2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

図書館の海

短編集。アンソロニーへの出品作を中心に構成。代表作の予告編、番外編というような色彩もあるが、それぞれに独立した小品となってなっており楽しめる。何気ない伏線を融合させていく恩田ワールドの面目躍如。同業者では皆川博子を絶賛。図書室の海 (新潮文…

世襲議員のからくり

政権投げ出しの首相に代表されるように、世襲議員により日本の政治は劣化している。議員秘書として政界に通じた著者がその構造を詳らかにする。所謂3バン(地盤、看板、カバン)の中で先代の政治団体資金を無税で相続できることに批判を集中する。後援会組…

石ころだって役にたつ。

著者の読書歴。少年期から青年期にかけての遍歴を物語仕立てにして披露。めずらしく軽妙な形で仕上げている。ヨーロッパ映画や演劇に没頭しさすらう精神。女性遍歴を含む私生活も垣間見える。予想していたが圧倒的な読書量。石ころだって役に立つ (集英社文…

カンブリア宮殿 村上龍x経済人

番組初期の放映分を活字化。この頃の私は半分くらいを視聴していた。対談の記録と村上龍の編集後記からなる。ゲストはトヨタ、ホンダのトップからベンチャーの雄まで幅広い。共通しているのは人間的魅力。もう一度会いたいと思わせる力が成功を呼ぶ。しかも…

プリズムの夏

青春恋愛小説。高校生の二人組が年上の女性に憧れる。美しいその人は母親から受けたトラウマからうつ病であり、リストカットの過去がある。自身のブログで失恋の痛手から自らを消し去ることを宣言する。主人公たちはそれぞれの事情を抱え葛藤しながらも、ヒ…

青春夜明け前

短編集。男なら誰でも経験する性へのめざめ。寝ても覚めても女性のとしか考えれれなかった時代。小学生から高校卒業まで純粋でアホな少年たちの群像をユーモアとペーソスたっぷりに描く。あくまで創作なのだが、まるで自分の経験談のように書く手法。ただこ…

土偶展

金曜日の午後時間が出来たので、迷ったが閉幕間近の「土偶展」へ。本館5室のみの小規模展だが驚くほど充実した内容。国宝の3体を初め、著名な土偶が一堂にそろう。あらためて縄文時代の造形美術のレベルの高さに目を瞠らされる想い。古代の人々はそんなこ…

交渉人

追い詰められ自棄になったコンビニ強盗が、病院に立てこもり患者達を人質に籠城する。交渉するのは警視庁のプロとその弟子の女性キャリア。一見単純な事件が後半思わぬ展開を見せる。医療過誤により愛する肉親を殺された家族達の壮大な復讐の計画であった。…

名短編ここにあり

全12作からなるアンソロジー。いずれも日本を代表する大家の作品。昭和の作品が多くさすがに時代をを感じる。作品ごとに好みはわかれるのは当然。井上靖の「考える人」がお気に入り。名短篇、ここにあり (ちくま文庫)作者: 北村薫,宮部みゆき出版社/メーカ…

金賢姫からの手紙

先に拉致被害者と感動的な再開を果たした大韓航空機爆破犯からの告発の手紙。左派政権(金大中、盧武鉉大統領)の間、テロ自体がでっちあげとのバッシングに苦しんだという。政治におもねる国家権力とマスコミの背後には深く浸透した北の工作があったのでは…

ちいさなちいさな王様

柳田邦夫氏の著作に紹介されていたドイツの絵本。成人として生まれ、年をとるとともに小さくなり子供に戻っていく王様。成人に伴い夢と想像量を捨てていく人間に対する皮肉とユーモアに富む短編。挿絵は美しく印象的。ちいさなちいさな王様作者: アクセルハ…

ボトルネック

東尋坊から異次元へ飛ばされた主人公。そこは実世界の鏡像世界で、自分の代わりに産まれなかったはずの姉が存在していた。二人の出会いから探りあい、互いの世界の差異を探るあたりの導入部が巧み。その差は結局自分が原因で、ボトルネックになっていること…

僕はここにいる

間違えて借りてしまった。中学生の少女と森の妖精の淡い初恋ファンタジー。擬音語が多い表現はやや気になるが結構楽しめた。恥ずかしいのでよくシリーズは確認しましょう。僕はここにいる (講談社X文庫ホワイトハート)作者: 飯田雪子,柿本芳枝出版社/メーカ…

「坂の上の雲」と日本人

最近のブームで文庫が書店に並んだが、図書館で単行本を発見。適宜原作を適宜引用しつつ、巨匠の大作を解する。「文学界」への連載。執筆時はまだ左翼の力が強かった時代、反動小説としてとらえれたことは誰もが忘れている。司馬遼太郎は日露戦争までを「奇…

動的平衡

エッセイ集。分子生物学者の著者が、最新の生物学のトピックを平易に解説する。生物のみならず、自然、環境を含むすべての現象を解くキーワードとして、「動的平衡」をキーワードとする。この分野門外漢である私には知的な刺激にあふれた1冊で週末に一気に…

アンフィニシュト

南西諸島の孤島に建てられた空自の通信基地。僻地のため地域住民との交流を重視し良好な関係を保っていた。そこでおこった小銃消失事件。調査部のコンビが送り込まれる。事件は外敵にさらされても法規制により何もできないことに不満を感じた若手が問題提議…

ボルゲーゼ美術館展

イタリアルネッサンスのコレクションを展示。宗教色の強い題材がほとんどだが、写実的な肉体表現と明るい色彩。ラファエロ、カラヴァッジョというところが代表的な画家。後世に改竄、転用されていたものも多く、修復によってオリジナルが現れた作品も。金曜…

さらばアメリカ

サブプライムから発した金融危機とブッシュの失政により、長期凋落の始まったアメリカ。その経歴からして親米派として長短知り尽くしたで著者が本書を訣別の書との位置づけるが、実際には未練はたっぷり再生のための提言書と言うところだろうか。政治経済は…

「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法

著者が「赤毛のアン」が愛読書であることを告白し、そのあらすじを紹介しつつ、自らの魂の遍歴と照らし合わせる。不遇な生い立ちから想像の世界に遊ぶことの多かった少女が、運命を受け入れることで家族とパートナーを得て大人になるまでを描く不朽の名作。…