2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

さまよう刃

一人娘を暴行の上殺された父親が、不良グループに復讐する。暗いテーマに最初たじろいだが、著者の筆力に引き込まれる。背景には更正を主眼とし、刑罰の甘い少年法の問題がある。タイトルの「さまよう」は法と社会正義の狭間で戸惑う現場の刑事達の立ち位置…

浅草キッド

これは師匠である深見千三郎へのレクイエムである。古き良き浅草芸人のスピリットを伝え、ビートたけしの芸の基礎を育てた。大学中退からストリップ劇場での修業時代、漫才師としての独立までが描かれる。ユーモアとペーソス。一流の書き手である。浅草界隈…

果てしなき渇き

暴力事件により退職した刑事が、行先不明になった娘を捜索する。その課程で忌まわしい過去が明らかになっていく。ある意味よくあるストーリーだてだが、アウトローならではの暴力的な捜査が続く。別立てていじめの対象になった少年の独白が構成され、やがて…

世界を知る力

冒頭日本人の歴史感はいかにアメリカ偏重になっているかを、ロシアとの関係を軸に説く。独自の情報ネットワークとシンクタンクの設立が日本のために急務。若者は読書とフィールドワークの両立を低減する。著者の著作は実は初めてだが、論理的で説得力に富む…

格安エアラインで世界一周

貧乏旅行の達人である作者が、格安エアラインを乗り継ぎ西回りに世界を一周する。同行はカメラマンとフリーターの若者。枝葉末節の情報が結構楽しめる。アジアとヨーロッパで定着度が異なるが、これはLCC歴史のなせるわざか。全体の雰囲気としてかっての貧乏…

ペンギンの台所

ブログからの転載エッセイ。「食堂カタツムリ」が出版されブレークするめまぐるしく変化する日々のあれこれが記される。底辺に流れるのは同居人であるペンギン氏との生活。作者らしく食にはこだわっているようだ。あまり印象に残らない繋ぎの1冊。ペンギン…

加賀屋のこころ

日本のNo.1旅館にランクされる加賀屋の経営哲学に迫る。実は第2作で、2007の能登半島地震で被害を受けた当日の対応とそこからの復帰への道筋が焦点となる。接客掛よるきめ細やかなサービスを最大の商品とし、従業員を経営原資とする近代的な家族経営。…

空の彼方

中世ファンタジー。生まれつき病弱で外に出れない防具職人の娘が経営する店が舞台。防具を購入した客たちが生還し、彼女に聞かせる物語が、唯一の外の世界である。傭兵から軍人まで多くの客が彼女の人柄に魅せられ常連となる。初めて防具を送った幼馴染の初…

死亡フラグがたちました

失業寸前のフリーライターが、都市伝説である殺し屋「死神」の謎に迫る。犯人と動機の特定は中盤で明かされ、後半はむしろ荒唐無稽なアクションものの様相を示す。ヤクザから女優まで多彩な登場人物を書き分け、重層のプロットをこなしているのは若さの勢い…

経済危機のルーツ

世界経済危機のルーツを70年代までさかのぼり俯瞰する。金融工学の第一人者だけあって、金融悪者論には反し、長期的な視野に立てば、日本は脱工業化に乗り遅れ構造的な陥穽に陥っているとする。根の深い問題。冷徹な第3者的な分析には共感。 日本はオイル…

格闘するものに○

著者のデビュー作。編集者として出版社に就職を希望する女子大生の独白形式。私小説に近い。厳しい現実にシニカルに立ち向かう。政治家である父の後継を巡るお家騒動。恋人であった老書道家との別離を借景に一夏が描かれる。早稲田の文学部の友人達との知的…

走れT高バスケット部

名門私立バスケ部でいじめにあった主人公が、都立の弱小校へ転校し愉快な仲間達とバスケ部を強くする青春モノ。中高生向けのハッピィストーリーだが後半の試合のシーンでは思わず引き込まれる。丁寧に書き分けてきたメンバー達の意外な活躍が楽しい。走れ!T…

社長溝畑宏の天国と地獄

型破りな官僚が大分の地でプロサッカーチームを立ち上げ、散々な苦労の末にJ1まで昇格させるが、チームは倒産。石もて追われる身となった。天性の人たらし営業マンは次々と一代で財をなした創業者をスポンサーとして招き入れる。まさに波瀾万丈の物語。作…

投資ミサイル

斜陽企業の女性管理職に銀行から派遣された「ロボット」取締役が投資を指南するというストーリー。別会社で新規ビジネスで成功するまでのサクセスストーリー。企業としての戦略立案から個人の財テクまで基本を丹念に説明する。繰り返されるのはリスクとリタ…

巨頭対談

天才たけしと各界のトップとの対談集。小泉首相、検事総長、倒幕議長から金田、青木、北の湖とスポーツ界の巨人まで。本当のトップあるいは天才でないと分かり合えない感覚や孤独は共通。たけしはやはり話術の達人で、垣根を越えてよく相手の本音を引き出し…