2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

零戦と戦艦大和

文藝春秋掲載の座談会。戦史の研究から日米の文化比較論とよくある人気パターン。海軍編。史実はほとんど語り尽くされた感があるが、錚々たるメンバーなのでそれなりに面白い。日本の兵器は性能は優れているものの芸術品に近く、大量生産に向かない上に扱い…

ジーンワルツ

厚労省の制度改革により破綻した地域医療。中でももっとも影響を受けたのが産婦人科。クールウィッチと呼ばれる女医がただ一人の闘いを挑む。人工授精や代理母など最新の問題点も満載。赤ちゃんを産み育てようとする女性の想いと強さが強調される。ロジカル…

武器無き環境戦争

伝える力の池上ととインテリジェンス手嶋の対談。両雄が環境問題で各国が凌ぎをけずる世界を斬る。核の次の新たな戦争としての位置づけ。COPで明らかになる各国のエゴ。温暖化対策の美名の裏には、自国の利益を誘導する激しい争いがある。戦略に乏しい日本は…

吾輩はシャーロックホームズである

ロンドン留学中に神経を病んだ漱石が自分をシャーロックホームズだと思いこみ、珍推理を繰り広げるというパスティーシュ。大胆な設定であるが時代的に合致するところが不思議な雰囲気を醸し出す。滑稽であるが我らが漱石先生をつい応援したくなる。紳士然と…

しがみつかない生き方

主に女性の読者を意識して、「ふつうの幸せ」を手に入れる10ルールを紹介する。仕事、恋愛、金銭、人間関係と現代人にはストレスが重くのしかかる。周囲の評判や思いこみを気にせず、人生の意味は深く問わない。まさにしがみつかない生き方を推奨する。最…

月の扉

沖縄那覇空港でのハイジャック。犯人は教育キャンプのスタッフ3人組。カリスマ性を持つ指導者が警察に不当逮捕され、その釈放を要求する。その夜が皆既日食の当日であり、彼らが師匠と呼び敬愛する指導者が起こす奇跡を信じているからであった。機内で予測…

カンディンスキーと青騎士展

大好きな抽象画家の展覧会。副題に有るとおりミュンヘンレンバッハハウス美術館の所蔵。初期の作品から時代を追い具象から抽象画への変遷がよく判る構成。極めてめずらしく愛するミュンターを描いた肖像画もある。やはり彼の色彩は鮮烈。ミュンヘンで行われ…

推定少女

逃亡中の主人公(こちらも少女)が出会った不思議な少女。結局は宇宙人という設定なのだが、追われる二人の奇妙な逃亡劇が続く。逃げているのは追っ手からではなく、大人になることというのが隠されたテーマ。原作時に用意した3種類のエンディングを提示す…

電子書籍奮戦記

著者は日本における電子書籍業界の第一人者。本書はその自叙伝。東映の教育映画部からパイオニアのレーザーディスクへ。映像とテキストの融合に無限の可能性を感じて電子書籍の世界へ。現在ボイジャーを主宰。わくわくするような挑戦的な人生。電子書籍への…

謎解き太陽の塔

太陽の塔を題材に岡本太郎の芸術を論ずる。太陽の塔自体は磔にされたキリスト像だとする新説。自らを現代の呪術師と称した画家には高い宗教性と思想性が内在した。前半は実際の作品を踏まえての謎解きでわくわくさせるが、図版はカラーにすべきであろう。後…

ダブルジョーカー

シリーズ続編。およそ日本陸軍らしくない情報機関D機関の活躍を描く。連作の形を取り各編でどんでん返しが仕組まれる。伝説となっている中佐の第一次大戦中の欧州での活躍から、太平洋戦争開戦まで。敵のスパイ網を暴くきつね狩りに関するものが多い。楽しめ…

時が滲む朝

中国の地方学生。純粋な青年が民主化運動の波に巻き込まれる。失意のうちに残留日本人孤児の娘と結婚し来日。運動を続けるものの、生活に追われる仲間達に失望していく。若さと片づけるにはあまりにも激しい季節の記憶。鮮烈ではある。芥川賞受賞作だがそこ…

利休にたずねよ

利休の切腹から過去にさかのぼる構成。利休本人と秀吉や周囲の人間の述懐で、利休の美学の根本をさぐる。侘び寂びの中にほとばしる燃えるような生命力は何に由来するか。常に肌身離さず所持する香合に秘められた若い時代の高麗の貴姫とのはかない恋に行き着…

美の旅人フランスへ

美術紀行文。フランス編。ルーブルの構成に従い16世紀からの近代絵画の流れをたどる。美しい画像と平易な解説で心地よい旅に読者をいざなう。一枚の絵画にめぐりあうために人は旅するが、旅そのものの方に意味があるとの記述には納得させられる。日本人好…

愛しの座敷わらし

転勤により田舎住まいを始めた5人と1匹。父親の憧れで借りた民家には座敷童が住み着いていた。悪さをするわけでなく福の神として家族それぞれに転機をもたらす。もともとは間引きされた子供の霊であるとの悲話がさりげなく紹介される。常に前向きに生きよ…

パパとムスメの7日間

鉄道事故で意識が入れ替わった中年の親父と高校生の娘。それぞれ御前会議と初デートを控え、そのまま大切な日を迎える。結果として意に反してのハッピーエンド。どたばたのライトノベルだがまあ楽しめる。もう少しほろりとさせて欲しかったが。パパとムスメ…

ブラバン

舞台は広島の進学校。25年前のブラスバンドのメンバーが再結成を図る。青春時代の思い出と現在の姿をオーバラップさせその落差を描く構成。ほとんどのものが卒業後は演奏から離れており、現実社会の厳しさを実感させる。タイトルから描いていた明るい青春…

キケン

ライトノベル。99%男子校である工業大学のサークルが舞台。はちゃめちゃでありながら人情味のある部長と抑えの副部長のコンビが黄金時代を築く。学祭やロボコンとストーリーはお手軽だが、誰もがもつ過ぎ去ったあの時代への郷愁をほろ苦く誘う。最後の黒…

D列車でいこう

赤字にあえぎ廃線が決まった第3セクター鉄道を救う3人組。MBAを保有する銀行のキャリアウーマンと引退間近の熟年2人。年間3千万の赤字は大きくはないが、経費削減の余地はない。キーは以下に外部からの客を呼び込むか。ありきたりのイベントでは一過…