2013-01-01から1年間の記事一覧

狼の牙を折れ

昭和49年の三菱重工爆破事件。その犯人を追いつめ逮捕にこぎ着けた公安警察の執念を描く。日頃決して明らかにされない地道な捜査手法が時代を超えて明らかにされる。尾行や張り込みの緊迫した現実。犯人たちは無政府主義者でありどちらかと言えば恵まれた家…

マネージャーの仕事はたったひとつ

表題通りの内容。如何に部下と組織に情報を配るかが重要。情報には本人の気持ちも含まれるとする。慶應のMBAクラスでの講義録。ミドルクラス向けの内容なので、常識の範囲ではあるが、目新しい着眼点もいくつかある。自分に振り返って出来ているかの自省は常…

ダビンチコード

歴史ミステリー。キリスト教の根源に迫る謎に挑むジェットコースター小説。キリストは人間であり、聖杯とはその妻であったマグダラのマリアを象徴するとする新説。彼女の残した福音書が見つかれば聖書の世界が吹き飛ぶインパクトを持つ。謎を追う度はルーブ…

55歳からの「一生モノ」入門

朝日新聞の連載。題名通り定年後の残りの人生を有意義に過ごすための生き甲斐、趣味を紹介。網羅的で掘り下げは浅いがいずれも魅力的に映る。55歳からというのは定年前から準備、助走をしないさという意味か。興味をひいた順に言えば、弓道、乗馬、天体観…

孤鷹の天

奈良時代の最高学府である大学寮が舞台。多くの有為の若者が儒学を学ぶ。主人公は遣唐使を目指し、友人、先輩と勉学に励むが、奴婢にもひょんな縁で学問を教える仲となる。恵美押勝の乱と道鏡の台頭により、王朝は乱れ、学寮は閉鎖。多くの学生が命を落とす…

世界と闘う読書

対談。古今の名著より読むべき書物を挙げていく構成。予想をしていたが二人の読書量には圧倒される。歯に衣を着せぬ物言いも共通。議論の噛み合わぬ部分も見受けられる。巻末のリストは宣伝臭がして不要だろう。 空中庭園 角田光代 山之口獏 超訳小説日米戦…

ふしぎなキリスト教

社会学者2人が対談形式で、キリスト教の謎に迫る。現代西洋文明の根底にあるのはやはりキリスト教の世界観であるというのが基本認識。最大の謎であるキリストについては実在したとするが、神の子であることについては疑問形。異能の人間であったが、伝説を…

日本の論点

70歳になった著者が日本を憂う。内容としてはこれまでに数々の著書で繰り返してきた主張の焼き直しであるが、説得力には富む。自らの選挙での敗戦、後押しする維新の会の失速と逆風の中でもあきらめない姿は巻末の三浦雄一郎氏との対談が象徴する。道州制…

なぜ東京五輪招致は成功したのか。

書名通りのルポ。余り報道されていない生々しい状況も克明に記録。2016年は北京開催から間が無く勝ち目のない戦いで本命は2020年だったとする。最大の勝因は政府、皇室、マスコミを巻き込み国民の支持率を高めたこと。IOC委員へのどぶいた選挙。IOCは…

潜航せよ

軍事ミステリー。自衛隊のレーダー監視隊の一尉が拉致され、偽者が送り込まれる。同時に中国海軍の原潜内で爆発テロが発生。中国でクーデターを企む一派の仕業。一尉の部下の女性が解決に活躍する。エンタメとして楽しめるレベルだが、どうやら前作があるら…

塔とは何か

人類にとって塔とは何かを問う。バビルの塔から古代出雲神殿。さらに東京スカイツリーまでひもとく。塔とは歴史的に見ても、地と天(神)をつなぐ象徴としての構造物であり、実用的な建築を超えて崇高な言葉で語られた存在である。現代日本技術の粋を結集し…

不本意な敗戦

残念ながら破産に追い込まれたエルピーダ。合弁での創設からマイクロンへの売却まで社長として陣頭指揮を取った著者が敗戦を語る。次代を見据え、モバイルDRAMの開発と規模を追った積極投資で成功したかに見えたが、メインバンクを持たずに金融支援を得られ…

着ればわかる

連載の軽妙なエッセイ。女性ながら制服フェチの著者がセーラー服から十二単まで実際に着て、当人になりきる。衣装が持つ意味合いと機能を実感。女性としては意外とエロチックな発言もある。軽いノリながら含蓄も抑えるあたりは流石。着ればわかる!作者: 酒井…

十一面観音巡礼

聖林寺から始まり、渡岸寺まで、日本各地の十一面観音を訪ねるエッセイ。美術と歴史に造詣の深い著者の叙述は単なる美文ではなく、読む側に無数の人々の純粋な信仰や想いを伝え奥深い。繰り返されるのは水の流れと白山信仰との結びつき。本地垂迹説では天照…

面白くて眠れなくなる化学

身近な話題から若者の化学への興味を増そうとする1冊。著者は長年理科教育の現場にあり、その体験を活かして実験、実例を多く交えた上で軽めの仕上がりになっている。あまり目新しさはない。ジャンルとしては食品関係が多い。できればより化学式や合成の話…

ゴルフシングルになれる人、アベレージで終わる人

シングルを目指す著者が、共著のプロと二人三脚でシニア選手権を目指す。レベルが違うので参考になる部分はあまりないが、ゴルフが如何にメンタルなスポーツであるかはよくわかる。「構えは絶対、心はアバウト」「お守りショットを心に決める」「苦手ホール…

獅子の城塞

戦国時代、穴太衆の石工頭の次男が信長の命で、遣欧使節とともに欧州へ渡る。目的は西洋式城郭の建築を学び日本へ持ち帰ること。苦労して海を渡り現場に溶け込み技術を身につける。よく思わない者もいて各地を転々とするが、その技術は高く評価され次々と仕…

天涯の楽土

豪族たちの争いの絶えない古代九州が舞台。それぞれの部族の命運を背負うことになった少年少女の活躍を描くRPG風ファンタジー小説。あまりない設定と驚かされるプロットで、ぐいぐい物語に引き込まれるが、後半は少し息切れした感じは否めない。次回作に期待…

待ってる

江戸の人情話。料亭「橘屋」を舞台に貧しい人々の生活を描く。美人で厳しくも気っ風のいい仲居頭お加代に主人公の少女が育てられる。他の訳ありの勤め人もさまざまな事情をお加代に救われる。庶民には厳しい時代だが助け合いと思いやりの世界は暖かい。背中…

なぜ阪神はなぜ字回復したのか。

2013年の快進撃を解説。藤浪効果による投手力の整備と、西岡効果による得点力のアップが功をそうした。シーズン途中の著作だが、失速は予測。根本的な問題は生え抜きの主力が育っていないこと。オリックスで苦労したようで愚痴も多い。次期監督には矢野…

光秀の定理

不遇の光秀を助けた剣豪と謎の僧。市井の賭博で日銭を稼ぐが、その裏には確率論と心理学を応用した見事な原理が存在していた。その応用で六角攻めで光秀に大巧をもたらす。本能寺の叛旗については、信長も光秀の才能を認め高く評価していたが、信長の革新性…

一生モノの時間術

人気の鎌田教授が時間の有効活用術を開示する。内容は極めて平凡で当たり前の話が多い。他の著書からの引用も多く、正に本文中で示されたようにフォルダーにため込んでおいた断片から一冊仕上げたというイメージが拭えない。簡単には読めたが期待はずれの一…

駅物語

現業駅員として採用されたヒロイン。弟の死に責任を感じ、東京駅で自身が倒れた時に助けてくれた5人の乗客を捜す。同期や先輩もそれぞれの事情を抱えながら厳しい勤務をこなす。毎日百万人の乗客をこなしながら、定時発車を守る巨大システムは個人の努力に…

私の教え子ベストナイン

現役から監督時代を含めてベストナインを選定する。ヤクルト、南海と自ら指揮したチームから選んでいる。サプライズは投手の伊藤智仁くらい。タイトルに惹かれて手に取ったが、捕手欄には自らの選手経験に長く割き、選手についても自身の指導方法にふれるな…

鉄で海はよみがえる

著者の本業は気仙沼のカキ養殖。豊穣な海の環境を守るため、里山の植林を長年推進する。本書はそのメカニズムを踏み込んだ形で紹介。落葉中のフルボ酸に含まれる鉄が、キレート効果で植物プランクトンに取り込まれ、食物連鎖の出発点となる。河口近くの藻類…

会社の哲学

学問としての哲学から現代の会社を解明したいという著者長年の思いがまとめられた一冊。それこそギリシャ哲学から古今の名著をひもとき法人という実体のない怪物にせまる。テーマとして会社、経営者、国家が取り上げられる。繰り返されるのは株式会社に特有…

最初によむ相続の本

50歳の我々が対象。相続に関する税務の基本知識。平易にまとめられており、一日で通読したが節税対策としては今具体的に出来ることはなさそうだ。少なくとも財産の現況について整理してもらうことが必要。一度実家と相談しよう。 50歳になるあなたが親と相…

老朽マンションの奇跡

吉祥寺の老朽マンションを500万円で購入、200万円でロンドン式フラットに改造した著者の実践記。何が出てくるかわからないリフォームでは信頼できる業者の選定が最重要。作者の奇跡的な成功事例でもかなりの労力を割き、かつ種々のトラブルに見舞われ…

競争力

三木谷親子による対談。父は国際経済学者で米国通。三木谷社長の産業力強化構想に父が理論的なバックアップを与える格好。改革案は徹底的なIT化と国際化で日本の競争力プラットフォームを強化すること。アベノミクスには評価を与える。KPIとして具体的な数値…

みんなの経営学

今ひとつじったいがつかみずらい経営学のエッセンスを平易に解説。代表的な理論を紹介する。モチベーション、リーダーシップ、組織、戦略と日頃の実務でなにかと議論になる項目に焦点を当ててくれるのは有り難い。SWOT、PPM、3Cなどなじみ深い分析法も紹介さ…