2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

夜行観覧車

深夜の高級住宅街で起こった家庭内殺人事件。3家庭の内情を巧みな構成で描くことで事件の核心に迫る。直接は関係ないのだが心理の深いところで、3つの家族は互いに影響をあたえている。ミステリーとしては十分楽しめる内容だが、作風にも少しなれてきてし…

にっぽん鉄道100景

コラム集。最新の鉄道事情を紹介する。半分以上は知っている事実の紹介で目新しさには欠ける反面で、正直知識を再確認する部分もある。世代的には私よりやや上で鉄道華やかなりし時代を知る人だけに、廃線や近代化が続く現状にはや不満がつのる。その中でも…

列島融解

主人公は保守系(自由党)の代議士。電力(東電)からの転身。派閥に属さずエネルギーの専門家として内外の評価は高い。彼を支える秘書をはじめとする優秀なスタッフ。このモデルたちを通じて著者は自らの主張を高らかに述べる。エネルギーは産業政策の基本…

奥様はCEO

ITベンチャー企業の新入社員が主人公。能力不足から総務部に配属になり裏方の雑務に追われる日々。やりての女性社長からあごで使われる。急成長のベンチャーらしく引き抜きやM&Aとネタには事欠かない。誠実に仕事をこなすうちに若者は成長していく。最後…

社長は少しバカがいい

エステー化学社長の経営論&リーダー論。日本生命のトップセールスマンから家業のエステーを率いる。海外の巨大競争相手に互して業績を伸ばす。チーフイノベーターを兼ね、開発品目を絞り込む。カリスマでワンマンであるが同族会社でも大きな抵抗があったよ…

おひとり様自衛隊

女性ライターの陸自ルポ。体験入隊ではなく実際に予備自衛官に志願し、計50日の厳しい訓練に耐える。豊富な楽屋ネタを中心にユーモラスに書いているが、3.11で実際に非常時招集されることになる。任務は後方支援。政治的な議論は脇に置いて、自衛隊の…

植物図鑑

27歳のOLがアパート前で行き倒れの青年を拾うところから物語はスタート。二人の奇妙な共同生活はやがて同棲に進化。彩りを添えるのは季節毎の野草とその料理。突然の破局と一年後の軌跡の復活。他愛ないと言えばそれまでだが著者ならではのほろりとさせ…

ジヴェルニーの食卓

連作。マティス、ドガ、セザンヌそしてモネの代表作をモチーフに画家の晩年の物語を紡ぐ。それぞれ画家の創作を支えた無名の人を語り部にする構成。モネの複雑な再婚を描いた表題作が出色の出来。史実に基づいたフィクションと歌う。前作が衝撃的だっただけ…

世界で勝つグローバル人材の条件

著者は理系ながら外資系金融業界で活躍。シティ証券の副社長を経て独立。本書では若者向けに世界へ羽ばたけと叱咤激励。真のグローバル化とは世界に日本の価値を知らしめることであり、突き詰めれば人と人の関係。恐れず議論することが重要。バックボーンと…

謎解き西洋絵画

美術史上著名な27作を取り上げその謎に迫る。中世絵画は上流階級の所有物であり一定の教養がないと真の意味は理解できないものであった。画家はしだいに職人から芸術家に格上げされ、やがてアカデミーに代表される過去のくびきから解放されていく。印象派…

夫は犬だと思えばいい

花まる塾を主催する著者の講演がベース。結論は男女は別の生き物である。少なくともそう考えることで相手を尊重しあうことが重要。論理的であろうとする男性と感情が主体の女性ははなから噛み合わないもの。特に現代の家庭ではその差が中和されず、母親の不…

ビックデータの衝撃

IT業界のみならず世界経済で次のキーとなるビックデータについて解説。サイバー空間に蓄積された膨大なデータベースの処理と利用を、技術とビジネスの両面からとらえる。ビックデータの特徴としては3V(Volume、Variety,Velocity)で表され、技術的にはそれ…

ローカル線で行こう

新幹線のスーパーアテンダントが、赤字の第3セクター社長に抜擢される。単なる人寄せパンダでなく、斬新なアイディアで収益を改善。もう一人の主人公は県庁から出向した副社長。世事に長けた優秀な官僚だがしだいに社長の熱意に引き込まれ実力を発揮する。…

四月七日の桜

菊水特攻の指揮官である伊藤中将とその家族に焦点をあてたノンフィクション。在米駐在武官の経験もあり親米知性派であった物静かな提督は、皮肉なことに軍令部次長として戦争を指導。最後は死に場所を求めるように艦隊司令となる。無謀な作戦に終始反対で、…

下町ロケット

主人公は中小機械メーカーの技術屋社長。かっては宇宙開発機構の研究者だったが、父親の跡を継ぐ。いきなり大口納入先の購入打ち切り。さらにはライバルメーカーからの特許係争と難題がふりかかる。長年夢を追った燃料バルブ技術の特許がが日の目を観るが、…

三丁目の落語

新旧の創作落語集。園歌や柳昇の時代から、最近の白鳥あたりまでを網羅。時代背景はあるもののあまり古さは感じない。笑いの基本は同じと言うことか、読む側が年をとったのか。繋ぎの一冊として充分楽しめた。三丁目の落語~夕日が似合う新作落語~作者: 「三…

日本の電機産業

証券アナリストによる業界分析。日本の大手メーカーにつき現在の敗因を解析するが、おそらく担当であったろう日立に多めに頁をさく。自作のデバイスにこだわり垂直統合が足かせとなった日本メーカーと異なり、ユーザーインターフェースでプラットフォームを…

地下旅

地下鉄エッセイ。東京の全線と地方を含めての沿線スポットの紹介。著者にとっては風景の見えない地下鉄を母親の胎内のように守られている感覚だとのこと。年代的に昭和を感じさせる街並みが好みのようで、年代的に近いためか親しみ部かい。文章の軽妙さは相…

大きくしぶとく考え抜く

著者の経営論。低迷していたマクドナルドの経営改革はトップダウンでかなり強引。結果は数字がすべてと単純明快。小売業はいかに人を動かし育てるか。組織のフラット化と後継の育成に力を入れる。論旨は簡潔で記述も平易。露出度の高い人なので、どこかで見…

別れる力

シリーズ3作目のエッセイ集。相変わらず凛とした文体で世相を斬る。無頼派の面目躍如だが、少しネタに苦しんでいる風も伺える。生ぬるい社会を批判する切れ味は健在。書名通り人との別れの哀しさを美しく力強く描く。 大人の男が苦境にすべきは、信じたこと…

トッカン

主人公は25歳の女性税務職員。個人相手の徴収係で海千山千の相手に日夜苦戦する。直属の上司が遣り手の特別国税徴収官(トッカン)。周囲のキャラもたち、前半はドタバタ。後半になり登場人物それぞれの背負うモノや仕事への想いが語られ、エンタメ系とし…

空しか見えない

中学時代の遠泳バディ8名。10年後仲間のまとめ役の事故死をきっかけに、再度思い出の地で遠泳にトライすることに。それぞれ恋愛や仕事で日常に苦しみながら、夏を目指してトレーニングに励む。8人や新たなパートナーの動向を丁寧に書き分けてはいる。紆…

兵士は起つ

大震災直後の自衛隊の災害出動を詳細に描いたノンフィクション。副題にあるように出動のレベルでなく作戦の範疇に入る。仙台では津波に巻き込まれ基地にたどり着けない隊員も居合わせた民間人の救助にあたる。72時間の救援活動の後は、遺体の収容が主な作…

リフレはヤバい

アベノミクスの中心経済政策であるリフレに真っ向から反論。低成長に入った日本ではインフレターゲットにより本当の需要を喚起できるはずはなく、円安誘導により国債の暴落、金融危機に繋がると警鐘を鳴らす。論旨は明快で平易に解説されるので説得力に富む…