2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

夢を売る男

弱小出版者が始めたニュービジネスは詐欺まがいの自費出版。自己顕示欲の強い一般人に出版を持ちかけ、粗利を稼ぎ急速に業容を拡大した。ISBNの取得や国会図書館への保管など、市井のインテリの自尊心をくすぐる巧みなモデル。主役は元一流出版社の編集長だ…

できる大人のモノの言い方大全

社会人としてのTPOに応じた話し方、受け答えをまとめた一冊。極めて常識的な内容で、一般レベルの人間には不要かと思われる。若手向けに書かれたのであろうが、逆に言えばこのような本が必要な人が多いと言うことだろう。同じ内容も繰り返され冗漫ではあ…

日本人はこれから何を買うのか

急速な高齢化と未婚シングル現象により、日本では一人暮らしの世帯数が急増する。2030年には50歳以上の未婚者が860万人になる。前半は圧倒的な数字データによる説明。今後の消費動向としては、全体として老若男女の差が小さくなると予想。孤独を和…

被取締役新入社員

幼い頃からドジでいじめられていた主人公が、一流広告代理店に秘密契約で採用される。社員の不満のはけ口となりモチベーションを高めるのが目的。天性の間抜けさで作戦は成功したかに見えたが、ひょんなことから企画がクライアントに認められ、売れっ子にな…

経営センスの論理

著者は一橋大教授で専門は競争戦略とイノベーション。本書はオンライン連載がベースになっており、全体の主張は一貫性に欠けるきらいはある。軽重おりまぜた内容だが、語彙が豊富で、企業経営としては参考になる記述も結構あり読んでいて正直面白かった。企…

ジェノサイド

近未来SF大作。アフリカコンゴで突然変異により進化した人類を巡る争い。アメリカの秘密通信にアクセスするほどの知性を示す。怖れをなしたホワイトハウスは抹殺を狙うが、護衛する側に回った傭兵部隊と父の遺志を継ぎ、難病の新薬開発に挑む日本の医学生が…

神去なあなあ日常

高校を卒業したばかりの主人公が、騙されたような形で三重県の山奥で林業の研修に励む。待ち受けていたのは個性豊かな中村組の人びと。時代と隔絶したような山村で次々と不思議な事件が起こるが、自然と一体となった人々はなあなあと動じない。クライマック…

俺のイタリアン、俺のフレンチ

ブックオフの創業者である著者が外食産業に参入。原料比率を高くすることで口コミで集客し、回転数を高めることで収益を得る。従来の業界の常識をくつがえし、驚異の収益と成長を達成。繰り返し語られるのは競争優位。京セラの稲盛氏を師と仰ぐ。キーワード…

下天を謀る

藤堂高虎が主人公。豊臣秀長の家臣であったが、後に家康の参謀格となり、天下のために豊臣家を滅ぼすことになる。策謀家のイメージがあるが、淀君や三成の非道に憤慨し、いったん高野山で出家の道を選ぼうとする。夏の陣では先陣を切り多くの家臣を失う。著…

マネーボール

大リーグ、アスレチックスの辣腕GMビリービーンのチーム経営を描いたノンフィクション。統計を元にした新しい野球理論をバックボーンにドラフトとトレードを繰り返して低コストでチームを強化する。打撃は出塁率と長打力に注目。通常は評価されない選手を…

新幹線をつくる

日本車輌の豊川工場に密着。N700Aの製造工程をレポートする。最新のコンピューター技術と職人技に支えられて、列車が製造されていく様を丹念に描写。考えて見ると自動車と異なり大量生産品ではない。鉄道ファンとしても製造業の技術屋としてもよく知ら…

巨鯨の海

南紀太地を舞台とする連作。時代は幕末から明治初期。独特な捕鯨組織の中での男たちの葛藤と成長を描く。生死を駈けた戦場だけに厳しい階級制と組織の掟が支配する。すぐ外洋には黒潮の流れがあり、そこに入り込むと遭難は免れない。子を守ろうとする母親鯨…

桜ほうさら

長編。小藩の小納戸役が収賄の疑いをかけられ自殺。その次男が父の筆跡をまねた謎の代書屋を探しに江戸へ出る。背後には主家の後継問題のきな臭い疑惑。長屋に住まい貧しいが暖かい人に囲まれながら謎に迫る。章立てで全く別件の謎解きあり、淡い恋ありで飽…

キャパの十字架

戦場写真家であるキャパの残した「崩れ落ちる兵士」の謎を解くノンフィクション。あまりの出来映えに真贋が取りざたされてきた一枚だが、丹念な調査で著者は確信と共にある結論たどり着く。それは死の瞬間を捉えたものではなく、演習中に偶然足をすべらした…

一路

父の急死を受けて、供頭となった主人公「一路」が、主君の旗本一行を導き中山道を江戸へ向かう。参勤交代は行軍であり、遅延は許されぬ厳しいもの。道中さまざまな困難を迎えるが、最大の山場はお家騒動。多彩な登場人物がそれぞれの立場で一行を助ける。主…

牧野邦夫展

土曜日に練馬まで出かけて鑑賞。TVに触発された形になったが、正直あまり注目していなかった画家。レンブラントに憧れ写実を学び、やがて幻想の世界へと画風を融合させていく。観る者を引き込む画力には感服。充実した時間を過ごせた。