2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

起終点駅

北海道を舞台とした短編集。決して豊かでない環境のもと、男女の関係や過去の犯罪をバックにそれぞれの人生が紡がれる。二編に駆け出しの女性記者が登場するが、創作に苦しむ著者の投影のように感じた。初めて接したが堅めのな文体と重厚なトーン。好みは分…

十二月八日の幻影

日米開戦迫る東京で行われた諜報戦。真珠湾攻撃の情報をつかもうとする米英とそれを防ごうとする海軍の防諜班。ソ連も加わり水面下での戦いが繰り広げられる。好調なずべりだして引き込まれたが、後半はかなり無理矢理謎解きに持っていかれた感じ。エンタメ…

美の概念60

タイトル通り美術鑑賞に必要な文化、概念を豊富なカラー図と共に解説。西洋は歴史順に細かく、日本はキーワードでやや定性的な記述となっている。今ひとつ判りにくい西洋美術史を短時間で復習できるのは有り難い。図版も美しい。類書は多いが手元に置いても…

道なき道を行け

著者の自伝。畝傍高校から早稲田大学。日本の大学に飽きたらずアメリカへ留学。物理学の学士号を取り、医療電子機器の開発に従事。GEの管理職となるが、理想に燃えて起業。MRIへの部品供給で社会に貢献する。頻出するドットは人生の変節点。その時々を…

冷蔵庫を抱きしめて

短編集。男女の機微をユーモラスに書いた作品が8作。DVや拒食症、ゴミ屋敷など現代のニュースを題材にした秀作が並ぶ。女性側の視点で書かれたものがいい。お勧めは表題作と「カメレオンの地色」、いつもどおり期待を裏切らない安定した内容。冷蔵庫を抱き…

銀の街から

著者による映画評論。朝日新聞への連載。月一回とのことだはすでに15年で100作以上を紹介。残念ながら私が知っている作品は数作にとどまる。それだけメジャーなものではなく知られていない作品が多い。イタリア映画やインド映画まで幅広い。人間ドラマ…

アート鑑賞超入門

絵画を中心とした美術への接し方、鑑賞法を実践的に説く。結論は鑑賞は鑑賞者である我々の作品である。一般的な解釈に囚われずそれぞれに自由な感想、感動を持つことが究極の鑑賞法。感性&知性の両面バランスが重要。作品や作者の背景などの知識は部下とす…

全員経営

欧米流の経営手法を計画、分析、コンプライアンス過多とし、日本式の全員参加の経営を推奨する。著者従来の主張である暗黙知と形式知のサイクルを廻し、社員一人一人が良い会社&社会のために努力する組織を理想とする。JALやヤマトの成功事例の紹介とそ…

殉愛

やしきたかじん夫妻の闘病記である。60歳を過ぎてから巡り会った30才年下の最愛の妻。知り合ったときに食道がんが判明するが、彼女は看病に全てを捧げる決心をする。常識ではありえないような献身的なケア。病魔と真正面から向き合い可能性のある限り治…

眺望絶景

短編集。スカイツリーと東京タワーの往復書簡の間に、東京で暮らす様々な人間模様を描いた8編を挟む。不思議とそれぞれの印象が薄い。東京タワーの台詞である。電波塔はそこに立つしかないというフレーズが人間への応援歌のようで心に沁みる。眺望絶佳 (角…

古田式ワンランク上のプロ野球観戦術

タイトル通りの内容。投球、打撃の技術論から監督の戦術まで、プロとしての野球の見方を伝え、面白さを再発見させる。野村監督の厳しい指導のもと、一時投手へのサインが出せなくなるイップスに悩まされたエピソードを紹介する。期待通りの内容。 変化が。進…

名画の暗号

名だたる巨匠の名作を取り上げ、そこに込められたメッセージを読み解く。時代背景や美術史家の諸説を熟知した著者ならではのシリーズ。今回は9編。有名どころは押さえているつもりだが、まだまだ知らない作品も多い。ミケランジェロの自己否定が興味深かっ…

クロネコヤマトの人の育て方

宅急便で他を凌駕するヤマト運輸の強さの秘訣を、人事面から解析する。大企業でありながら全員経営が社訓。マニュアル類は最小で、現場のセールスドライバーに判断が委ねられる。東日本大震災の際に自発的に救援物資の輸送にあたったのはその最たる発露で絶…

日本経済はなぜ浮上しないのか

経済アナリストによるアベノミクスの評価と現状分析。全体として正しい方向にあるとしながら、消費増税により景気回復は腰折れとなり、新たなてこ入れが必要とする。さらなる緩和による低所得者層への逆進性への補填と、10%への最増税については強く延期…

佐藤可士和の打ち合わせ

クリエイターの著者が打ち合わせの秘訣を解く。仕事柄正式な会議ではなく、社内外の打ち合わせが重要な立場。その効率化がそのまま成果に直結する。意外とビジネスマナーに拘るのは気持ちよく相手を誘うため。準備すなわち下ごしらえには充分な時間を割く。…

スタート

カリスマ映画監督により久々の邦画大作の撮影がスタート。気心の知れた家族のようなスタッフが招集される。資金の関係で制作委員会方式。筆頭のテレビ局は金も出すが口も出す。やがてそれが軋轢となり事件が起こる。一応ミステリー仕立てだが、主題は映画の…

メガ

著者が巨大技術の現場を訪ねる理系エッセイ。大規模なインフラから先端の加速器による科学研究まで、写真入りで浅く広く紹介。巨大でありながら精密な日本の工学技術を賞賛する。特に興味が深いのは核融合レーザーを見据えた浜松ホトニクス。目先の利益には…

残りの人生で今日がいちばん若い日

アラフォー世代の恋愛小説。離婚歴のある編集者と長年の不倫を解消した書店員の恋愛。男性側は心身症の妻と小学生の娘を抱え、女性側はDVの父親のトラウマに悩む。書店での作家のサイン会を契機にお互い惹かれあうが、そこはなかなか進展しない。最後はや…

東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと

エッセイ集。人気教授が自らの時間管理術、情報収集発信術を明らかにする。内容的にはあまり驚くべきことは無く、自分がやっていることと根本の部分では大差は無い。多忙な中で多量の執筆をこなす。背景には若い学生時代からの圧倒的な努力がある。 一日ひと…

イギリス人アナリスト日本の国宝を守る

著者はオックスホード卒、辣腕のアナリストとしてならす。学生時代からの日本への興味が高じて茶道に入り、縁あって漆工芸会社の社長となる。前半はアナリストして日本式経営への提言。独善的な解釈を避け、数字をサイエンスする欧米式の経営手法を推奨。耳…