2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

乗りかかった船

中小の造船会社が舞台の連作小説。テーマは人事。人事課の若手から社長までそれぞれの立場と境遇を描く7編。会社の人事処遇に不満を抱きながら与えられた場所での努力が道を拓いていくという主題。巧みな構成で読みやすい。秀作の匂い。乗りかかった船作者:…

生粋

タイトルはなまいきと読ませる。著者は貴乃花親方の長男。中学卒業と同時にアメリカへ飛び出し、イタリアに渡って靴職人の修行。現在は自分の工房で製作販売する。偉大な横綱は尊敬するが、敷かれたレールは好まず。自らの道を進む。若いだけに生意気ではあ…

死ぬほど読書

稀代の本読みである著者が、自らの遍歴を披露し、読書の効用を進める。本は読者の知識はもちろん人間の幅を大きくする。教養は動物の血を抑制し、理性の血を育む。教養を磨くのは仕事と読書。心のシワを増やすことが人生を深くする。著者の読書生活は次元は…

橋下徹の問題解決の事業

著者の政治時評。舛添、小池都政の問題点を鋭く指摘、自らの府政と比較し一刀両断。問題解決には以下に核心をつくかがすべて。マスコミはわかりやすい周辺領域で騒ぎ立てる。インテリ論者とは一線を画し、実行力を伴う政治実績には説得力がある。自身のメル…

久米宏です

著者の自伝。ラジオを出発点とし、TBSの売れっ子アナウンサーからニュースキャスターへ。中学生でもわかる構成をこころがけ報道そのものを変える。反応の良さが売りだが、斬新な企画力と周到な準備。民間放送が報道を司ることは健全な社会の証。本人でな…

日航123便墜落の新事実

衝撃のルポ。日航機事故は米軍もしくは自衛隊のミサイル誤射によるもので、隠蔽工作が行われたとする。根拠は墜落前にF4が追尾していたとする目撃情報と遺体の異常な炭化。ジェット燃料ではなく火炎放射器が使われたか。著者は元日航のCA。同僚たちの魂…

京都ぎらい官能編

続編。色街としての京都の歴史を描く。戦後の観光戦略もあって、上品な古都のイメージが定着したが、文化の中心であった京都は華やかな歴史を持つ。白拍子からはじまり、美しい女性たちは皇族に始まり、貴族や武家の相手としてまた政治の道具として登場する…

テミスの剣

警察ミステリー。冤罪で一人の若い男が獄中で自殺する。担当の若い刑事は数年後に別件で逮捕した真犯人から、事実を突き止め悩んだ末に公表する。警察、検察は大混乱。粛清人事が行われ本人は針のむしろに。正義を信じ勤め上げる。二十数年後、出所した犯人…

神戸

*[書評]きょうの日はさようなら 義理の兄妹の物語。お互い再婚の連れ子の幼い兄と妹は、互いの孤独を埋めあうように仲良く暮らす。しかい両親の突然の破局により再び引き離される。妹は成人してさえないOLに兄はいっぱしの悪になり神戸で再開。結局兄は死期…

アメリカ太平洋軍

ハワイに拠点を置き、全世界の半分ににらみを利かす太平洋軍の全貌を詳らかに紹介する。著者は研究員として付属のシンクタンクに勤務。前半は司令官の紹介やハワイの歴史、社会について。後半は組織の詳細と変革について述べる。軍事だけではなく外交も担う…

調印の階段

外交官重光葵の生涯を描いた歴史小説。上海の爆弾テロで片足を失うが、義足で第一線に復帰し、戦中、戦後の日本外交を担う。ロジックには自信があったようで、チャーチルやマッカーサーを対等以上に相手に論陣を張る。最大の山場はマッカーサーに日本政府を…

捨て猫に拾われた男

猫エッセイ。犬派の著者が保護センターから黒猫をもらい受け、夫婦で飼いだす。気ままね猫にふりまわさsれながら、魅せられていく姿は微笑ましい。各回に人生訓を述べるが、これは余計なお世話というところ。猫に関する格言集はにやりとさせられる。軽めの一…

信長を生んだ男

歴史小説。信長の実弟信行を主人公とする斬新な着想。父に愛された兄と、母に偏愛された弟。対抗意識から反目するが、その上に帰蝶への恋慕が重なる。弟はある時点から信長のために黒衣となることを決意。尾張国内の反逆者をあぶり出し排除していく。帰蝶の…

神去なあなあ夜話

続編。三重の山奥で林業に励む若者が主人公。失敗を重ねながら温かい人たちに囲まれて成長していく。年上の教師への恋愛がメイン。きゅんとさせる想いはクリスマスに成就しハッピーエンド。安心して読めるシリーズ。タイトルの夜話はすこしあだるとな意味合…

大世界史

対談。現在の世界情勢を理解するには、歴史への理解が必須。特に膨張するイスラム世界の基礎となる、イスラム&ペルシャ帝国は重要。あわせてオスマン帝国と中華帝国。日本人にはなじめがうすい領域だがそれぞれ独自の正義と社会感がある。安倍政権をサポー…

川あかり

藩のお家騒動に巻き込まれた下級武士。藩一番の臆病者で言わば捨て駒として使われる。川止めで知り合った義賊の一団。お互いの事情を知り合ううちに助け合い、窮地を救うことになる。主人公の一本気な生き方と武士の矜持が主題。著者の作品としてはユーモア…

自壊の病理

日本陸軍の組織論。これまで学術誌に投稿した論文をまとめなおす。明治の藩閥から脱皮し、専門家として育てられた軍人が、その組織を守るために暴走していく。ステレオタイプでなく意外と知られてない新たに事実もあり、感心させられた。専門書を一般読者向…

焼け跡のハイヒール

自らの両親の出会いを小説として描く。通信兵の父と見習い看護婦の母。大戦中の二人はそれぞれの戦場と職場で生死をかけた戦いを続ける。戦後めぐり逢いやがて恋愛結婚。物語は終戦までのそれぞれの生き様を交互に描く。どこまでが創作か微妙だが、感動的な…