学術

怖いへんないきものの絵

怖い絵シリーズの派生版。中野京子と「へんないきもの」の早川いくをの対談で、珍しい生物を描いた絵画を解説する。あまり有名な作品は無いが、逆に稀少性は高い。ユーモアたっぷりの本文と豊富な図版で一気に読ませる。内容的には軽め。 怖いへんないきもの…

行為と妄想

碩学の履歴書。京都の商家出身。三高から京大へ。今西錦司の門下。生物学から民俗学へ。民俗学博物館の初代館長。知的生産の方法の著者としても名高い。学生時代は山岳部の猛者としてならし、アジア奥地を探検。フィールドワークを大事にする。驚かされるの…

失敗する自由が超越を生む

量子コンピューターの第一人者である東大の古澤教授。その大胆な生き方を紹介する。研究は趣味で本職はウィンドサーフィンと豪語。学生には研究生活をゲームのように愉しめと導く。人生の転機にはかならず幸運が巡りくるがそれは実力がなせるわざだろう。組…

少年空海アインシュタイン時空を超える

科学系SF。空海と観音菩薩が、博士(ホーキンスがモデル)の導きで時空を旅し、物理学の歴史をたどる。それぞれエポックメーキングな発見の瞬間に立ち会う。地球上のことはニュートン力学で証明できるが、宇宙のことは相対性理論が必要。毎回のことだが、後…

人はどうして老いるのか

人の一生、特に老いのメカニズムについて解説する。基本は「遺伝子の乗り物」であることに変わりはない。遺伝子に取って次世代の繁殖力が確立した際に、効率の悪い老年はその役目を終える。著者は「遺伝子のシナリオ」と呼び、その中でいかに生きるかは個人…

落語で資本論

古典落語を引用し、難解な資本論を解説しようとする意欲的な取り組み。著者は慶応大でマルクス経済学を専攻したいわば専門家。どちらかというと落語の世界、とりわけ師匠である談志の言動にスポットが当たる。なんとなくだがエッセンスは感じられたか。読み…

ドーキンス博士が教える「世界の秘密」 

若者向け科学読本。本業の生物学から最新の分子物理、化学、天文学まで幅広く科学の基礎を解説。各章神話と実際の世界を対比させて平易に解説する。素晴らしいのはグラフィックでより理解が進む構成。9割がたは知識として常識の範囲だが、あらためて目を開か…

人類を変えた素晴らしき10の材料

材料工学エッセイ。専門用語はほとんど使わず、身の回りにあるものから重要な素材をピックアップし、その構造と発展を解説する。鋼鉄、紙、コンクリート、チョコレート、フォーム、プラスチック、ガラス、グラファイト(炭素)、磁器、インプラント(生体材…

ガリレオの求職活動、ニュートンの家計簿

コペルニクスからニュートンまで、ルネッサンス以降の科学者の生活面に光を当てる。一言で言えば、パトロンの時代から近代的な研修組織への変遷。その偉大な科学的業績から、高邁な人格者であるように思われがちだが、それぞれに生々しい私生活がある。性格…

この夏の星を見る

コロナ禍の学校生活。多くの行事が中止となり、部活も制限される。感染の拡大により、家業や家庭への影響も出る。中高の天文学部がひょんなことから繋がりそれぞれ自作の望遠鏡を製作、スターキャッチのコンテストを開催。各校ごとのドラマが展開される。巧…

11人の考える日本人

近代日本において思想の礎となった11人を取り上げる。その生涯と思想哲学のエッセンスを平易に紹介。錚々たるエリートの系譜。思想を紹介すると内容的にはどうしてもハード。特に時代が近くなるほど難易度は上がる。予想はしていたが。 -吉田松陰 教育の力…

脳は若返る

一般に粘れとともに老化が考えられる脳だが、著者は対応によって若さを保てると主張する。一言で言えば社会と繋がり、好奇心を持って挑戦を続けること。ドーパミンの分泌がキーとなる。エピファニーがあるとベスト。まさにアクティビシニアとなりエージレス…

会話を哲学する

会話を科学する。副題にあるようにコミュニケーションとその先にあるマニュピレーション。小説や漫画等フィクションを例にあげ、パターン化する。コミュニケーションでは一定の約束事を形成。その先で話者の関係性により複数の分岐が生じる。試みとしては面…

寿命ハック

医科学エッセイ。目指すはテーマは不老不死。最新の分子生物学の知見をユーモアをこめて描く。急速に発展しており、人類の寿命は伸びていく可能性がある。知らなかった科学的事実も多いが、後半はやや平凡に思える。著者はデンマークの大学院生。翻訳の常だ…

サピエンスの未来

1997年に東大で行われた伝説の講義。本書はその後半をまとめる。主役はカソリックの司教でありながら、古生物学者のテイヤール、ド、シャルダンの著作を紐解く。人間や地球の進化。そして未来を予測する。個体ではなく人類全体が精神圏を形成し進化して…

ジャパニーズハロウィンの謎

橋商学部のゼミによる研究。テーマは消費者行動学。各地のイベントに出かけ、参加者や関係者にインタビューを繰り返すことで、その深層心理を明らかにする。結論的にはそれぞれ参加者のインサイトを掴んでいることが発展の原因。渋谷のバカ騒ぎが注目される…

夜ふかしするほど面白い月の話

月に関する雑学本。一般人の素朴な疑問に対する回答の形式。ほとんど既知の天文学の基礎だが、知らない最新情報も多少はある。ある意味これだけ大きな衛星を従えているのはレアなケース。今後は資源探索が期待されるがコストは膨大なようだ。まずは予想通り…

やらかした時にどうするか

失敗学の大家が、長年の研究の成果を学生向けにやさしく解説する。失敗と創造は背中合わせの関係で、決して恐れることなく貴重な体験知とすること。逆算の原因解明プロセスが創造的思考に通じる。自らの失敗も実例を挙げて説明。思いつきノートや思考展開図…

データドリブン思考

経営にビックデータを活かすための啓蒙書。著者はこの分野の草分け的存在で、大阪ガスから滋賀大学の教授に転身。データ活用については組織の壁に苦労したようだ。まず強調されるのは問題解決のための課題の抽出。このステップが極めて重要だが、日本人の不…

まなの本棚

自称活字中毒の子役アイドルが、読書遍歴を披露。絵本、児童文学から古典に至るまで対象は広く、深い。発行時中学生と思えない読書量。書評はまあ普通だが純粋で可愛らしいのでOK。山中教授と辻村美月氏との対談も掲載。気に入った本は何度も読み直すそうな…

世界史は化学でできている

表題通り、人類の歴史を化学の発展の面から振り返る。各分野毎に時代を追う形になっており、火の発見から、食料、染料、エネルギー、原子力まで網羅。長い歴史に比べれば、プラは最近のことであることがわかる。進歩に貢献する光の部分と軍事や環境破壊とい…

日本人はどう死ぬべきか

大物二人の対談。テーマは死生観であるはずだが、頻繁に脱線。互いの専門分野、文化論、人物評と話題にはことかかないく、愉しい内容となっている。実は年代は違うが神奈川栄光学園の同窓。独自のキリスト教教育を受け、それぞれ東大で道を究める。コロナ下…

こんなに変わった理科教科書

戦後の小中学校における理科教育の変遷。学習指導要領に振り回され10年ごとに大方針が変わる。大きく言えばゆとり教育とその揺れ戻し。技術立国の礎となる部分だけに、大きく揺るがぬ幹が必要。子供は興味を持てば率先して学ぶ。受験用ではなく考え、探求…

夢見る帝国図書館

上野公園で知り合った老齢の女性。不思議な雰囲気と過去を持つ。キーとなるのは帝国図書館。その歴史を振り返れば、戦争に振り回された激動の時代。その中で蔵書を増やし、守り、名だたる文豪たちに愛されてきた。語り手である作者の分身である小説家が老女…

宗教図像学入門

三大宗教を中心に、その発展と展開に大きく寄与した図像の歴史を解説する。逆に図像から教義の本質に迫る。一神教はもちろんだが、修行の宗教である仏教にも共通する部分はあり興味深い。隠されたトリビアもあり飽きさせない。新書で網羅しようとするので、…

読書大全

大の本好きを自称する作者が、古今東西の名著200冊を紹介する。前半は人類の知の進化を、宗教、哲学、思想、経済と概観。この部分は簡潔によくまとめられている。後半は名著の紹介。最大2頁程度の要約だが、すでに難解なものも。覚悟はしていたが読破には時…

最後通牒ゲームの謎

行動経済学と進化心理学から人間の本性にせまる。最後通牒ゲームで実証されるのは、人間は経済的に合理的ではないということ。周囲の目や評価を気にして、いい人であろうとする。これは社会で生きていかねばならない人間が進化の過程で得て来た適応による最…

沈没船博士海の底で歴史の謎を追う

水中考古学者の著者が、世界にわたる沈没船の調査の実態とこれまでの半生を描く。野球少年で一言も英語を喋れなかった若者が、単身でアメリカ留学。努力と熱意を認められ博士号を取得する。コンピュータを駆使したモデリングは画期的な研究手法として世界が…

スピリチュアルズ

心理学や脳科学の文献から、人間の無意識の世界を探求、人格形成の謎にせまる。ビッグファイブに作者独自の視点を加え、8つのポイントを指摘。理想の人間像はわりと答えは出しやすい。性格の形成については遺伝要因が大半で後は社会での影響。幼児教育はほ…

死の壁

長年東大で解剖学を修めた著者が、死をテーマに語ったものをまとめる。死体の人称から始まり、日本のムラ社会の独自性を鋭くつく。日本人は死によってホトケとなり戒名を与えられ、メンバークラブから脱会する。さすがに鋭い論点。他の社会批判もある意味極…