2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

87%の日本人がキャラクターを好きな理由

今や2兆円ビジネスとなっているキャラクター商品。精神科医の香山リカがバンダイの研究所の豊富なデータを使い、その背景にある日本人の精神構造を解明する。期待せずに手に取ったわりには、意外と奥の深い1冊であった。 70−80年以降のキャラは物語を…

ブラフマンの埋葬

主人公は地方の芸術家アトリエの管理人の青年。ある日助けた水棲の小動物と奇妙な共同生活が綴られる。ブラフマンという哲学的な名前を与えられる。結局種別は最後まで明らかにされず、読者の想像にゆだねられる。カワウソかビーバーのイメージ。青年は駅前…

会社という砂漠がオアシスに変わる100滴

著者は中小企業の社長御用達ビジネスコンサルタント。自ら発行するメルマガ「砂漠に水」より厳選した100滴をまとめたとのこと。基本的には人間関係を大事にするまっとうなアプローチだが、斬新なものを期待するとやや物足りない。唯我独尊、自慢話が鼻に…

6ステイン

6編の連作からなる。自衛隊の諜報組織の末端で国を守る工作員を描く。組織の論理と個人の良心、肉親への愛慕との葛藤が描かれる。作者の一連の作品と相通じるテーマであるが、いつもよりややソフトなイメージ。フィクションでありながら現実の組織もこうで…

法隆寺金堂展

大阪出張の午後が空いたので、半ば確信犯だが奈良に遊ぶ。博物館で開催中の「法隆寺金堂展」へ。売り物は四天王だが4体そろうのは期間限定とのこと。邪鬼を含めて古風な造形は満喫。意外と良かったのは本尊の天蓋と台座。日頃はみれないもんね。ただ残念な…

日と米

爆笑問題の日本史原論シリーズ。多分最新刊。だいたい内容は読めているのだがつい手が伸びてしまう。ペリー来航からバブル、東京DLまでを漫才台本と参照文献で解説する構成。ネタ的には既知の事実がほとんどで目新しさには乏しい。紹介されている文献には…

チューバはうたう

表題作を含め3作の中編で構成。主人公の女性が中学時代のブラスバンドで単に大柄な体格からあてがわれたチューバ。高校、大学、そして社会人の現在と日常の生活に追われながらも、自己アイデンティティのためには欠かせぬ存在となり、休日には河原で一人奏…

朱夏

評判の警察小説。強行犯の係長の妻が誘拐される。必死で捜索する刑事と個人的にサポートする同僚。夫婦それぞれの状況からの描写で解決までを一気に描き切り読ませる。犯人は警察内部に存在し、途中から暗示され捜査側との心理戦となる。日頃お互いに干渉せ…

赤い指

中学生の息子が犯した幼女殺人を痴呆症の母親に押しつけようとする主人公夫婦。外見は平和な家庭を容赦なくおそう少年の引きこもり痴呆性の老人という重いテーマを読者に突きつける。犯人側と警察側の両面から進める巧みなプロットで一気に読ませるあたりは…

手帳進化論

作者は自称手帳評論家。明治以降の日本の手帳史の流れを「年玉手帳」、「システム手帳」「有名人プロデュースの個性派手帳」と区分づけ、その背景にある社会的意義を探ろうとする。いわく組織の規範的道徳から、個人の自己実現へと社会の目標が変化してきた…

日本語ぽこリぽこり

作者はアメリカ人だが、流暢な日本語でのエッセイ。詩人、翻訳家らしく言葉に対する深い思い入れをベースに、異文化の接点をユーモラスに描く。好奇心旺盛に日本社会のあらゆる面を探訪し、ある意味では我々平均的な日本人より日本語、日本文化には詳しい。…

世界一やさしい問題解決の授業

マッキンゼーの問題解決手法を中学生にもわかりやすく解説した入門書。日経の広告で見たようなきがするので、書名はTV番組便乗の比喩だと思っていたが、まじめに学校教科書として採用をめざすとのこと。内容は実例、イラストを多用していて非常に簡明。あら…

ローカル線ガールズ

連続でおきた衝突事故で廃業に追い込まれた京福電鉄(福井線)。県の出資で第3セクターとして復活。乗客サービスを向上さえるため女性アテンダントを乗務させ改革を図る。第1期生でありはリーダーを務める著者がその立ち上げの苦労と乗客とのふれあいを素…

ウェブ炎上

副題は「ネット群集の暴走と可能性」。学術的にネット上での議論を通じての世論形成の可能性を探る。さまざまなネット上の有名な事件を例にあげ解説する。双方向の通信により情報収拾と自由な議論が可能になったわけだが、匿名性とサイバーカスケードにより…

戦場のニーナ

ロシアに残された日本人孤児女性の数奇な運命を描く。全くの創作かと思えば、巻末の取材対象には個人名が掲載されているので事実をベースにしているようだ。幼少時代日本人であるがいえのいわれなきいじめと2度にわたる養父母との別れ。ユダヤ人音楽家との…

群青

初代海軍総裁であった矢田堀景三(鴻)の生涯を描く力作。優れた学者であり技術者であったが時代の要請により、幕府海軍の創設と育成に携わる。幕臣でありながら葛藤の末に旧体制に見切りをつけ、如何に海外列強の侵略に対抗するかに心を砕く。これには師で…