2017-01-01から1年間の記事一覧

海は語らない

海軍のサ号作戦。インド洋での通商破壊戦だが、撃沈した英商船から救助した捕虜を処分したことで、戦犯に問われる。左近允司令官は死刑。実は命令は大本営から出ていたが、上層部への波及を恐れ、現場に責任を押し付けた。司令は尊敬すべき武人ですべてを背…

京都嫌い

一般には京都人と思われる著者が、本当の内部事情をネタに京都を語る。中心に据えるのは洛中による洛外への差別意識。前半はしつこいように実例をあげ笑わせる。後半はさらに歴史的な観点から南北朝の騒乱まで立ち返る。嵯峨に天龍寺を立てたのは足利尊氏に…

縮小ニッポンの衝撃

NHKスペシャルの取材記。人口減少期に入った日本。その下降曲線は想像以上。地方だけでなく東京や周辺部でも影響は顕著。地方はすでに公共サービスンが破たんしており、住民自らが担うことが一般化しつつある。財政破綻した夕張市や限界集落の多い島根県を取…

ミッドナイトバス

新潟に住む長距離バスの運転手が主人公。かって離婚した妻が乗客として乗り込んでくるところから、それぞれの家庭の物語が展開する。二組のカップルは紆余曲折ながらもとのさやに。子供たちは問題を抱えながらもそれぞれの道を選ぶ。義父は覚悟を決めて自ら…

決戦賤ヶ岳

7人による共作シリーズ。世に名高い七本槍を一人ずつ担当。秀吉の近習として功名心とそれぞれの個性や立場、人生観を描く。秀吉が自らの箔付けのため、手柄を実際より大きく喧伝した感はある。さすがにそれぞれ筆力は高く一気に読破。決戦!賤ヶ岳作者: 天野…

下町ロケット2

続編。主人公の経営する中小機械メーカーが今度は先端の医療材料に挑む。開発するのは心臓の弁体。ライバル会社や医学界の権力争いに巻き込まれながら、最後は患者である子供たちを救いたいという純粋な想いが勝利する。データ改竄疑惑などもしっかり取り込…

デジタルネイティブ人材の育て方

大前塾の講義集。今回は次世代の人材開発がテーマ。新卒一括採用の従来の日本式は機能せず、中途での転職やアウトソーシングを組み合わせた真のグローバル化が必要となる。具体例は日産、サイバーエージェント。教育サイドではインドのIIT。MITをロールモデ…

水を石油に変える人

戦前、海軍相手に大胆な詐欺を仕掛けた男。水に薬剤を加えることでガソリンを製造するという技術を売り込む。化学者としては信じられない話だが、山本五十六次官も実験を許可したという。結局手品を見破られるが、大学教授や企業家を巻き込んで権威づけして…

列車ダイヤはこう進化を遂げた

長年国鉄でダイヤ作成に携わった著者が、基礎から解説する。ダイヤは鉄道運行のすべての基本であり、技術の進化とともに改善されてきた。驚かされるのはその飽くなきスピードアップへの挑戦の歴史である。あわせて乗客から見て便利で使いやすいことにも配慮…

持たざる者

震災を題材とする連作集。放射能を心配するあまり、海外へ避難する親子、意見が合わず離婚する夫婦。逆に海外から帰任し介護に苦しむ主婦と現代の家族、親子関係を鮮烈に描く。共感できる部分は半分くらい。誇張され少し現実離れしているのかも知れない。独…

自衛隊の実像

女性防衛ジャーナリストのルポ。基本的には自衛隊シンパで、献身的な隊員たちに寄り添い、世間の持つ虚像や誤解を解くべく力説。強調されるのは予算不足で、個人の意思と努力に負っている現状。かなり偏向はしているが、知らない事実も多く参考になった一冊…

輪廻転生

⋆[書評]ペンギンのバタフライ タイムトラベルを題材とした連作集。過去と未来を行き来することで人生の変曲点を変えようとする物語が6篇。よくある題材ではあるが、現代的な感覚でテンポよく展開。うまく引き込まれた感じ。連作間の関係性がやや弱いかとい…

日米開戦へのスパイ

最大の謎、ゾルゲ事件の真相に迫る。要は開戦に消極的な近衛内閣を打倒するために東條が仕組んだ謀略であるとする。ゾルゲの成果とする日本軍南進の情報は遅きに失しており、実際の効果は薄かったとする。戦後冷戦期のソ連では英雄視され、日米では反共のプ…

世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか

BCGのコンサルである著者が、現在の先端企業の教育動向において、タイトルどおりの傾向の根底にある問題を解析する。論理を中心とするサイエンス的な経営手法はコモディティ化により行き詰まり、よりアート的な判断がトップには要求される。美術愛好家の私と…

不動の魂

日本代表のFBである著者の自叙伝。生い立ちから2015年のワールドカップの直前まで。佐賀工業、早稲田、ヤマハといわばエリート街道だが、本人の中ではレベルが上がるたびに必死でくらいついていったとのこと。幼少期は一つ年上の兄の存在が大きい。グラ…

大山健太郎

アイリスオーヤマ創業者の自叙伝。父親の急死で大阪のプラスチック成形業を20歳で引き継ぎ、一代で巨大企業を立ち上げる。初のメーカーベンダーへの転身。ホームセンターに直販し、一般顧客のフィードバックを的確に捉える。同業の追い上げには新製品の投…

エリートの倒し方

著者によるビジネス書。無名の選手がプロのレギュラーを確保し、世界一になるまでの戦略を解説。自らの立ち位置を把握し、バッティングを磨くことで厳しい競争を抜ける。その一方で多くのエリートが挫折する姿を見てきた。引退後は自ら企画会社を経営、貪欲…

ぐるぐる博物館

著者による博物館訪問エッセイ。メジャーなところから私設博物館まで。紹介と学芸員へのインタビューで構成。独自の感性で印象を文書化。読みやすく興味を引く内容となっている。行きたいのは京都の龍谷ミュージアムと石巻の石ノ森萬画館。大牟田の石炭関係…

コーチングの神様が教えるできる人の法則

著者はエグゼクティブコーチとして多くのエリートを指導する。共通するのは負けず嫌いの性格。競争社会を勝ち抜いてきたトップたちは自己中心的になりがち。上に行くほど対人関係が重要になり、人格が求められる。手法は360度評価。今すぐにでも始められる欠…

天才

稀代の政治家人生を一人称で書く。生い立ちから逝去まで、まあ見事な生き様。コンピューター付きブルドーザーの愛称も懐かしい。抜群の記憶力と人たらし。アメリカにおいて行かれた感のある中国外交を独断で国交回復まで持ち込む。金権政治を批判され疑獄に…

海の見える理髪店

家族をテーマにした短編集。6編を掲載。軽く笑わせ、ストーリーに引き込みやがてホロリとさせる。根底には人間の持つ優しさがある。こういうテーマだとやはりこの作者は抜群に上手い。安心して読める作品。海の見える理髪店作者: 荻原浩出版社/メーカー: 集…

三人の二代目

上杉景勝、宇喜多秀家、毛利輝元が主人公の歴史大作。偉大な創業者から引き継ぐが、勢力の維持に苦戦する。新興の織田、豊臣に対して旧勢力を引きずり劣勢を強いられる。内部の権力抗争も足止めの要因。期せずして関ヶ原では西軍に属し、徳川政権下では大き…

東北タイの天才校長

イーサンで独自のスピリツアル教育を実践するウィチャン校長。その学校でボランティアとして活動する著者の滞在記。HPに掲載された日記がベースで正直がっかり。素人の日記で登場人物も場所もイメージがわかない。肝心の教育方針については末尾にまとめられ…

難題が飛び込む男

昭和の大経営者、土光敏夫の生涯を碩学が解説する。IHI,東芝、臨調が3大業績。ちょうど20倍づつのスケールアップ。成績は2勝1分け。強みは現場主義と凛とした背中。直接話法による経営改革。東芝では組織全体まで彼のイズムが浸透しなかった。清貧を貫…

新所得倍増論

先進国の中で極めて生産性の日本に対する提案を、イギリス人のトップアナリストである著者が記す。日本を愛しその独特の文化と機微を知り抜いた著者からの指摘は的を得ている。戦後の経済成長は人口増加に支えられており、その上げ潮が無くなった時に成長は…

74

74型戦車内で起こった技術将校の自殺。捜査する警務女性自衛官の前に過去の殉職事故が明らかになる。たたき上げの戦車乗りの5人の絆。年月とともに一枚一枚と欠けていく。最後は北朝鮮の陰謀との結末。元自衛官の著者ならではの力作。ディテールの記述はい…

アリよなんであなたはそうなのか

女性生物学者のエッセイ。知られざるアリの生態とこれまでの研究人生を織り交ぜて一冊に仕上げる。暗い巣の中で仲間の同定や、生死の判別は外皮につく有機物の臭いがキーとなる。アリに幼虫を託す蝶など、興味津々の昆虫の世界。本人のアメリカやドイツの苦…

統計は暴走する

世に溢れる統計データ。特にバイアスのかかった発信につき警鐘を発する。それを見抜くだけのリテラシーが重要。難しい話でなく読んだときに違和感があれば裏を取ること。20の例題をあげ、詳細に解説するが後半はやや重複感がある。こちらが読破を急いだの…

生産性

今ホットな話題の働き方改革。いかに生産性を上げるかが喫緊の課題となる。コインの裏表でなく本質に迫る課題が急務。著者のキャリアもあり人事的な見地の改善案が多い。研修はロールプレイング形式が有効。選抜はトップをどう育てるか。横並びでなく個人の…

100日で結果を出すM&A入門

大前塾の講義集。日本企業が苦手とする海外M&Aをプレゼン資料で解説。成功例としてJTと旭硝子の担当役員を招く。タイトル通りKFSは短期間での統合完了。周到な準備と断行が必要。投資銀行の紹介事例では上手くいくはずがなく、自分が業界事情を熟知してい…