産業

ブレイク

地熱発電推進が主題の架空小説。日本は火山国で恵まれた環境にありながら地熱の有効利用は極めて低い。環境問題や温泉組合の反対が直接の原因だが、計画から10年以上を有するスケジュール。巨大な投資が遠因でもある。一方で原発の再稼働は難しく、化石燃料…

半導体ビジネスの覇者

TSMCの創業からファウンダリーとしての成功、今後の課題を描くビジネスルポ。最初は欧米から技術を導入し、天、地、人の利を活かして発展。創業者モリスの存在が大きい。TIに長く勤め、政府の要請で起業する。当初はフィリップスが出資。成長した時点で売却…

商社進化論

日本の5大商社の現状と将来をルポする。日経産業新聞の連載。それぞれの伝統や得意分野を踏まえながら、共通する課題はDX対応、SDGS、若手の活用とレベルは違うがこちらも一緒。大きな危機を乗り越え、現在は総じて好調である。最後のトップインタビューは迫…

漂流する日本企業

日本経済の失われた30年の原因とその対処法を説く。2度の金融危機により、銀行に依存できなくなった企業は、内部留保を高め積極投資を抑制した。一方で外圧によりガバナンスが流行りとなり、配当性向を高めた。直近では投資額より配当額が高い異常な状況…

覚悟

著者は鹿児島のスーパーオーナー家に嫁入り。現在副社長を務める。無謀とされたMBOを実行。負債を返済し優良企業に育て上げる。本書は彼女の経営手法、生き様を簡潔にまとめたもの。基本は極めてポジティブ。即断即決で走りながら考える。悩んだ時の原点は、…

第4の革命カーボンゼロ

日経の連載記事。カーボンゼロに挑む最前線を取材。こちらの認識以上に温暖化が進行し、特に海外では危機感が高い。技術開発も進んでおり、特にペレブスカイト太陽電池と光触媒による水素発生に期待。記事部分に加えてインタビューも全掲載されているが、重…

トヨタのEV戦争

出遅れた感のある日本のEV車戦略。盟主トヨタの将来をアナリストが分析する。EVの神髄は電池とSDV(Software Defined Viecle)。特に後者は車のスマートフォン化として繰り返し強調される。この両面で立ち遅れる。テスラやBYDは垂直統合による内製化を完了。…

解剖京都力

読売新聞の地方版連載。観光だけでは無い京都の潜在力をルポする。キーワードは企業、老舗、大学、宗教、ソフトパワー。ユニークな組織が多く、魅力的な人材も多数存在するが、総じて右肩下がりなのも事実。人口減少がベースにある。特に伝統産業の衰退は深…

おしょりん

福井県鯖江眼鏡産業勃興期が題材。寒村の庄屋兄弟が明治期に起業する。羽二重で一度手痛い失敗をしているだけに、兄は慎重。営業センスに長ける弟は将来性を信じ強引に道筋をつける。大阪から職人を招き、徒弟制度で技術を移植する。親方毎に班を分け競わせ…

タイタン

近未来SF。人工知能タイタンが全てをコントロールする世界。人類は仕事から解放されて優雅な生活を送っている。ヒロインの心理学者に依頼されたのは、12個あるAI拠点の一つのカウンセリング。機能低下の原因を探る。時間をかけた会話と、最新鋭AIとの…

日本のリーダー達へ

JR東海社長である著者の私の履歴書。月間の連載であり、自らの来し方を簡潔に記す。教育者の家系に生まれ、幼いころから論語や古典をたたきこまれる。大学時代は毎日4時間の読書で、古今東西の歴史に精通。圧倒的な教養が決断のベースとなる。JR分割、組合…

国商

昨年病没したフィクサー葛西敬之の生涯を描く。国鉄改革3人組として名を上げる。民営化分割の後、JR東海で新幹線の高速化と増発で利益を上げる。政財界に人脈を築き、安倍、菅政権をサポート。思想的にはかなり右目の保守。官界の人事にも大きな発言力を持つ…

突き抜けろ

楽天グループの創業25年を振り返る。創業者の三木谷氏や役員への取材を上坂氏がまとめる形式。何度もターニングポイントがあるが、トラベルや証券を買収し、現在の巨大なエコシステムを確立した。思いは「日本を元気にする」「世の中をよくする」。現代の…

世界の富裕層を魅了する日本酒の常識

著者は奈良大宇陀の蔵元。元銀行員で海外駐在の経験もある。日本酒の目指す方向性は、純米、生酛(キモト)。あえて大吟醸ではなく、米の削りをおさえて複雑味を残す。燗酒を推奨。明治時代の税制は酒税に頼っており、醸造後早い出荷が必要だった。今後は熟…

再興THEKAISHA

アメリカ経済学者による日本企業の研究。タイトな文化にある日本は、急激な変革よりも安定を優先した。そのため失われた20年からの回復には時間を要したが、ゆっくり着実に改革を進めていると肯定的に評価。スマイルカーブの上流にシフトすることで、ジャパ…

GE帝国盛衰記

ウォ-ルストリートジャーナル誌の記者によるGE取材がベース。米国の栄光を誇る巨大企業の崩壊への道筋。ウエルチ、イメルト2代のCEOの時代。トップダウンの経営には限界があり、巨大コングロマリットはのたうち回る。GEキャピタルはその信用から金…

水道を救え

日本や、世界の水道網は老朽化により、更新の時期を迎えている。著者はAIベンチャーを立ち上げ、シュミレーション技術によりその最適化を図る。コスト圧縮と同時にビックデータの活用により、AIはさらに進化する。シビックプライドを持った公務員をサポート…

ペヤングソース焼きそばで学ぶ問題解決力

タイトルに騙された。メーカー側の実話かと思ったが、昼食の選択をめぐるユーザー側の話。ロジカルシンキング、プログラミング、イノベーションの3本立てを極めて平易に解説。上司は抑え込まずに、自由な議論と発想を促すことが重要。 ぺヤングソースやきそ…

スモールビジネスの教科書

タイトル通り、これから起業する個人事業者への指南書。ベンチャーと異なり、安定した収益を目指す。その手法は既存ビジネスから顧客のバーニングニーズを探り、先行するビジネスをコピペして、小スケールメリットにより浸透するというモデル。ネット上での…

エレクトリックシティ

第一次大戦後、自動車王フォードが夢見た壮大な構想。テネシー川のダムと水力発電から一大工業都市を建設する。元々は陸軍主導のアンモニア工場。終戦で火薬は不要になり、肥料工場として買取る計画。政争の道具とされ結局実現せず。電力開発は官営か民間化…

JAPAN TRANSFORMATION

楽天三木谷氏の率いる新経済連盟。デジタル企業のトップが日本の未来のために提言、活動を行う。錚々のメンバーだけに発言力は大きい。本書は結成から10年を機に現時点での問題意識を対談形式で世に問う形。徹底した規制改革と人材の流動化。後者には移民…

データドリブン思考

経営にビックデータを活かすための啓蒙書。著者はこの分野の草分け的存在で、大阪ガスから滋賀大学の教授に転身。データ活用については組織の壁に苦労したようだ。まず強調されるのは問題解決のための課題の抽出。このステップが極めて重要だが、日本人の不…

円安が日本を滅ぼす

タイトルの円安は現在の話ではなく、日本が凋落を始めた90年代。躍進する中国との競争のために円安を誘導し、製造業をそのままの姿で生きながらえてしまった。本来やるべきは韓国や台湾のように技術を高度化し、世界との水平分業を確立すること。近い将来日…

名門再生

一度経営破綻した太平洋クラブの再生物語。新たに株主となったのはパチンコ業界の雄であるマルハン。近代的な経営手法を持ち込む。創業家一族は何かと問題の多いパチンコ業界を若者や女性に支持されるエンタメ企業に変身させた実績がある。顧客第一主義を貫…

世界史は化学でできている

表題通り、人類の歴史を化学の発展の面から振り返る。各分野毎に時代を追う形になっており、火の発見から、食料、染料、エネルギー、原子力まで網羅。長い歴史に比べれば、プラは最近のことであることがわかる。進歩に貢献する光の部分と軍事や環境破壊とい…

世界2.0

メタバースがもたらす新たな世界を予測、解説する。ネットの3D化はの技術は革新的で世界を一変させる可能性がある。いわく「神の民主化」により世界を創造する。ルネッサンスの再来とも表現。ゲームが入り口になるので日本にはチャンスがある。第三章が本書…

鉄の楽園

東南アジアの新興国を舞台にした高速鉄道売り込み合戦。中国との出来レースが濃厚だったが、汚職撲滅を掲げる新政権が成立。日本と同国の鉄ちゃんの連携で白紙撤回。リゾートトレインを中心とする観光事業に舵を切る。経産省と総合商社のタッグ。売り切りで…

この国の危機管理失敗の本質

東日本大震災、福島原発事故、コロナ禍と続く大規模危機。日本政府の対応は後手後手で大戦中と基本的に変わっていない。特に震災、津波については学術的に予見されていただけに無策が惜しまれる。経済優先と前例主義が障壁となる。水俣病対策が悪例として何…

国民の底意地の悪さが日本経済低迷の元凶

長期低迷する日本経済を解析する。結論はタイトル通りムラ社会の悪癖。ゲマインシャフトの色彩が強く残り、真の近代化が達成されていない。高度成長は外部要因であった輸出主導でなされた。復活のためには国内消費の喚起が必要だが、そのためにはマインド変…

シン君主論

マキャベリの君主論を解説し、現代企業のリーダー論に適用する。中世フィレンツェでの著書だがその現代性に驚かされる。変化の激しい時代に強いリーダーシップで、企業文化を変革することが必要。ゲームのルールは変わり日本の終身雇用は機能せず、コーポレ…