2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

累々

恋愛小説の連作。ヒロインの美大生の恋愛遍歴、同時進行で複数の男性との交際が描かれる。根底の心情は上手く理解できない。これは世代差によるものか。レベルは高くプロの作家に遜色ないが、女性側の書き分けがやや不十分。どうしても女優としての作者のイ…

日本の構造

副題にあるように統計データから現代日本の状況と問題点を浮き彫りにする。特に戦後の履歴データが示されるので解り易い。高度成長から安定成長その後の長期低迷と日本経済と社会の劣化は明らか。簡単に言えば普通の国。幻想は断ち切る必要がある。今後の課…

仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ

尼崎立花駅前にある小さな本屋小林書店。ここの名物女性店長が取次の女性新人を導くというノンフィクションノベル。出版不況の中工夫と熱意で、顧客の信頼を勝ち取り、店を守る。よく気のまわるご主人の裏方として貢献。ノベルの部分はもちろん出来すぎであ…

食王

外食産業が舞台。一代ですしチェーンを築き上げたオーナー社長。麻生の新ビルでの新規事業展開を模索するが、社内からはなかなか提案が上がらない。バイトの女子学生からの提案で地方再生を結び付けたポップアップレストランの開業にこぎつける。ありがちな…

日本再生のためのプランB

現在日本が進めるITを中心とした産業の高度化(プランA)はすでに頓挫しており、将来もないと結論。それに代わるものとしてプランBを提案する。具体的には予防医療を中心とする地方のサービス産業化による構造の転換。高齢化によりすでに医療従事者への需要は…

大阪

共作エッセイ。大正区育ちで大阪を出た小説家の柴崎氏、大学から大阪に住み着き虜となった社会学者の岸氏。それぞれの歩んだ道と大阪との関わりをネタにする。経済的地位の低下とともに、独自の文化も薄れつつあるが、それでも十分面白く魅力あふれる街であ…

金閣を焼かなければならぬ

著者は精神科医。サブタイトルにあるように修行僧で放火犯の林養賢と名作「金閣寺」を著した三島由紀夫の精神分析を行う。林は明らかな精神分裂症。ただし発症は事件後。三島は自らのナルシズム打破を作品に託する。正直専門的なところは難解。評価は難しい…

宝塚歌劇団の経営学

宝塚歌劇の優良な経営モデルを経営学的に解析する。小林翁の創設から営々と培ったビジネスモデル。格好いい言葉にすると垂直統合=自前主義とファンとの価値共創。品質とコストで戦えるモデルは終焉した。歌劇団とは組織上独立しているファンクラブの存在が…

山奥ニートやってます

和歌山県紀伊山地の山奥での共同生活。廃校となった小学校を改造し、15名のニートがゆるい生活を送る。人口5人の限界集落の過疎対策NPOが発端。定職は持たずアルバイトで生計を立てるが、物価が安く自活可能。彼らの生活感は極めてゆるく、あくせく働くこ…

ガリンペイロ

アマゾンの奥地、一獲千金を夢見て金を掘り続ける男たちガリンペイロ。その実像を追うノンフィクション。すべても者が名前も過去も問われない。お調子者の若者が現地に乗り込み、やがて失踪するまでを軸に描く。掘削は意外と組織化、近代化されてはいるが、…

洋画家の美術史

明治から現代まで日本を代表する洋画家16人の作風を紹介する。それぞれに影響を与えた西洋の画家や南画を「成分表」として表すなど新しい試みで興味深い。日本文化を古今東西のコラージュと位置づけ、洋画も模倣ではなく独自の発展を遂げたとする。自らの…

働くあなたの経営学

若手に向けて書かれた経営学の入門書。実践に応じた学問領域を実例をあげて説明する。章立ては戦略論、組織論、リーダー論。内容的にはきわめて常識的で斬新なものはない。読者にはさまざまなことに積極的に取り組むようにアドバイス。 働くあなたの経営学: …

リーダーの禅語

禅の教えのエッセンスからリーダーの取るべき指針を語る。5つの徳目、風格、育成力、平常心、行動力、信頼力にそれぞれ10の至言。根底にあるのは社会への貢献。内容的には極めて常識的な話で、かなり実践できているとは思うが、言霊の重みは感じる。いく…

それでも気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている

メジャーからマイナーまで外食チェーン店を探訪。食レポというよりは世評を斬る。簡潔にユーモアあふれるエッセイは親しみがもてる。中には知らない店も。これが第2弾で2017年頃の雑誌連載。文庫化にあたりアップデートはされている。コロナの影響もあ…

生きる職場

メディアで話題のエビ加工業。パート社員の勤務を全くのフリーにし、さらには嫌いな作業はしてはならないなど、働き方を自主性に委ねる。著者は創業家の2世だが営業担当で工場からは憎まれ役で、経営方針としてはがっちり管理系。天気となったのは大震災。…

ナウシカ考

風の谷のナウシカ、マンガ版を論考する。著者の専門は民俗学。作品自体が神学や哲学的な内容を含み、世に問うものが多いのは万人がうなずくところ。本書では原作から数多く引用しつつ自らの解釈を述べる。ラストの墓の主との対決が主題。あまり目新しい解釈…