2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ルーズヴェルトゲーム

不況に苦しむ電子材料メーカー。創業者の肝いりで作られたノンプロチームだが存続の危機に見舞われる。チームの再建と買収工作にさらされた企業の生き残りが同時進行で描かれる。結末は予定調和のハッピーエンドだが、誰もが愛してやまない自社のチームとグ…

女流阿房列車

表題の通り内田百聞と宮脇俊三へのオマージュ。小説新潮の鉄道特集へ掲載されたシリーズもの。女子乗り鉄である著者が過酷な企画に挑戦する。東京地下鉄を一日で完乗したり、こだまを乗り継いで博多までと、マニア企画の中で女性らしい別の視点を提供する。…

大人の流儀

エッセイ集。あまり形式張らず著書の生き様や矜持を語る。ギャンブルや酒にまつわる逸話が多いが、日本人が失いつつある人付き合いの常識すなわち礼節も示される。悪ぶる態度と荒ぶる文体は少しも憎めず、男として格好いい生き方である。巻末に亡妻である夏…

いかにして問題をとくか実践活用編

数学教育の重鎮である著者が、ボリアの名著の精神を平易に解説。高等数学を使わずわかりやすい例題で数学的な論理思考を展開する。基本となる問題の理解、計画立案、実行、ふり返りはまさにPDCAサイクル。技術立国日本にとっていかに数学教育が重要であるか…

仕事ができる社員できない社員

若手社員にいかに必要とされる人材になるかを示す。繰り返されるのがデットラインの設定による時間管理。緊急度、重要度に加えて徹底度のファクターを入れて組織改革を図る。管理者としてはいかに権限委譲を進めるか。上司ではなく仕事が部下を育てる。内容…

恋する空港

あぽやん2の副題が示す通りの続編。旅行代理店の成田支店が舞台。主人公は一段成長し、部下を教育する立場に。親会社=日航のリストラのため支店自体が閉鎖の方向にあるが、いかに次代に残せる仕事をするかが主題。どたばたの中でしっかりもののセンダーと…

グッゲンハイム美術館

仕事の明けた午後は地下鉄でグッゲンハイム美術館へ。結構な人出。リニューアルなったようで自慢の回廊で抽象画を堪能。別室の印象派のコレクションはさすがのレベル。機体のカディンスキーは前回も観た内容でもうひとつの印象。2日目の時差のためかすぐに…

絶頂美術館

人気シリーズの美術解説書。今回はエロスに焦点をあてる。キリスト教の教義が厳しい時代から画家たちは、神話に名を借りてヌードを描いて来た。日常の裸体を描いたマネが非難されたのは肯ける。印象派の敵されているサロン画家、新古典主義を評価する。全体…

セカイ系とは何か

「エヴァ」後のサブカルチャー批評。いわゆるオタク文化は「エヴァ」を境に変質。難解で批判の多いエヴァの後半部分を若者の自意識を探求した文学的な価値として再評価。その後セカイとカタカナで表する自己と世界との独自の関係を構築した若者カルチャー。…

受け月

短編集。主題は野球と家族。いずれも一線を退いた男たちが哀愁を漂わせながら、一心に白球を追いかけていたころに想いをはせる。それがまた現実社会での困難に立ち向かう勇気を与える。支える女たちや家族も暖かい。無頼派で名をなす著者だが、本書では心温…

ロズウェルなんか知らない

スキー場に撤退され青色吐息の過疎の村が、観光客誘致のためトンデモ手法で「四次元魔境」として村おこしをはかる。首謀者は東京から流れてきたクリエーターと実は中年の青年団の幹部。動かない役場や頑迷な老人たちの反対を受けながら、一時は成功を見るが…

理科系の作文技術

書名そのままではあるが、若手の研究者への論文作法である。以下に論理的にかつ正確に自らの研究内容を伝えるか、そのすべてが網羅されている。一般に日本人の文書は受け身を多用することで曖昧さが多く、修飾語を多用することで逆茂木構造になると手厳しい…

あやしうらめしあなかなし

怪談集。7編を収録し巻末にはメーキングも。著者の実家は山岳神社の神主とのことで、実際に法力のあった先祖も戦前までは存在したとのこと。各編とも戦前、戦後の題材が中心だが、戦争により引き裂かれた家族の哀しみが主題になっている。従軍医師と看護婦…

疾走

舞台は岡山、児島湾の干拓地。浜と沖が対立する地域に育った少年。地上げの嵐が吹く中、教会に集う不幸な子ら。少年の兄は放火魔となり、父は蒸発、母はギャンブルに狂う。唯一の救いであった二人の女性を頼り家出をするが、本人も殺人を犯すことに。最後ま…