2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

四度目の氷河期

母子家庭に育った少年が、自分は遺伝子操作で作られたクロマニョン人の子供だと思いこむところからこの物語は始まる。ありえない設定と思いながら読者は引き込まれることになる。田舎町で見た目の違う子供(ハーフ)はいじめられ孤独に成長するが、ずば抜け…

構図がわかれば絵画がわかる

著者は東京芸大の准教授。専門は美術解剖学。芸術論に加えて解剖学も学ぶ。前半は絵画の構図の入門書。章立てで言えば、平面(点と形)、奥行き(空間と次元)、光(光と色)となる。2次元の絵画にいかに画家が宇宙を展開するかを名画を実例にわかりやすく…

官邸の100時間

副題は「検証福島原発事故」。多数の証言をベースに地震発生からの5日間のドキュメントを伝える。著者は朝日新聞記者。ジャーナリストの使命として歴史資料を残すことに重きを置き、証言に基づき事実のみを積み上げていく。未曾有の災害に官邸も混迷を極め…

アメリカを占拠せよ

アメリカの草の根運動「Occupy」を指導する。拡がる一方の格差社会に対して声をあげようと主張。わすか0.1%の層が富の大半を支配する構造への反発は大きい。繰り返し起業の法人格の問題に言及する。無政府主義との批判には、民主主義の当然の権利と正面から…

代表的日本人

明治期に英文で書かれた一冊。クリスチャンの著者が西洋社会に向けて、日本人の美徳を紹介する。キリスト教的価値観に合致する代表者として、革命家=西郷隆盛、封建領主=上杉鷹山、農民聖者=二宮尊徳、思想家=中江藤樹 宗教家=日蓮。知っているようで知…

希望の木

陸前高田の「奇跡の一本松」。七万本の松原が津波で壊滅する中で、たった一本生き残り復興の象徴となる。NHKラジオ深夜便で発表された詩文に写真をつけての刊行。松を擬人化し家族や仲間が娘を守ろうとした下りは感動を呼ぶ。後書きにあるように作者の新…

日本海軍はなぜ過ったか

戦後行われた海軍将官による反省会の膨大な記録をひもとく。NHK番組での鼎談をベースにする。海軍は縦割りの組織で、国民の幸福よりも組織の成長を優先させたことは歴史の教訓。残念ながら戦後も生かせてはいない。3人の著者は立場は微妙に違うが、反省…

邪馬台

明治期に権力から抹消された山陰の阿仁村。偶然発見されて村の異聞の暗号を民俗学者が解読する。結論を言えば出雲説でたたら製鉄をベースに発展した邪馬台国が大和朝廷に征服され、大国主神話に置き換えられて、出雲大社に封印されたとする。後半は南朝の再…

オープンセサミ

短編集。主人公の年代は異なるが、それぞれの男女や家族の情景を軽妙なタッチで語る。作者の技量は相当なもの。それぞれにきわどい題材を取り上げているが、結末はわりと穏やかで読後感は悪くない。残念ながら全体に印象が薄い感じは否めない。オープン・セ…

八月十五日の神話

メディア論から日本の終戦を検証する。日本では常識となっている終戦記念日だが、国際的にはミズーリ艦上での降伏文書調印が正式な停戦。「敗戦」を「終戦」に読み替えたかった意図が働く。独立を達成した中国、韓国の事情にも配慮した形。良く聞き取れなか…

生きるぼくら

高校時代のひどいイジメにより引きこもりとなった主人公「人生」。母親に家出されやむなく訪ねた蓼科の祖母は痴呆症であった。義理の妹である少女は対人恐怖症であるが、人生と共同で介護と米作りに挑む。祖母の米作りは全くの自然農法で人出がかかり収量は…

ハーバード白熱日本史教室

著者は理系出身ながら、アジア研究で博士号を取り、現在ハーバードで日本史を教える人気レクチャラー。本書はその講義内容の抜粋と自らのキャリアで構成される。サムライだけの旧来の日本史学に疑問を持ち、北の政所に代表されるLady Samurai に焦点をあてる…

図解大阪維新とは何か

3人のブレーンが橋元氏の目指す大構想を解説。中央集権の官僚体制が現在日本の閉塞原因とし、道州制への移行を提案する。政局ではなく、まさに維新。リンゴの奪い合いではなく土壌から変えるとの比喩。理論には賛同できる。破壊的な改革が必要な社会情勢と…

ツナグ

使者と書いて「ツナグ」と読ませる。一見普通の高校生が死者と生者の間を仲介する。厳格なルールがありどちらも一度きりの機会。メルヘンチックな連作かと思いきや、必ずしもハッピーエンドとならないケースがあり、さらにテーマは次第に重くなり使者自身が…

ラクビーガールズ

オリンピックを目指す女子代表チームの主力鈴木彩香選手に焦点をあける。ラクビー好きの消防士が始めたボランティアのタグラクビー出身で優れた才能を開花させた。チームでは司令塔SOとして、苦しみながらもゲームメークを学びつつある。ラクビーにかける…