2020-01-01から1年間の記事一覧

サコ学長日本を語る

著者はアフリカ、マリの出身。中国へ留学、日本に興味を持ち、京大で建築を学ぶ。日本人と結婚、国籍を取得。京都精華大学で教鞭を取り、現在は学長。濃厚なアフリカ社会から見ると、日本は画一的で平淡。他人を気遣うあまり、本音をぶつけあい衝突を避ける…

我が人生の応援歌

詩歌に関するエッセイ。戦前戦後の唱歌や歌謡曲から、作者の心に残り、今も口ずさむものを取り上げる。満州からの必死の引き上げや、留学先アメリカでのノイローゼなど自らの人生遍歴も語る。取り上げた歌は抒情的ではあるが暗いものが多い。戦争など本当に…

独断

著者はCOCO壱番館の創業者。極貧の幼年期から一代でカレーチェーンを作り上げ一部上場を果たす。自ら三流経営者で変人と称す。その経営哲学は徹底した現場主義、実践主義。顧客第一主義。企業の発展のためには右肩上がりの成長が必須。単年度、極論すれば一…

東條英樹

新たな視点で戦時宰相の実像に迫る。戦陣訓に代表されるように精神主義者のイメージが強いが、これは戦後のイメージで、実際は有能な実務家の面が強い。ただし陸軍の権益確保と人事抗争に強面を発揮した。庶民派を演出し、インテリ層の受けは悪いが、一般大…

宇宙に行くことは地球を知ること

異色の取りあわせによる対談。宇宙大好きの矢野顕子が、3回目の宇宙に臨む野口聡一の経験や人生観、哲学を引き出す。宇宙体験は基本的に引き算の世界。重力も空気もない無の世界で、地球の奇跡を感じられる。また帰還後は燃え尽き症候群でメンタルを病む飛…

英龍伝

江川英龍が主人公の幕末歴史小説。世襲の韮山代官の次男に生まれ、兄の早世で職を継ぐ。開明的で博学、海外の事情にも精通。西洋式の測量と砲術で頭角を現す。私生活は清廉潔白。倹約を旨とする。幕府内では代表される守旧派との闘い、来るべき時代を予見、…

草原の国キルギスで勇者になった男

リアルRPG。冒険家を自称する著者がキルギスで動物たちを供にあえて困難な旅に挑む。馬での旅、羊と犬を連れての山越え。イスラムの文化は旅人に親切で、宿や食事を提供されるが、時には悪人に遭遇することも。言葉や医療、気象知識とレベルを上げていく。う…

発注いただきました

企業や出版社からの依頼作品を集めた一冊。中短編の小説やエッセイ。なかなか面白いが、テーマによってはよくバックグラウンドがわからないものもある。ものによっては結構遊んでいる。10年間の集大成だが、著者の自己評価もあるが、時代によって出来不出…

海馬の尻尾

長編悪役小説。主人公のやくざは粗暴でアル中。良心の呵責を感じない。精神科医の診療を受けると脳の一部に欠陥があることが判明する。抗争の雲隠れに8週間の改善プログラムに参加。そこは国家プロジェクトがPTSDを改善する薬品を開発する秘密実験病棟あっ…

木のストロー

住宅建設会社アキュラホームの女性広報担当者が、木のストローを開発するノンフィクション。間伐材を利用し、シルバー世代の手作業で実現する。SDGSの流れに乗り、G20で使われ一気にブレーク。社内外からの抵抗に全力で立ち向かい、ひとつひとつ問題を解決。…

起業家の思考と実践術

アメリカ、バブソン大学で教鞭を取る著者が、起業家教育のエッセンスを示す。ストーリー仕立て、さえない若者が失業。著者のアバターに触発され起業を成功させるまで。繰り返されるのは社会問題の解決。起業は失敗の連続なので自分が楽しめることでないと続…

少年と犬

連作集。一匹の旅する犬と関わりあう人たち。決して幸福な生活ではないが、賢い犬との生活でそれぞれに癒されていく、しかい最後はなぜか死の影がつきまとう。犬は被災地岩手で飼い主を失い、友である子供を探して九州に向かう。最後は巡り合える奇跡。結末…

地下鉄の駅はものすごい

マニア向けの一冊。東京の地下鉄路線と駅を網羅。それぞれの歴史と特色を紹介する。工法や設計など知らない事実が多い。路線の建設時期により、意味づけは変わる。昭和初期からの交通事情の変遷は興味深い。古い路線も近年はリニューアルが進む。読む側とし…

直感で発想、論理で検証、哲学で跳躍

タイトルがそのまま結論である。経営者の心得を要約。著者の長年にわたる経営学の集大成。ヤマト運輸、日清食品、ホンダ、川鉄と名だたる名経営者の経営判断を題材に、3段階それぞれの肝を詳述。若者には如何に日頃の小さな集積が重要かを繰り返す。3つと…

女と男なぜわかりあえないのか

男女の性差についての科学的な論文を紹介するエッセイ。海外の研究がほとんどであるが、基本原理は全人類に共通。驚かされる事実が多いが、わが身に置き換えると非常に納得させられる。妊娠に対するコストの違いから男は乱交、女は純愛戦略になる。遺伝子学…

はやぶさ2最強ミッションの真実

はやぶさ2のプロマネ自ら、10年にわたるミッションのすべてを語る。初代に比べて非常にスムースに思えるが、立ちはだかるのは小惑星リュウグウの厳しい地形。先端技術と柔軟な対応で、高精度のタッチダウンを2度成功させる。宇宙研と民間企業からなるプ…

ニューノーマル時代の構想力

BBTでの講義集。大前氏の主張は従前どおり、教育改革と道州制。いつまでも動かない日本の政治にいら立ちを隠さない。AIの第一人者松尾教授と建築家安藤忠雄氏の講演が目新しい。時代の変わり目で将来への構想力が問われる。 大前研一 ニューノーマル時代の「…

小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ

著者は三井物産のエースだったが、退社し独立。世界初の宇宙商社を設立。短期間でJAXA初の民間参入を果たす。圧倒的な人間力をベースにしたネットワークの構築。何事にも真正面から取り組む熱情は周囲の人間を取り込んでいく。世界各地を飛びあるくフットワ…

最軽量のマネジメント

サイボウズで実施している全く新しい人事システム。基本は徹底的な情報開示。グループウエアを使い、全社員で情報を共有する。ピラミッド型の組織は時代遅れで、目指すはキャンプファイアー型。100人には100人の働き方が存在する。雑談でコミュニケー…

その犬の名を誰も知らない

南極観測史上誰もが知るタロウ、ジロウの物語。実はもう一匹、第3の犬がいた。第一次越冬隊の唯一の生き残りで、当時の犬係である北村氏の記憶をたどるノンフィクション。当時の犬ぞりによる冒険は迫力十分。犬たちのサバイバルについては、50年の時を超…

美術展の不都合な真実

メジャーな美術展が満員でゆっくり鑑賞できない日本。その内幕を暴露、批判する。原因はマスコミ主導。金に物を言わせて海外美術館から所蔵品をパッケージで借り受ける。これは個人展より容易。大々的な広告で集客する。海外側にとっては休館中のサイドビジ…

アンマーとぼくら

僕ら沖縄を舞台にしたメルヘン小説。カメラマンで大きな子供の父と反抗期の息子。実の母を亡くし1年後に再婚。主人公は当然反発する。沖縄の母の優しい想いに次第に心を開いていく。父は事故で急死。本編は3日間のノスタルジア旅行。やがてくる不幸が暗示…

愛国とナチの間

ドイツの政治と社会に関するルポ。メルケルの長期政権は一見盤石でが、内実は連合政権で現実的な妥協を迫られる。人道主義で難民を受け入れた結果、右翼の台頭を許し、社会の分断が進む。ナチへの反省から右翼の内部も複雑。移民を排除すれば経済が回らない…

本を守ろうとする猫の話

メルヘン小説。祖父から古書店を引き継いだ高校生が、本の精である猫に導かれて、本を救う冒険に出る。4つの迷宮での武器は本を愛する心。本には人を想う力があるというのが主題。本が大事にされず、読まれなくなった世相への批判。淡い初恋を絡めて一気に…

フードテック革命

次に来る注目分野である食料業界を俯瞰する。人口増と所得増で700兆円の市場規模。一方で環境、食糧問題への対応も必要。前半は注目すべきテクノロジーを紹介。キッチンOSと代替タンパクは注目。明らかに欧米が先んじており、日本にとっては第二のスマホ…

データでわかる2030年地球のすがた

近未来の地球の姿を統計学より予想し、認識の甘い日本に大きな警告を発する。すべての要因は地球温暖化と人口増加。食料、水と生きるためのリソースがすべて不足する。欧米では危機感があらわで、すでに対策が先行している。繰り返されるのは日本社会の危機…

日本習合論

評論集。明治期の神仏分離令への疑問から端を発し、日本文化の長所ととらえる習合につき肯定的に論じる。宗教だけでなく、産業や組織論にまで展開。単純に純化を良しとする風潮にはつよく反対する。特に農業を論じた講演は興味深い。引用多数。刺激的な好著…

OKI

近未来軍事シュミレーション小説。半島から武装勢力が隠岐に侵攻、日本に対する情報戦。一発の銃弾も撃たず、世論を分断し内部からの崩壊をめざす。平和ボケした日本ではありうる展開で空恐ろしい。ラストは一旦撤退するが、続編に含みを残す。フィクション…

米国人博士大阪で主婦になる

著者はユダヤ系の裕福な家庭で育つ。ボストンで文学博士。MBAのため短期留学した日本人のサラリーマンと恋に落ち結婚。大阪との二重生活に。やがて不妊治療、高齢出産、義父の介護と看取り。後半はシリアスな展開になる。文化論でありかつ個人の精神の遍歴。…

マイストーリー

ファーストレディの回想録。シカゴ、サウスの貧しい家庭に育つが、ブリンストン大学へ進学。エリート弁護士時代にオバマと知り合う。夫はダントツに有能で政治の世界でもめきめき頭角を現し、若くしてトップに上り詰める。本人は幼い子供と共にホワイトハウ…