施策でも、巨大組織は自己防衛のために拡大を続け、人間性を圧殺していく。作者の特異な諜報ジャンルのエンタ…

民主主義とは何か

何かと騒がしい民主主義の本質をその歴史を紐解き解説する。ギリシャで誕生し、ヨーロッパへ継承され、アメリカで更なる発展を遂げる。2500年を歴史があるが、普遍化したのはここ200年。常に批判にさらされてきた。直接参加から代議制へ、職業政治家…

稼ぎ続ける力

定年を目前に控えた50代への老後の指南書。年間や資産運用はあてにならず、自ら起業して稼ぐことを推奨する。具体的なお勧めはサイバー空間での起業。現役のうちに会社の業務でITの世界に慣れておくこと。長年の経験とサイバーの知識があれば、引く手あま…

鉄道無常

自身鉄道女子の著者が、鉄道紀行の先達である2大巨頭、内田百聞と宮脇俊三にささげるオマージュ。それぞれの代表作から引用し、時代背景と鉄道愛を新たな視点も組み入れ紹介する。共通するのは厳しい戦争体験。内田氏はそこからの復興、宮脇氏は斜陽化して…

ビジネスパーソンのための言語技術超入門

著者が長年取り組んできた言語技術教育。ドイツで育ちの日本人として語学の差でなく、思考法の違いに苦しむ。主語が明確でなく理由から記述する日本語の特異性。開発した教育法は質問を連続的に発する問答ゲームによる対話。文章ではパラグラフの構造教育。…

ない仕事の作り方

著者のユニークな仕事術を紹介。人と異なるこだわりから生まれた数々のマイブーム。意図的な部分はあるが本人が愉しんでいるようにも見える。ゆるきゃら、ボブディラン、仏像とその守備範囲は広い。糸井重里が世に出してくれた恩人。対談を巻末につける。期…

ギフト

短編集。若い女性の視点で恋愛や家族関係を描く。基本はハッピーエンドのほのぼの系。巧みな設定と優しい文体は作者の得意とするところ。パステル画の挿画が非常に良い。特定されていないが尾枝かえさんの作品。まったりさせられた。 ギフト (ポプラ文庫 は …

もう時効だからすべて話そうか

事件記者の取材記。当時は何かと差しさわりのあった内部ネタを公開。凶悪事件の真相に迫る。基本的なスタンスとして凶悪事件の犯人が何らかの異常者である場合更生は困難であるというもの。長年の経験からくる感覚でうなづける。本書は網羅的で週刊誌の記事…

プリンス

ミャンマーをモデルにした政治小説。軍事政権に反対する民主化運動の指導者は、大統領選挙のために帰国するが、空港で暗殺される。妻と息子がそれぞれ立候補を目指す。米英の大国の思惑、軍部内の派閥抗争と複雑な構図の中で一気に選挙へ。結局は民主主義の…

破天荒

企業小説の第一人者の自伝小説。高校中退ながら石油化学新聞に記者として採用され、数々のスクープをものにする。圧倒的な筆力と物おじしない性格を武器にした取材力。取材先の通産省、企業のトップに気に入られ仲介役としても活躍する。若いころの化学業界…

金正恩と金与正

北朝鮮の独裁政権の実情をルポ。3代目の正恩はカリスマ性が歴代に比べて劣り、相次ぐ失策や健康問題もあり権威の低下が認められる。妹の与正は出たがりの性格だが、一族のスペアの息を出ない。実際には赤色貴族と呼ばれる特権階層が支配する。彼らにとって…

知徳国家のリーダーシップ

対談によるリーダー論。明治維新と戦後の歴史から優れたリーダー像として八人を挙げる。共通性は知的バーバリアン(野蛮人)。北岡氏が政治を野中氏が経済を担当。評価が高いのが大久保利通と中曽根康弘。大きな国家像をビジョンとして持ち、強引に見える手…

不安な時代に踏み出すためのだったらこうしてみたら

著者は北海道で先端の電機会社を経営する傍ら、子供たちの教育問題に正面から取り組む。その餅ネーションは、既存の教育制度の反発し、自分で道を切り開いた経験による。本書は子供たちからの悩み相談に答える形で、今後の社会に適する生き方を提案する。重…

定年後の居場所

老後の生き方に関するアドバイスエッセイ。自ら生保のエリートサラリーマンから大学教授に転身。数多くの転職、転身事例を取材し修士論文とした。繰り返されるのは、地域社会との融合。特に子供時代へ帰り地元へ根付くことが推奨される。コミュニティが存在…

SFプロトタイピング

最近流行の未来予測手法。SFからのバックキャストだが、プロのクリエーターが物語を描き説得力を持つ。現状の価値観に囚われずななめ上の未来を想像、創造する。官庁や企業ですでに実用化されている。本書は対談と解説で構成。概要を知るには良い。今のとこ…