生活

ドン・キホーテ創業者。無頼派のイメージがあるが、慶応大学卒で意外とインテリ。ディスカウントストアに参入し、圧縮展示と深夜営業で勝機をつかむ。本書では個運と集団運について自説を披露。めぐってきた幸運を最大化し、不運は「あなぐま戦法」でやり過…

白球フロンティア

道東の酪農の町別海。無名の公立高校が甲子園出場を果たすまでを描く。強豪校で夢破れた監督が、弱小校で部員集めから始める。厳しい指導は選手との軋轢を呼ぶが、その人格を慕う協力者も多数。選手との信頼関係も構築し、21世紀枠だが選抜出場を果たす。…

猫と罰

ファンタジー小説。9度目、最後の生涯を生きる黒猫が行きついたのは魔女が営む古書店。なぜか文豪たちのかっての飼い猫が集められる。黒猫自体は漱石の飼い猫。厳しい前世から人間不信で孤独を好む。一方の魔女は書物の神である魁星。永遠の罰として創作を禁…

ピーナッツ一粒ですべてを変える

舞台は新宿の個人経営理髪店。じり貧の経営状態から著者の分身であるコンサルの指導を受け、復活を図る。売り上げ倍増の目標を達成するまで10年近く。地道な努力で常連客の維持と進化開拓に努める。経営学としては初歩の域を出ないが、物語にすると一気に引…

等身大の定年後

20年にわたる対象者のインタビュー。現役時代から、管理職、定年を迎え、転職、独立、ボランティアとそれぞれの決断とその後の実情を語るノンフィクション。いずれも成功と失敗例が例示され、その原因を探る。総じて組織へのリベンジ等の不純な動機はうま…

いわゆるサザンについて

78年の衝撃のデビューから、現在に至るサザンオールスターズの歴史を描くノンフィクション。数多くの名曲を生み出し、おそらく日本で最も著名なバンド。シングルだけではなく、アルバムの構成曲もくわしく解説されるが、メジャーなもの以外は残念ながら聞…

営業の神様

営業は聖業と言い切る作者の主張をストーリー仕立てで解説。キーワードは愛。顧客の親友となり、その本当に求めるものを理解する。成果は自ずとついて来る。出来すぎの話ではあるが、こういう営業マンが居れば、買ってしまうだろうなという理解。BtoCが主眼…

小山さんノート

ホームレスの女性が残した膨大な日記。日常の生活のこまごまとしたことが記録される。DVの同居人である共の人から逃れようとしながら、逃れられず彼の突然の死亡で幕を下ろす。さらに言い寄ってくるボスとの関係。どんな状況でも男女関係は存在するようだ。…

侠飯

タイトルは「おとこめし」と読ませるグルメ任侠小説。ヤクザの抗争に出くわした大学生が、ひょんなこっとからヤクザ二人に下宿アパートに踏み込まれ、不思議な同居生活が始まる。兄貴格が実は料理の達人。冷蔵庫から調理器具、原材料を取り寄せ、素晴らしい…

飲んだら酔うたら

稀代の酒飲みである著者のエッセイ。ビールをバカ飲みした若い頃。モルトの原酒をもとめスコットランドやアイラ島の蒸留元への探訪記。さらに世界各地での愉しいエピソードを満載する。結論としては酒は原産地で飲むのが旨いとのこと。当たり前だが風土や文…

私の職場はサバンナです

著者は幼いころからの動物好きが昂じて、南アフリカでサファリガイドとなる。言語の壁や、専門知識の不足を仲間の助けを借りて資格を得る。サバンナでの生活は日々驚きの連続。野生動物との出会いは嬉しいが、厳しい現実に直面することも。徐々に人間の生活…

駆け込み寺の男

新宿歌舞伎町の駆け込み寺NPOの所長、玄秀盛の半生と生き様を描くノンフィクション。朝鮮籍で神戸生まれ。親に愛されず虐待を受けて育つ。幼くして身に着けた生きるための手法は、力で他人を支配すること。あいりん地区の「人出し」で財を成し、成功者となる…

年間客数2億人の経営術

著者は味の素の生産技術者からスカウトされ、サイゼリヤに転職。13年間社長を務める。オーナー企業、個人商店の域を出なかった同社に、近代的な経営基盤をもたらし、一段の成長を遂げる。ノルマもマニュアルも無い段階から、積極的な出店攻勢と海外進出。圧…

笑う森

母子家庭の5歳の男の子が、深い森で行方不明になる。しかも発達要害の問題を持つ。一週間後に奇跡的に救出されるが、衰弱しておらず誰もが不思議に思う。様々な理由で森に入った4人の人間と、森の主である熊に救われる。問題を抱えた人間たちは、これを契機…

海が聞こえる

青春小説。舞台は高知の進学校。東京からの転校生は、美少女だが気が強い。親の離婚もあってクラスでは浮いた存在に。語り手の主人公はいごっそうの気質を受け継ぐが、ひょんな偶然から、彼女の東京行きに同行することに。恋愛模様、親友との友情の絡み。東…

板上に咲く

日本の誇る天才版画家、棟方志功とその妻を描く美術小説。青森で知り合い、夫婦となるが、東京で修行中の志功はなかなか妻を呼ばない。しびれを切らした妻は乳飲み子を抱えて上京。二人の生活は貧しく苦しい。やがて大判の版画が、柳宗悦に認められ、スター…

アジア多情食堂

旅の記録。韓国台湾からインドまでアジアをめぐる。どちらかと言えばバックパッカー。LCCで飛び、安宿に泊まり、地元メシを堪能する。文化人であるので時々贅沢。基本は現地の貨幣価値での生活に重きを置く。おいしいもの満載。旅情あふれる好著。 アジア多…

ステイ

犬小説。事故で両親を亡くした主人公は、叔父夫妻に引き取られるが、今一つ家族になじめないでいる。訓練士の従妹が連れて来た元警察犬のシェパードを預かることに。目下に見られなかなか言うことを聞かないが、やがて信頼関係が醸成されていく。途中でしり…

冒険歌手

女性シンガーソングライターの冒険記。順調な人生に疑問を感じて、本屋の立ち読みで見つけたニューギニア探検隊の募集に応募。これが無謀な計画で、ヨットで太平洋を渡り、ボートで河を遡上。未踏の高山に登るというもの。ほぼ素人の彼女は苦戦するが、何と…

アルプス席の母

高校野球を題材にしたフィクション。父を亡くし母と二人暮らしの少年は、リトルリーグで名を馳せ、大阪の新興高校にスカウトされる。母も横浜から居を移すが、息子は寮暮らし。待っていたのは厳しい父母会の掟。理不尽な仕打ちに悩まされる前半。息子は肘を…

180秒の熱量

ボクシングノンフィクション。年齢制限のため引退のせまるB級ボクサーの闘いを描く。奇跡のマッチメークでアジア太平洋ランキングに入り、世界10位の強者と対戦する。完全アウェーの噛ませ犬状態ながら、見事に善戦。あわやと思わせるシーンも生まれる。朴…

橙が実るまで

エッセイ集。舞台は熊本。友人の写真家との共作。題材は主として家族の歴史。幼い時に母が蒸発。祖父母に育てられる。複雑な家庭であるがやがて祖父母、父母と順に見送る。本人は喫茶店を営み、やがて本屋も開業。文章力は評判通りで抒情的な雰囲気のある作…

アナーキー経営学

経営者のための学問と一般に思われている経営学を、身近な実例を挙げて平易に解説。供給側だけでなく消費者側からも経営の観点が必要と説く。すべての事象には判断がつきまとうのである意味当然の話ではある。本書は入門書との位置づけ。出張帰路の新幹線で…

動的平衡ダイアローグ

著者の持論である動的平衡。生物の細胞は常に入れ替わっており、その集合体はいわば蚊柱。本書ではその概念を各界の碩学と対談する。話はそれぞれの専門分野にとどまらず、人生論や哲学にまで及ぶ。平易な表現で理解が進む。本編も読むべきか。 -判断基準は…

観光地ぶらり

日本国内の著名な観光地を訪ね、そこに暮らす人々を描くルポ。北は知床から南は竹富島まで。いずれも一時の勢いはなく、そこはかとなく哀愁が漂う。著者の特徴は人と会い、その生業を描くこと。どちらかといえば中高年が多いが、それだけに味はある。丹念な…

君を守ろうとする猫の話

ファンタジー小説。第2弾。喘息持ちだが本好きの少女が、トラ猫に導かれて、灰色の王国との戦いに臨む。武器は勇気と正しい心。敵の正体は貨幣。作られしものえで増殖するもの。これに支配されると人は欲望に走り心を失う。途中まで本の大敵ネット社会かと思…

歴史の現場読み歩き

大阪キタ。中之島から梅田を中心にした史跡巡り。豊臣時代から、江戸、近世まで。街は様変わりしており、記念碑程度しか遺構は残っていないが、川筋や橋、道にその名残をとどめる。土地勘のあるところだけにスラスラとイメージは入ってくる。毎日新聞大阪版…

流出する日本人

最近の海外移住事情を統計をベースに論じる。日本からのプッシュ事情は、災害、経済不安、ジェンダー問題などマイナスの要素。現地からのプル事業は、高賃金、語学、教育と魅力的に見えるものが多い。副題にあるように現実は光と影の、影の部分が大きい。特…

人生のレールを外れる衝撃の見つけ方

決められた人生では無く、この身を駆けるようなライフワークとの出会い。これを衝撃と呼び、偏愛から生まれるとする。精神的、神秘的なもののように捕らえがちだが、セルフインタビューによる自己分析、さらに衝撃を目的化するには知性の働きが欠かせない。…

本屋のない人生なんて

地方で奮闘する独立系書店11店を紹介する。出版不況で書店がつぎつぎ消滅し、本屋のない市町村も増える中、強い想いとこだわりを持ち、苦しい経営の中で文化の灯をともす。武器は独自の選書による棚の構成。先達から次の世代へ受け継がれていく流れも貴重。…