2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

失踪願望

コロナ下の日記と闘病記等の短編で構成。冒険作家として名を馳せた著者も80歳前。わりと初期に罹患し生死の境をさまよう。ネットワークは多彩で種々の遊びと酒の日々。終活は常に意識している。日頃の生活の中で夫人との固い愛情が微笑ましい。文章はキレ…

老後の資金がありません

中年夫婦が主人公。娘の結婚と親の葬儀で乏しい資産を使い果たした上に、二人ともリストラの憂き目にあう。姑を老人ホームから引き取るが、この母親が傑物で、積極的に年金詐欺の片棒をかつぐ。前半の暗い展開から陽転。最後は光明が見える。金融ものエンタ…

誰も知らないジブリアニメの世界

著者による宮崎アニメの解析。子供向けファンタジーの前半、ファミリー志向となった中盤、魔女の宅急便から興業的には成功する。後半は私小説的な要素が強まり、解釈が難しくなる。基本的に宮崎ワールドには好意的。一般に知られていない裏話も満載で愉しく…

パナソニック再生

新生パナソニックに関する日経の連載記事。事業会社制を導入し、独立採算による経営のスピード化を図る。キーとなるのはブルーワンダーと車載電池の大型投資。環境対応も大きな柱。指標としては営業キャッシュフローを重視する。期待は大きいがここまで実績…

政宗の遺言

伊達政宗の最期を新米小姓の視点で描く歴史ミステリー。江戸に上がり、人生最後の仕上げを進める戦国の英雄と、その半生を語り部が伝えていく構成。謀略に優れ版図を広げるが、秀吉や家康には常に謀反を疑われ、機知で乗り切ってきた。最後にどんでん返しも…

岡本太郎の見た日本

思想家でもあった岡本太郎の一面をその著作からひも解く。キーとなるのは戦後に書かれた三部作。パリ留学、中国への出征を経て、日本各地を訪ね民俗学的なフィールドワークの産物。縄文、東北、沖縄、韓国と原始宗教と結びつく日本文化のルーツを探る。東北…

春に散る

ボクシング小説。かってとあるジムの四天王と呼ばれたボクサーが、老年になり再集合。「チャンプの家」と名付けたシェアハウスで集合生活をしながら、有望な若手ボクサーを育てる。それぞれの必殺パンチを伝授し、最後は夢の世界チャンピオンを獲得する。引…

土を育てる

著者はアメリカの農業経営者。リジェネラティブ農法を実践し大きな成果を上げる。不耕起、無農薬、無肥料。要は生態系の力を活用し、これまでの工業化された農業とは一線を画す。学界とも協力し、データに基づいた科学的なアプローチである。光合成された炭…

のっけから失礼します。

エッセイ集。女性ファッション雑誌への連載で巻頭に収録されたとのこと。自らの私生活ネタが中心であり、中年の女流作家の実情をユーモアたっぷりに記す。多分にデフォルメされている部分もあるだろう。家族も個性がたちユニークで笑わせてくれる。自身はE…

ブックオフ大学ぶらぶら大学

新古書店の巨大チェーンとなったブックオフマニアたち自身による投稿。独特の値決めシステムで思わぬ掘り出し物が手に入り、それを狙うコレクターやせどりを商売にする人々など、多くの人生を巻き込んでいく。一時の低迷を経て、現在はずいぶんと経営スタイ…

2035年の世界地図

世界の知性と呼ばれる4人が、コロナパンデミック、ウクライナ侵攻で揺れ動く世界を展望する。副題にあるように民主主義と資本主義の未来。総じて楽観的で、一時的な後退はあるにせよ、終結後はグローバル化が進展すると予測。西欧的な見方がベースとなるが…

チャットGPTvs人類

何かと話題のチャットGPT,、生成AIに関するルポ。多数の記事やインタビューからの引用が多い。無敵の技術革新のように思われがちだが、未だ発展段階で功罪も多い。AI自身は判断機能を有しておらず、フェークを捏造、再生産する「幻覚」も例が多い。いずれに…