2007-01-01から1年間の記事一覧

戦艦「大和」暗号士の終戦。

慶応大を繰り上げ卒業後、海軍の短期現役士官として戦艦大和の通信士となった小島少尉の戦記。レイテ沖の大和では通信員として機密を知る立場にあり、またそれがために帰還後、機密封鎖のために送り込まれたフィリピンルソン島で陸戦に投入される。最後には…

美しい国へ

いまさらながら一時期評判になった著書に目を通す。主張は予想通りやや右よりであるが一貫性はある。世界市民などの理想論ではなく、国家を主体とした社会を構築すべきとし、そのためには自衛力の整備、教育の改革、ひいては憲法の改正が必要であるとする。…

世界の日本人ジョーク集

評判の新書。治められたジョークはわかっていてもやはニヤリとさせられる。日本人ネタは我々が思うほど一般的ではないようだ。類型化されてはいるがジョークも平文もどうしてもステレオタイプであるところはやむを得ないだろう。合間をつなぐには充分な一冊…

天切り松闇語り

シリーズ第4巻。激動の昭和初期を舞台に、義賊一家の国家権力へのささやかな反抗を描く。一貫しているのは反戦への思いと弱き庶民への暖かな視線。粋で一本筋の通った生き様はいつもながら清々しい。一作抜かしたかな。天切り松 闇がたり〈第4巻〉昭和侠盗…

君の名残を

現代の高校生カップルがタイムスリップにより、源平争乱にまきこまれ弁慶と巴御前として、別の人生を生き抜くという大胆なストーリー。意外と平家物語に忠実に進める。進展は遅く期待していたほどの出来ではない。巴の義仲への純愛、それぞれの親子の情愛に…

アヒルと鴨のコインロッカー

初めて著者の作品に接するが、予想以上に良かった。東北大に入学した新入生が、アパートの隣人に頼まれ本屋に強盗に入るという奇抜な書き出し。物語は現在とその遠因となった2年前のペット虐待事件を織り交ぜながら、淡々とスピィーディーに進展する。登場…

[野球]不動心

評判になった松井秀喜の新書。開幕当初の骨折でシーズンを棒にふった06年のシーズン中に執筆された。こういうと失礼だがきわめて冷静に自己を分析している。自分でコントロールできないことにはこだわらず、気分を切り替えていくことで精神面の強さを維持…

自己責任

2003年12月に発生した「イラク日本人拘束事件」。被害者のうち当時最年少の18才であった著者の手記。まずこの年齢に驚かされる。これだけで見方は著者サイドになってしまうのだから甘ちゃん読者です。NGOの取材のためバクダットへ向かう途中にいきなり…

砦無き者

「破線のマリス」につぐTV報道局を舞台にしたミステリー。マスコミとしてどこまで先入観なしに真実を伝えることが許されるかが命題。若手ディレクターが事件報道で活躍する前編を導入部に続き、恋人が過剰報道のため自殺したとする青年が引きこもりの若者…

フィラデルフィア美術館展

フレックッスで退社し、夕方東京都美術館へ。会期も残り少なく金曜日ということで混雑覚悟であったが案外空いていてゆっくり観賞できた。いきなりコローの人物画に圧倒される。大好きな印象派からキュビズム、エコールドパリと大家の作品がならび、非常に濃…

護憲派の一分

旧社会党党首土井たか子と評論家佐高信の共著になっているが、対談部分と「おたかさん」の自伝の部分が半分づつ。対談部分でも佐高氏は聞き役に廻り、女史の魅力と主張を引き出すことに徹している。土井さんは医者の娘、憲法学者から政治家へ転身するが、悲…

なぜ日本人は劣化したか

最近の日本社会の低迷は、個人レベルにとどまらず共同体としての社会の劣化=民度の低下にあるとする。前半は具体的に例をしめすことで理解しやすく共感できる。日本での劣化の原因は新自由主義経済がもたらした弱肉強食の「他者に厳しく自分に甘い」精神構…

天才セッター中田久美の頭脳

著者と中田女史の対談を中心に、バレーのゲームメーカーであるセッターの視点を通して競技の魅力にせまる。バレーに対しては素人同然のスポーツライターだが確実にポイントを押さえていく。セッターはアタッカー(彼女の場合は江上)に育てられ、また若手の…

下流社会

階級化が進む日本社会を、詳細な意識調査のデータを元に解析する。世代と階層を縦横軸にして主に数字に語らせる。データの量に圧倒されるが、それだけに説得力がある。問題は階層化が世代を超えて固定される機会不平等。食生活だけみると単身赴任者はどうや…

マラソンランナー

日本のマラソン史を黎明期の金栗四三から高橋尚子まで時代を追って網羅するノンフィクション。ランナー本人へのインタビューにより主要部は構成される。華やかなレースだけににスポットをあてるのではなく、性格や人生観などその内面に迫る。一人あたりに紙…

一度も植民地になったことがない日本

評判の新書。作者は国際的に活躍する版画家。スウェーデン人のエンジニアと国際結婚。海外特にヨーロッパの視点からみた日本を紹介する。極東の島国でありあまり知られていないのが事実。個人的な数々の経験が披露されるが、期待していたほど斬新ではない。…

[書評]昭和の三傑

鈴木貫太郎、幣原喜重郎、吉田茂を維新の三傑になぞらえて、敗戦日本に復興をもたらした英傑とする。戦勝国アメリカ相手に豊富な経験に支えられた外交交渉により、戦後日本の基軸である象徴天皇制と平和憲法を勝ち取る。憲法9条は、決して押しつけられたも…

ネットカフェ難民

格差社会の底辺として、ネットカフェで終夜を過ごす生活を赤裸々に描く。衣食住のノウハウから日雇いの派遣業務まで実体験が語られる。ただし作者の場合東京芸大でのある意味エリートであり、追い詰められたと言うよりは自ら選んでこの境遇に入った疑似体験…

心はいつも荒野

転落により記憶を喪失した男が、実は幽体離脱により他の人間と人格が入れ替わっており、カルト集団から命を狙われるというストーリー。明らかにオウムを意識する。すこし懲りすぎのプロット。登場人物が多彩な割にその狙った役所がもうひとつわかりにくい。…

退屈姫君海を渡る

天真爛漫で機知に富んだ我らがめだか姫が、失踪した夫君の捜索のため、四国の領地へ渡り大活躍。平家の末裔で藩の乗っ取りをたくらむ一族と対決する。周りをいつもの脇役で固め、講談調の早いテンポでユーモアたっぷりに楽しませる。安心して読めるが3作目…

理系白書

副題は「この国を静かに支える人たち」。毎日新聞の連載だけに非常に読みやすい。理系人間の処遇、特性から教育、大学改革と守備範囲は広い。面白いのは前半の生態に近い部分。理系の端くれとして理解しやすい。日本は技術立国として生きていくしか道はなく…

焦茶色のパステル

全集の後半。競走馬の転売にかかわる疑惑を、被害者の未亡人とその女友達が解いていく。この二人の掛け合いを中心にテンポの良い会話で楽しませながら飽きさせない。すこし欲張りすぎて後半は盛りだくさんのイメージ。謎解きに用いた馬の遺伝子は目新しい素…

ダラス

出張でダラスに3泊。初日に時差調整をかねて観光。ダラスと言えばケネディ暗殺。狙撃場所であった教科書倉庫がそのまま博物館として残されており、若く偉大な大統領の誕生から、暗殺の瞬間、葬儀、事件の真相の解明とパネル、写真が中心だがわかりやすく展…

黄金流砂

昭和57年の乱歩賞受賞作。義経の北行伝説と奥州藤原氏の秘法探索を軸とする。中盤からは暗号文書の解読とアリバイ崩し。全体としてオーソドックスだが古風なミステリーとなっている。歴史、言語について薀蓄が語られるが正直言ってうざい。結末もほぼ予測…

就職事情

[書評][社会]だから若手が辞めていく 最近どこの企業も悩まされている若手社員の定着率の悪化。実際に社員にインタビューすることでその実像に迫る。豊富なデータをビジュアルに見せる。ミドル自身に余裕がなく悩める若手に適切な教育指導ができない。まして…

ビタミンF

短編集。いずれも思春期の子供達をかかえる中年のサラリーマンが主人公で、まさに私の現在の状況にぴったり。親の知らぬうちに子供達は成長し悩みをかかえている。時として親に心配かけまいと表面を取り繕うこともある。父親として如何に立ち向かうか、難し…

女子フィギュアスケート

常に日本の第一線で競技人生を送った著者が、意外と知られていないスケートの世界を紹介する。前半は最近の日本勢の活躍の裏舞台を。後半は自らのリンクで過ごした半生をわかりやすく解説する。ただジャンプの違いはアクセルを除いて飛ばないかぎりわからな…

学校へ行かなかった研一

大前研一の実の姉が、子供時代からの氏のエピソードを語る。氏のこれまでの著作と大きな差は無いが、人知れず多大な努力をされて来たことは改めて認識させられる。アメリカ人の妻と実母との葛藤を冷静なジャッジで治めたあたりはさすが。自身のDV、離婚体…

韓国人から見た北朝鮮

意外と日本人からは落ちている視点。韓国内では金正日は高評価で迎えられるとショッキングな記述で始まる。冷静に考えれば南北は同じ民族であるので、メンタリィティーは近いはずであり、反日で結束することはあり得る。著者はその精神性を形作ったのは50…

世界反米ジョーク集

洗練されたジョークを通してアメリカを批判する。作者が後書きに書いているように、こんな本が出版できることは実はアメリカの健全性を示している。第一章は唯一の超大国であることへの批判、圧倒的にブッシュの知性の無さを揶揄したものが目立つ。第2章は…