2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ダヴィンチコードの謎を解く

大ヒット小説の解説本。キーワードを拾い上げ、辞典的に網羅。キーとなるのは秘密結社であるシリス修道会。キリストとマグダラのマリアは夫婦であり、その血脈が存在するとする。キリスト教宗派の歴史と教義は難解であるかと恐れたが、平易に理解できるよう…

阪堺電車177号の追憶

阪堺電車の最古車両である177号を舞台に展開される人間ドラマ。戦前から戦中、戦後の高度成長、バブル崩壊を超えて現在まで物語を紡ぐ。連作の形をとり、独立した各編が実は伏線になる構成。秀作だが後半少し無理があるかな。まあ楽しめた。 阪堺電車177…

下戸の夜

主として出版界の下戸たちが、日頃の暮らしぶりや思うところを記述。逆に酒飲みや酔っぱらいの生態を冷静に見ている姿が示される。歴史上意外な人物が下戸であり、探求すれば面白いかも知れない。雑誌への連載を単行本化。気楽に愉しめた。 下戸の夜 作者: …

踊る町工場

富山高岡の能作。零細な鋳物工場だったが、著者が婿として入り大改革。自社製品の開発から産業観光化。見事な変身を遂げる。かなりのカリスマで人たらし。「旅の人」らしく既存概念にとらわれない。ひと、もの、こころで「伝統産業に轍をつける」を目標にネ…

なでしこの告白

未だに記憶に残るなでしこの快挙。ドイツワールドカップの優勝直後に専門誌に連載されたインタビュー記事。全21選手を網羅。誰もが強調するのは一体感と団結力。強豪との勝負は紙一重。澤の存在感の大きさが奇跡を呼び込んだか。今読んでも感動がよみがえ…

ヒキタさんご懐妊ですよ

メディア: この商品を含むブログを見る 白髪の中年男性である著者が、齢の離れた妻と不妊治療に挑む。本作はその経緯を克明にルポ。タイミング法から人工授精、さらに顕微授精となかなか難航。ようやく恵まれたと思ったら流産。さらに障害児の恐れと難関は続…

覚悟の磨き方

副題にあるように吉田松陰の著作を現代訳し、テーマごとに構成。繰り返されるのは学問と同時に、実行を伴うこと。弟子を友人として扱う熱く優しい人柄も垣間見え、短期間に多くの人材を育てたのもうなずける。やや訳が平易に過ぎるような気もするがそこは意…

ボッティチェリの裏庭

名画ミステリー。幻のビーナス図を巡り、創作時、ナチスによる強奪、現代での発見と時空を超えて物語は進行する。最後に2重のどんでん返しがあり楽しめる。重厚なプロットではあるが、若干盛り込み過ぎで進展は早くない。期待にたがわず楽しめた一冊。 ボッ…

リスタート

1964年の東京オリンピックを題材とした短編集。市井の女性の生活、人生に与えた影響を短編にして描く。まだまだ女性の地位は低く、結婚して専業主婦になることが当たり前だった時代。自立を模索し力強く前を向く彼女たちを生き生きと登場させる。なかな…

危険な美学

美学の持つ危険性を一般向けに訴える。例に出すのは作詞によって戦争協力者となった高村光太郎と宮崎アニメの「風立ちぬ」。美しいものは感性に訴え、真(知性)、善(理性)の価値判断を超越する力がある。芸術家は無意識のうちに美を追い求めるうち、美自…

不思議な鉄道路線

明治初期鉄道路線の決定に際して、常に存在した陸軍の圧力。海岸線を外し、内陸に敷設することを強く要求する。経済性からほど遠いが、それだけ海外勢力への脅威があったことの査証。奥羽本線と現肥薩線が代表例。会議録等の原文引用が多いが、さすがにスキ…

カモフラージュ

短編小説集。不倫ものに始まり、不条理な世界まで。バラエティーに富んでいてなかなか楽しめる。話題先行かと思いきや、文才、実力も相当なもの。どうしても作者のビジュアルがちらつくが、それは別にして評価すべきなのだろう。 カモフラージュ 作者: 松井…

ニュータイプの時代

全篇を通じて強調されるのは、問題解決型のオールドタイプでは無く、問題発見型のニュータイプへの人材転換。特に日本は苦手とする分野で、経済発展の重しとなっている。新しい技術、開発、展開には社会的な意味づけが必要。セグウエィの失敗はそこに起因す…

月を見てパンを焼く

著者は一人で通販ベーカリーを運営。一日14組限定で販売。5年先まで予約が埋まっているという。月齢に従い、パンを焼く日と食材を求めての旅の日を割り振る。リクルート時代に培った人脈と、厳しい修行で身に着けた職人の腕。あくなき探求心。何よりパン…

革命と戦争のクラシック音楽史

標題の通り、新たな視点でクラシック音楽をとらえる。名高い芸術といえども時代の背景、流行には敏感であり、特に激動期にはその傾向が強い。フランス革命とナポレオンの時代は音楽にも変革を促した。音楽は近代的な軍隊の統率に使われ、やがて民衆の支持を…

オートリバース

小泉今日子の親衛隊が舞台。デビューからベストテンで1位を取るまでを追う。昭和の時代。組織は不良少年のたまり場で、ともすると暴力的な縦社会となる。主人公の親友は実行力でのし上がるが病魔に倒れる。アイドル本人もラストで登場する。一気に読める作…

新章神様のカルテ

久々の続編。父親となった主人公は大学院生の立場だが、副班長として医局で奮闘する。管理側と若手医師の板挟み。周囲には変わり者と思われているが、温かい人柄と正義感で隠れファンも多い。若くして膵臓がんを患った母親に最期まで寄り添う。医局の抱える…

マイ仏教

幼い頃から仏像に魅せられ、寺の住職になりたかったという著者。仏教系の中高で青春時代を過ごす。前半でそのエピソードを散りばめて笑わせ、後半は現在の仏教感を語る。意外と真面目な内容。自らの中にマイ住職、マイ仏教を持つことが人生を生き抜く糧とな…

もっと言ってはいけない

続編。テーマは人種と知能。リベラルを自称する著者が、あえてタブーをおかし、真実に迫る。多くの学術誌が引用されるが、客観的に見て統計学としては有意差が出ている。人間の能力は生得的(遺伝によるもの)の方が、環境要因より大きい。人種的には北方の…

東大教授が教えるヤバいマーケティング

行動経済学の入門書。東大での講義をベースに、不合理な人間の経済活動に潜むさまざまな現象を解説する。数多くの文献から実験結果が紹介される。売る側、買う側ともそのメカニズムを利用しているのが現状。内容的には一部を除き極めて平易。逆に言えばあま…

生き物の死にざま

農学者の著者が、29種の動物について最期の迎え方を記述する。圧倒的に多いのは子孫を残す本能。そのために特化し進化したものも多い。生命の偉大さ尊さを考えさせられた。淡々とした記述の中に熱い想いが伝わる好著。 生き物の死にざま 作者: 稲垣栄洋 出…

眠れないほど面白い空海の生涯

巨人空海の生涯を半分小説仕立てで紹介。彼を信仰に導いた導師に尼僧を充てる。ここは著者の創作。圧倒的な語学力で貪欲に知識を吸収。山林修行と唐への留学で密教を極める。先行する最澄との確執に頁が割かれる。後半は朝廷に重用される。周囲を圧倒するオ…