2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

きみのお金は誰のため

若者向けに経済、社会の基本を解説する。貨幣は重要なアイテムであるが、ツールに過ぎずそれを目的としてはいけない。人生の目的は働くことによって社会に、未来に貢献すること。若い女性と中学生が偶然の雨によって著名投資家の講義を受けるという筋立て。…

黒い絵

短編集。美術作品、画家をモチーフに人間模様を描く。ほとんどが女性視点。著者には珍しく過激な性描写が目に付く。男からの視点ではなく、女性の本能と打算の葛藤。引き込む力は流石だが、予想とは異なった。 黒い絵 作者:原田マハ 講談社 Amazon

RRRで知るインド近現代史

大ヒットしたインド映画「RRR」を題材にイギリスの植民地からの独立史を探る。英国支配の過酷な歴史。ガンジーに代表される非暴力主義と、ボーズの武装闘争。さらにはヒンズーとムスリムの対立。結果としてパキスタンが分離し、ガンジーの目指した統一インド…

ブレイク

地熱発電推進が主題の架空小説。日本は火山国で恵まれた環境にありながら地熱の有効利用は極めて低い。環境問題や温泉組合の反対が直接の原因だが、計画から10年以上を有するスケジュール。巨大な投資が遠因でもある。一方で原発の再稼働は難しく、化石燃料…

歌われなかった海賊へ

第二次大戦末期のドイツ。ナチスに反抗する若者のグループ「エーデルヴァイス海賊団」。様々な事情を抱えながらそこに身を投じた4人の物語。立ちはだかるのはゲシュタポ、ヒットラーユーゲントさらに一般の大人たちの無理解。若く純粋な彼らは理想に向かい…

人はどう老いるのか

著者は作家であり医師である。ディケアセンターで多くの老人たちの症例に接する。前半はエピソードの羅列。中盤から現在の医療の限界を明示。誰もが避けられない老いと死への準備を説く。結論は全てを泰然と受け入れること。これには全く同意する。良くここ…

ラウリクースクを探して

ソ連時代のエストニア。黎明期のパソコンでプログラミングに勤しむ少年二人が主人公。主人公は独特の性格で孤独。唯一の理解者が親友であったが彼はロシア人。やがて革命の波が二人の運命をもてあそぶ。主人公は一時コンピューターから離れるがその後消息不…

スピノザの診察室

舞台は京都。有能な消化器内科医師である主人公は、早世した妹の遺児を育てるため、医局を辞し、街中の病院勤務医となる。老人患者が多く、看取りを重ねる日々。哲学に造詣が深く、医学の持つ意味を持つ意味を常に問う日々。クライマックスは子供の内視鏡手…

ソルハ

アフガニスタンを舞台にした児童文学。カーブールの中流家庭が舞台。主人公は就学間もない少女。長い内戦が収まり、ようやく平穏が訪れたかに見えたが、タリバンによる圧制が始まる。女性の権利を否定し、教師であった母親は射殺される。アメリカによる空爆…

夜が暗いとはかぎらない

大阪近郊が舞台。閉鎖が決まったマーケットのゆるキャラが失踪。その後周辺に出没し、話題となるが、主題は様々な人間模様。13編の連作だが、基本は暖かなもの。お約束通り、最後に関連付けようとするが、少し欲張りすぎか今一つ関連がよくわからない。ゆ…

ブギの女王笠置シヅ子

ブギの女王笠置シヅ子の伝記。SKDのレビュー出身。戦前はスイングの女王として、戦後は「東京ブギウギ」が大ヒットする。喜劇役者としても実力を発揮。ある年齢で歌手から引退、脇役として過ごす。個人としては吉本の御曹司と恋愛、相手の早世により未婚の母…

Z世代のアメリカ

アメリカ政治のキャスティングボードを握るZ世代。思想は世界的な社会正義を重んじラディカル、既存の政党に囚われない。また現状より貧しくなる可能性がある世代。分離が進むアメリカ社会のあってその重要性はますます増す。本書は様々な問題に焦点をあて…

墓じまいラプソディ

主題は墓じまいと夫婦別姓。先立たれた妻に嫁ぎ先の墓には入りたくないと遺言されたところからドタバタが始まる。一方適齢期を過ぎた孫娘二人は、結婚後の姓の問題で結婚に踏み切れずにいる。家族の固定観念に固まった男性陣を女性目線でするどく批判。ある…

怖いへんないきものの絵

怖い絵シリーズの派生版。中野京子と「へんないきもの」の早川いくをの対談で、珍しい生物を描いた絵画を解説する。あまり有名な作品は無いが、逆に稀少性は高い。ユーモアたっぷりの本文と豊富な図版で一気に読ませる。内容的には軽め。 怖いへんないきもの…

清張鉄道1万3500キロ

松本清張の全作品を精査。登場人物が乗った鉄道を記録し、机上の白地図で乗りつぶしを楽しむ。自らに課した判定ルールはかなり厳しい。戦後すぐ国鉄がまだ大動脈だった時代から、新幹線の開通まで、旅情あふれる清張の文章が引用される。一方で作品の粗筋も…

聖地旅順と帝国の半世紀

日露戦争から、太平洋戦争まで、激動の歴史を旅順、大連に視点を当てて描く。三国干渉によりロシアの租借地となり、激戦を経て日本の統治下に、21箇条の要求で火事場泥棒的に租借を延長。中国人民の反感を買う。日本人にとってはある意味聖地となるが、時…

野球短歌

阪神ファンの著者が、突然思い立ち、2022年のシーズン全試合を短歌で詠む。開幕9連敗から奇跡の復活をし、CSまで進出した激動のシーズン。試合終了後5分を目途に吟じるとのことで、臨場感とファン心理がよく出ている。選手の実名も多く出て来て実に愉…

絵はがきで楽しむ歴史散歩

明治から戦前にかけての絵葉書を紹介し、世相や歴史を振り返る。建築物が多いが、戦争や震災など事件を扱ったものも多い。ある意味ひとつの有力なメディアだったのあろう。著者のコレクションから紹介。図像も鮮明でなかなか愉しい。ほかにも世界にはすごい…

はじめから国宝なんてないのだ

日本美術への誘い。美術館のガラスケースの中ではなく、デジタル再生した制作当時のもとの姿を鑑賞する「賞道」を提唱。鑑賞にルールは無く個人の見立てが重要。知識に惑わされない姿勢。絵巻物はアニメーションの原点であると強調。各編の導入にはマンガを…

栄光のバックホーム

将来を嘱望されながら、脳腫瘍で現役を引退。引退試合での「奇跡のバックホーム」で周囲を驚かせた阪神の横田慎太郎。本書はその驚きの人生を母親への取材から描いたノンフィクション。名門鹿実のエースで4番。プロ選手だった父親譲りの才能に加え、若いころ…

それでも普通の会社員はいちばん強い

生産性が低い批判される日本のサラリーマン。AI時代の失業、キャリアパス問題視されるが、著者はこれまでの人事コンサルの経験から、従来の人事システムは一定の効果があると評価する。新人時代から複数の職種を経験し、無形の能力資産または普通の感覚を獲…