2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

マラソンランナー

日本のマラソン史を黎明期の金栗四三から高橋尚子まで時代を追って網羅するノンフィクション。ランナー本人へのインタビューにより主要部は構成される。華やかなレースだけににスポットをあてるのではなく、性格や人生観などその内面に迫る。一人あたりに紙…

一度も植民地になったことがない日本

評判の新書。作者は国際的に活躍する版画家。スウェーデン人のエンジニアと国際結婚。海外特にヨーロッパの視点からみた日本を紹介する。極東の島国でありあまり知られていないのが事実。個人的な数々の経験が披露されるが、期待していたほど斬新ではない。…

[書評]昭和の三傑

鈴木貫太郎、幣原喜重郎、吉田茂を維新の三傑になぞらえて、敗戦日本に復興をもたらした英傑とする。戦勝国アメリカ相手に豊富な経験に支えられた外交交渉により、戦後日本の基軸である象徴天皇制と平和憲法を勝ち取る。憲法9条は、決して押しつけられたも…

ネットカフェ難民

格差社会の底辺として、ネットカフェで終夜を過ごす生活を赤裸々に描く。衣食住のノウハウから日雇いの派遣業務まで実体験が語られる。ただし作者の場合東京芸大でのある意味エリートであり、追い詰められたと言うよりは自ら選んでこの境遇に入った疑似体験…

心はいつも荒野

転落により記憶を喪失した男が、実は幽体離脱により他の人間と人格が入れ替わっており、カルト集団から命を狙われるというストーリー。明らかにオウムを意識する。すこし懲りすぎのプロット。登場人物が多彩な割にその狙った役所がもうひとつわかりにくい。…

退屈姫君海を渡る

天真爛漫で機知に富んだ我らがめだか姫が、失踪した夫君の捜索のため、四国の領地へ渡り大活躍。平家の末裔で藩の乗っ取りをたくらむ一族と対決する。周りをいつもの脇役で固め、講談調の早いテンポでユーモアたっぷりに楽しませる。安心して読めるが3作目…

理系白書

副題は「この国を静かに支える人たち」。毎日新聞の連載だけに非常に読みやすい。理系人間の処遇、特性から教育、大学改革と守備範囲は広い。面白いのは前半の生態に近い部分。理系の端くれとして理解しやすい。日本は技術立国として生きていくしか道はなく…

焦茶色のパステル

全集の後半。競走馬の転売にかかわる疑惑を、被害者の未亡人とその女友達が解いていく。この二人の掛け合いを中心にテンポの良い会話で楽しませながら飽きさせない。すこし欲張りすぎて後半は盛りだくさんのイメージ。謎解きに用いた馬の遺伝子は目新しい素…

ダラス

出張でダラスに3泊。初日に時差調整をかねて観光。ダラスと言えばケネディ暗殺。狙撃場所であった教科書倉庫がそのまま博物館として残されており、若く偉大な大統領の誕生から、暗殺の瞬間、葬儀、事件の真相の解明とパネル、写真が中心だがわかりやすく展…

黄金流砂

昭和57年の乱歩賞受賞作。義経の北行伝説と奥州藤原氏の秘法探索を軸とする。中盤からは暗号文書の解読とアリバイ崩し。全体としてオーソドックスだが古風なミステリーとなっている。歴史、言語について薀蓄が語られるが正直言ってうざい。結末もほぼ予測…

就職事情

[書評][社会]だから若手が辞めていく 最近どこの企業も悩まされている若手社員の定着率の悪化。実際に社員にインタビューすることでその実像に迫る。豊富なデータをビジュアルに見せる。ミドル自身に余裕がなく悩める若手に適切な教育指導ができない。まして…

ビタミンF

短編集。いずれも思春期の子供達をかかえる中年のサラリーマンが主人公で、まさに私の現在の状況にぴったり。親の知らぬうちに子供達は成長し悩みをかかえている。時として親に心配かけまいと表面を取り繕うこともある。父親として如何に立ち向かうか、難し…

女子フィギュアスケート

常に日本の第一線で競技人生を送った著者が、意外と知られていないスケートの世界を紹介する。前半は最近の日本勢の活躍の裏舞台を。後半は自らのリンクで過ごした半生をわかりやすく解説する。ただジャンプの違いはアクセルを除いて飛ばないかぎりわからな…

学校へ行かなかった研一

大前研一の実の姉が、子供時代からの氏のエピソードを語る。氏のこれまでの著作と大きな差は無いが、人知れず多大な努力をされて来たことは改めて認識させられる。アメリカ人の妻と実母との葛藤を冷静なジャッジで治めたあたりはさすが。自身のDV、離婚体…

韓国人から見た北朝鮮

意外と日本人からは落ちている視点。韓国内では金正日は高評価で迎えられるとショッキングな記述で始まる。冷静に考えれば南北は同じ民族であるので、メンタリィティーは近いはずであり、反日で結束することはあり得る。著者はその精神性を形作ったのは50…

世界反米ジョーク集

洗練されたジョークを通してアメリカを批判する。作者が後書きに書いているように、こんな本が出版できることは実はアメリカの健全性を示している。第一章は唯一の超大国であることへの批判、圧倒的にブッシュの知性の無さを揶揄したものが目立つ。第2章は…

スラムダンク勝利学

スポーツドクターである著者が、かのバスケ漫画をスポーツ心理学から解説する。すべての主題はむしろ漫画原作側にあり、学術的に翻訳しているような内容。アニメでしか知らない原作を読んでみたくなった。チームや他人に対する献身、思いやりは必ず自分に返…

ブルーハネムーン

美貌の結婚詐欺師とその参謀役である小説家志望が演じるドタバタ劇。前半の騙しのテクニックは引き込まれるほどであったが、後半サイパンでのアクション部分は尻すぼみの感がある。参謀役の純粋な淡い想いには応援したくなるが。作者の一連の作品に比べて妙…

アメリカから来た赤ん坊

最新の遺伝子工学を題材にしたミステリー。作者は医者であるので技術面には裏付けがあるのだろう。内容的には登場人物相互の関係がわかりにくい、肝心の先端技術と個々の人間の感情がマッチしない。最後は楽屋落ちに近いと苦言を呈したい。巻末に解説が欲し…