2022-01-01から1年間の記事一覧

ムスコ物語。

著者による自由奔放な子育て記。イタリア留学時代にシングルマザーとして出産。その後イタリア人学者と再婚し、日本、シリア、リスボン、シカゴと移り住む。息子の方は巻末で告白しているように大変だったようだが、結果として逞しいコスモポリタンに育つ。…

拝啓人事部長殿

著者は新卒でトヨタ人事部に入社、その後サイボウズへ転職。全く異なる風土での経験から、トヨタの人事部長宛ての手紙の形で、未来の人事政策を提言する。中盤は先進12社の取材を含む。デジタルネイティブの世代としてはネット空間のような会社組織が理想。…

組織のネコという働き方。

新しいタイプの組織人材論。人材をイヌとネコに大別。それぞれ他律的、自律的。上位にはライオンとトラ。日本型組織は圧倒的に従順なイヌが大勢を占めるが、近年組織に縛られず、自分で価値を見出すネコ型が増加しつつある。進化系がトラであり、本書の中盤…

彼女の家計簿

ある日女性支援NPOからシングルマザーである主人公に届いた戦時中の家計簿。代用教員として家計を支え、家族に尽くした祖母の貴重な記録。男と心中したと伝え聞いた過去の謎に迫る。登場する女性それぞれの過去と人生観が物語を織りなしていく。主題は女性の…

目で見る日本史

タイトル通りの内容。古代から近代まで日本史の舞台となった地点を写真で撮影。簡単な説明をつけて解説。ビジュアルは非常に説得力がある。行きたいところもいくつか。歴史好きには愉しめる内容。 -子規庵 -旧吉田茂邸 目でみる日本史 作者:岡部 敬史 東京書…

遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ

大阪在住の著者によるエッセイ。コロナ禍の中で日常を見つめ直す。テーマは非日常、近場の小トリップ、食堂や居酒屋などB級グルメも紹介。そこに食らう人々にも密着して実像に迫る。軽い内容なので軽く読めるところは好感。これが2作目らしいが、1作目に行…

定価のない本

戦後直後、神宝町の古書店街を舞台にしたミステリー。連続殺人の謎解きが、GHQが絡んだ文化政策に波及する。日本の歴史を抹殺したいGHQと古書店主の対決が主題。商売を離れて、歴史と文化の力を見せつける神保町の心意気。一気に読めた。甘めのA評価。 定価…

不思議の国ニッポン

海外メディアの特派員が見た日本の実像。彼らから見て不思議な日本が展開される。デジタル化の遅れ、男女の不平等など、人口減少など根の深い問題が多い。天皇制についても真摯に向き合う。現上皇のリベラルな態度には高評価。日本のマスコミでは左右のフィ…

夜ふかしするほど面白い月の話

月に関する雑学本。一般人の素朴な疑問に対する回答の形式。ほとんど既知の天文学の基礎だが、知らない最新情報も多少はある。ある意味これだけ大きな衛星を従えているのはレアなケース。今後は資源探索が期待されるがコストは膨大なようだ。まずは予想通り…

仮面を取った浦島太郎

浦島太郎は単なる昔ばなしではなく、古代史に基づく伝承であるとする著者の自説を検証する。冒頭に7つの謎を提示。一つ一つつぶしていく構成。舞台は古代に栄えた丹後の国であり、蓬莱山は渤海の秦の遺跡を挙げるなど斬新な発想。旧豪族を征服した大和朝廷…

20歳のソウル

20歳で早世した市立船橋高校OBのトロンボーン奏者。野球部の応援曲をこの世に残す。高校時代のほとんどをブラバン活動にかけた彼の葬儀には多くのOBが駆け付け、演奏で見送った。本書は葬儀の5日前からの動きと並行して、彼の生き様、闘病生活、恋愛を描…

世界を変える寄り道

ポケモンGOで世界を変えたナイアンティック社。グーグル発のスタートアップだが、そのコンセプトは位置情報を活かしたゲームで人をリアルな世界に出そうというもの。人間の健康と新たな繋がりを目指すミッション。ちなみにピグミンも同社の手による。著者は…

すずめの戸締り

自らの最新映画の原作。ヒロインが出会った美少年は「閉じ師」。現世と常世の間をつなぐ扉を閉め、禍を防ぐ役目。外れた要石の化身である猫を追って日本各地を旅する。後半は自ら要石となった彼を蘇らせるため、自らの過去と向き合う。ベースにあるのは著者…

中二階の原理

日本社会の特性を際立たせる著者の新たな議論。歴史から紐解き、二階の原理と現場のねじれを中和する中二階の存在を指摘する。具体的に言えば実権を持たない天皇制の存在が代表例。廃藩置県と戦後の農地改革を最小の流血で乗り切ったのもこの緩和剤があった…

格差の起源

世界史を大きく俯瞰し、人類の発展(第1部)と格差(第2部)の起源を探る。成長の最大要因は産業革命と人口転換。機械化により人間は単純労働から解放され、量から質への転換が起こり、「マルサスのくびき」から解放された。格差は地形の問題と、出アフリ…

ことばがひらかれるとき

自ら難聴、聾唖の生涯を克服した著者は、演出家、教育者としての道を進む。その実践で学んだ理論を本書でまとめる。主題は「からだ」と「ことば」の関係。如何に自然で、無理ない体勢を取るかが重要。発声はそれにより驚くほど変化する。障害児の教育にも極…

ペヤングソース焼きそばで学ぶ問題解決力

タイトルに騙された。メーカー側の実話かと思ったが、昼食の選択をめぐるユーザー側の話。ロジカルシンキング、プログラミング、イノベーションの3本立てを極めて平易に解説。上司は抑え込まずに、自由な議論と発想を促すことが重要。 ぺヤングソースやきそ…

明日、野球やめます

現役を引退した著者が、野球と人生への思いを語る。常に冷静でどちらかと言えば不愛想なキャラは、外部との関係を遮断する意図によるもの。強い意志と計画性のなせる業。生活面からすべて緻密に計画され、ストイックでスマート。鉄人と呼ばれたが阪神退団、…

岡田斗司夫ゼミのサイコパス人生相談

朝日新聞に連載の人生相談。まずはこの回答者の選定に拍手。回答は時に辛辣であるが、真摯で実際的なもの。回答者の状況を正確に把握し、その問題点の分析からかかる。サイコパスと悪ぶっているが、どちらかと言えば常識的で人に寄り添う姿勢は好感が持てる…

インディオの聖像

1980年代、著者が若い折の南米取材がベース。イエズス会が主導したインディオたちのキリスト教社会。その遺跡と聖像群を訪ねる。ほとんど知られてないがその素朴な精神性と独自の解釈は目を見張るものがある。大航海時代の南米はヨーロッパによる大虐殺…

一人飲みで生きていく

居酒屋での一人飲みに挑む体験記。男でも一見客は敷居が高いのに女性ではなおさら。記者としてアグレッシブな著者でさえ何度も躊躇する。自分を無にして心を開けば新たな世界が展開する。肩書や経済力ではなく人間力の世界。まず店側と、さらに他の客とコミ…

スモールビジネスの教科書

タイトル通り、これから起業する個人事業者への指南書。ベンチャーと異なり、安定した収益を目指す。その手法は既存ビジネスから顧客のバーニングニーズを探り、先行するビジネスをコピペして、小スケールメリットにより浸透するというモデル。ネット上での…

若者わからん

若者研究の第一人者が、ミレニアム世代の特性と企業の対応法について説く。SNSで育った彼らには、目立たぬ横並びと個人主義が特徴。合コンの幹事も嫌がる。企業や上司は上から目線は避け、横から褒めサポートすることが必要。一定レベルの権限移譲をして育て…

エレクトリックシティ

第一次大戦後、自動車王フォードが夢見た壮大な構想。テネシー川のダムと水力発電から一大工業都市を建設する。元々は陸軍主導のアンモニア工場。終戦で火薬は不要になり、肥料工場として買取る計画。政争の道具とされ結局実現せず。電力開発は官営か民間化…

ブラックアウト

著者は黒人女性でありながらバリバリの右派で共和党支持者。トランプ支持を明言する。現代の黒人社会は補助金漬けで民主党の奴隷、票田になっていると全編をあげて痛烈に批判。自助努力で独立して地位を高めるべしと同胞を鼓舞する。主張は極論で簡単に同意…

人間ってなんだ

エッセイ集。雑誌の連載からの傑作選で3本立ての構成。演劇関係のネタが多いが、題材は幅広く、文章も巧みで飽きさせない。軽めの内容で万人向け。愉しめる内容。 人間ってなんだ (講談社+α新書) 作者:鴻上尚史 講談社 Amazon

最強知名度の作り方

イモトのWIFIとニシタンクリニックで名を馳せた企業家。ともかく知名度優先で市場に参入、完成度は後追いさせる経営手法。具体的にはインパクトのあるCMで名前を連呼する。商品説明は極論すれば客に検索させる。効果は抜群で市場を占有。金融や採用にも好循…

ワーカーズダイジェスト

主人公は30過ぎの独身の男女。偶然に姓と誕生日が同じ。互いに異なる職場でそれぞれの葛藤を抱えながら暮らす。ラストで出会いが訪れ少し光明がさす所で完結。付属の短編も含めて、現代社会で若者の生き方を問うような主題。全体を通して焦燥感と寂寥感が…

グレイがまっているから

画家とその家族とシベリアンハスキーの日々。わずか5歳で昇天するので、後半は闘病日記。やんちゃで好奇心旺盛な性格だが、家族には甘え、周囲を明るくする犬の力。文章も巧みだが、画家本来の挿絵とスケッチで読みやすい構成。本書は愛蔵版と銘打ち、いく…

やらかした時にどうするか

失敗学の大家が、長年の研究の成果を学生向けにやさしく解説する。失敗と創造は背中合わせの関係で、決して恐れることなく貴重な体験知とすること。逆算の原因解明プロセスが創造的思考に通じる。自らの失敗も実例を挙げて説明。思いつきノートや思考展開図…