2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

すずめの戸締り

自らの最新映画の原作。ヒロインが出会った美少年は「閉じ師」。現世と常世の間をつなぐ扉を閉め、禍を防ぐ役目。外れた要石の化身である猫を追って日本各地を旅する。後半は自ら要石となった彼を蘇らせるため、自らの過去と向き合う。ベースにあるのは著者…

中二階の原理

日本社会の特性を際立たせる著者の新たな議論。歴史から紐解き、二階の原理と現場のねじれを中和する中二階の存在を指摘する。具体的に言えば実権を持たない天皇制の存在が代表例。廃藩置県と戦後の農地改革を最小の流血で乗り切ったのもこの緩和剤があった…

格差の起源

世界史を大きく俯瞰し、人類の発展(第1部)と格差(第2部)の起源を探る。成長の最大要因は産業革命と人口転換。機械化により人間は単純労働から解放され、量から質への転換が起こり、「マルサスのくびき」から解放された。格差は地形の問題と、出アフリ…

ことばがひらかれるとき

自ら難聴、聾唖の生涯を克服した著者は、演出家、教育者としての道を進む。その実践で学んだ理論を本書でまとめる。主題は「からだ」と「ことば」の関係。如何に自然で、無理ない体勢を取るかが重要。発声はそれにより驚くほど変化する。障害児の教育にも極…

ペヤングソース焼きそばで学ぶ問題解決力

タイトルに騙された。メーカー側の実話かと思ったが、昼食の選択をめぐるユーザー側の話。ロジカルシンキング、プログラミング、イノベーションの3本立てを極めて平易に解説。上司は抑え込まずに、自由な議論と発想を促すことが重要。 ぺヤングソースやきそ…

明日、野球やめます

現役を引退した著者が、野球と人生への思いを語る。常に冷静でどちらかと言えば不愛想なキャラは、外部との関係を遮断する意図によるもの。強い意志と計画性のなせる業。生活面からすべて緻密に計画され、ストイックでスマート。鉄人と呼ばれたが阪神退団、…

岡田斗司夫ゼミのサイコパス人生相談

朝日新聞に連載の人生相談。まずはこの回答者の選定に拍手。回答は時に辛辣であるが、真摯で実際的なもの。回答者の状況を正確に把握し、その問題点の分析からかかる。サイコパスと悪ぶっているが、どちらかと言えば常識的で人に寄り添う姿勢は好感が持てる…

インディオの聖像

1980年代、著者が若い折の南米取材がベース。イエズス会が主導したインディオたちのキリスト教社会。その遺跡と聖像群を訪ねる。ほとんど知られてないがその素朴な精神性と独自の解釈は目を見張るものがある。大航海時代の南米はヨーロッパによる大虐殺…

一人飲みで生きていく

居酒屋での一人飲みに挑む体験記。男でも一見客は敷居が高いのに女性ではなおさら。記者としてアグレッシブな著者でさえ何度も躊躇する。自分を無にして心を開けば新たな世界が展開する。肩書や経済力ではなく人間力の世界。まず店側と、さらに他の客とコミ…

スモールビジネスの教科書

タイトル通り、これから起業する個人事業者への指南書。ベンチャーと異なり、安定した収益を目指す。その手法は既存ビジネスから顧客のバーニングニーズを探り、先行するビジネスをコピペして、小スケールメリットにより浸透するというモデル。ネット上での…

若者わからん

若者研究の第一人者が、ミレニアム世代の特性と企業の対応法について説く。SNSで育った彼らには、目立たぬ横並びと個人主義が特徴。合コンの幹事も嫌がる。企業や上司は上から目線は避け、横から褒めサポートすることが必要。一定レベルの権限移譲をして育て…

エレクトリックシティ

第一次大戦後、自動車王フォードが夢見た壮大な構想。テネシー川のダムと水力発電から一大工業都市を建設する。元々は陸軍主導のアンモニア工場。終戦で火薬は不要になり、肥料工場として買取る計画。政争の道具とされ結局実現せず。電力開発は官営か民間化…

ブラックアウト

著者は黒人女性でありながらバリバリの右派で共和党支持者。トランプ支持を明言する。現代の黒人社会は補助金漬けで民主党の奴隷、票田になっていると全編をあげて痛烈に批判。自助努力で独立して地位を高めるべしと同胞を鼓舞する。主張は極論で簡単に同意…

人間ってなんだ

エッセイ集。雑誌の連載からの傑作選で3本立ての構成。演劇関係のネタが多いが、題材は幅広く、文章も巧みで飽きさせない。軽めの内容で万人向け。愉しめる内容。 人間ってなんだ (講談社+α新書) 作者:鴻上尚史 講談社 Amazon