旅行

清張鉄道1万3500キロ

松本清張の全作品を精査。登場人物が乗った鉄道を記録し、机上の白地図で乗りつぶしを楽しむ。自らに課した判定ルールはかなり厳しい。戦後すぐ国鉄がまだ大動脈だった時代から、新幹線の開通まで、旅情あふれる清張の文章が引用される。一方で作品の粗筋も…

旅する練習

小説家である著者とサッカー少女の姪が、我孫子から鹿島まで利根川沿いを徒歩で下る。著者が風景を描く間に、姪はリフティングの練習。快活な彼女が旅を朗らかなものにする。途中知り合った女性との出会いと別れが、少女の心の成長を導く。ところがラストは…

バスクル新宿

新宿バスターミナルを発着する長距離バスを舞台にする連作集。各編軽いミステリー仕立てで、思わず引き込まれる早い展開。結局はみな良い人たちで、ハッピーエンドのメルヘンタッチ。エンタメとしては楽しめた。巨大バスターミナル自体への興味が少し湧いた…

花嫁を探しに、世界一周の旅に出た 

著者はTV番組制作者。離婚を期にバックパッカーとして世界放浪の旅に出る。2部構成になっており、前半はアジア各地で知り合った女性との恋愛模様をwebに連載。後半は旅にはまる自らを忠実に描く。アフリカを縦断し、危険度の高いソマリアまで。結局4年弱の長…

ロバのスーコと旅をする

イラン、トルコ、モロッコとロバを連れての徒歩旅行。お国柄は様々だが、イスラム圏は基本的に旅人には優しい。宿や食事を提供されることも。一方で国家の監視は厳しく、リレー的に見張られている。良からぬ奴らに狙われ、トラブルに会うことも多い、ロバは…

東京ひがし案内

東京の東地区、東京駅から王子、町屋あたりを散策する。下町情緒あふれる一帯。作者の好みは歴史的建築に旨いもの屋。文学史も噛合わせる。秀逸な地図とイラストも掲載。2010年の著書であり、それからコロナもあり変わってしまった部分も多いであろう。馴染…

ナポレオン街道

稀代の英雄の足跡を訪ねる紀行文。生誕の地コルシカ島からパリ、イタリア、エジプトと巡る。行く先々で無頼派らしくギャンブルと酒に興じる。それも旅情を掻き立てて良い。ナポレオンにまつわる書物は30万冊を超えるという。軍事的才能は言うに及ばず非常に…

旅がグンと楽になる7つの極意

最新の海外旅テクニック。ネットやスマホは積極的に利用。判断基準は楽になるかどうか。旅の本質には影響を与えない。伝説のバックパッカーもシニア層となり、スタイルは時代と自らの年齢に合わせているとのこと。文章は変わらず巧みで、こちらの旅心をくす…

海の見える無人駅

最初に定義は、駅のホームから海が望め、かつ無人駅であること。当然地方のローカル線が主となり、廃線、廃駅の危機が迫るケースが多い。駅からの眺望や設備だけでは、ネタが足らず、周辺を巡ることになる。得意とするのは無人島の探訪。さらに文学や戦跡、…

失踪願望

コロナ下の日記と闘病記等の短編で構成。冒険作家として名を馳せた著者も80歳前。わりと初期に罹患し生死の境をさまよう。ネットワークは多彩で種々の遊びと酒の日々。終活は常に意識している。日頃の生活の中で夫人との固い愛情が微笑ましい。文章はキレ…

流人道中記

不義密通の罪で、松前藩預かりとなった旗本とそれを護送する下級ご家人の与力の道中記。江戸から三厩まで。罪人でありながらさばけた旗本と生真面目な与力のやりとりが愉しい。予想通り道中でさまざまな事件に巻き込まれながら、人情味あふれた解決を産んで…

やっぱり食べに行こう

食に関するエッセイ。日本、世界各地を仕事で巡り、その土地土地に美味を発見。自らの思い出と共鳴させながら綴る。高級店は数少なくどちらかと言えば庶民感覚。取材旅行でパリ、スペインのネタが多い。毎日新聞日曜版への連載。軽妙な語り口はさすが。 やっ…

天路の旅人

大戦末期の中国大陸。密偵としてモンゴル、チベットに赴いた若者。ラマ僧に扮し、現地に溶け込みながら長い旅路の末にチベットにたどり着く。終戦後もインドやネパールと修行の旅を続ける。社会の最下層に身をやつしながら、語学力と真面目な働きぶりはどこ…

感動の温泉宿100

女性のための温泉宿ガイド。各ジャンルでの有名どころ100軒を紹介。泉質、グルメがメインのネタ。知っているのが約半分。宿泊実績は2軒。これだけまとめられると特徴が判然とせず、焦点が合わない。それでもいくつかは行ってみたいところ。 感動の温泉宿…

ANA苦闘の1000日

コロナ禍の航空業界。ANAは旅客数の激減により、2期連続の赤字に陥る。考えうる対策は全て実行するが、拡大路線の反動もあり、自己資本比率等財務指標はかなり、悪化する結果となった。本書はトップから現場までを取材し報告する経済ドキュメント。一番…

鉄路に咲く

鉄道、国鉄職員による文学。千葉を舞台に様々な職場を短編で描く。強調されるのは運行に関する責任感の強さ。それぞれの立場で対立するのはやむを得ない。鉄道ファンとしては理解しやすい。著者は長年国鉄で勤務した叩き上げ。「国鉄文学」なる存在は初めて…

東京のぼる坂くだる坂

幼い時に自分と母を残して家を出た父。転居を繰り返し名のある坂に住むというこだわりの変人。中年を迎えた主人公がその坂を訪ね、父との関係と隠された家族の謎を探る構成。一応家族関係が主題だが、むしろ東京の坂道のガイドブック的な要素が強い。そこに…

円空を旅する

売れっ子漫画家である著者が、円空仏を訪ねる。生誕地岐阜を起点に、東北、北海道、三重志摩、愛知と巡り、終焉の地岐阜に戻る。円空の作順とも合致し、作風の変化を追う旅でもある。徹底したデフォルメと簡易化、それでいて人の心に寄りそう諸仏は、心温ま…

飛び立つ季節

国内旅行エッセイ。「つばくろ」シリーズのこれが第2段。コロナの制限がある中、国内の各地を訪ねる。旅先はマイナーな場所が多い。16歳で著者初めての一人旅である東北地方を再訪するノスタルジックな部分がテーマとなる。50年を経て大きく変貌してい…

線路つまみ食い散歩

鉄道つたい歩きの第2段。ローカル線に沿ってブラブラ歩く。下調べは無し、現地でもGPSは極力使わず、偶然の出会いを大切にする。ローカルな食堂でのB級グルメにビール。のんびり旅情をかき立てる。鉄道の脇を歩くのは意外と難しい。明らかにされるのは地方…

東京裏返し

東京の北東部に焦点を当て、その歴史的価値を再評価し、将来の展望を探る。東京は家康、明治維新、終戦と3度の占領を経て、中心部が北東部の台地から南西部に移った。今後は時間軸を再考し、トラムと水運の時速10km強のスロー化を提案する。具体案はトラムの…

ヤマザキマリの世界逍遥録

漫画家であり文筆家である著者の旅行エッセイ。国際結婚そして子育てと海外生活の長い合間に、世界各地を訪れる。美術や歴史にも造詣が深く、独特の感覚を披露する。挿絵はお手の物。jAL、ANAの機内誌のエッセイ。軽めの内容だが、旅心をくすぐられる。 ヤ…

アートの島犬島へ

岡山の小島犬島。かっては銅精錬所があり栄えたが、戦後は衰退の一途。福武財団によりアートの島としてよみがえる。精錬所は美術館に、古民家は再建してギャラリーとする。瀬戸内美術蔡ではおおくの観客が集まる。著者は港で商店を経営しながら、島の情報を…

絶景の成り立ちを学ぶ

世界各地の絶景ポイントをビジュアルで紹介。その成り立ちのメカニズムを平易に解説する。いずれもメジャーだが僻地にあり、アクセスは容易ではない。唯一の経験はグランドキャニオン。出来ればフィヨルドは訪ねたいところ。大人の教養シリーズの一冊。 絶景…

美しいものを見に行くツアーひとり参加

40代後半の著者が、海外ツアーに一人参加し、各地を訪問する。オーロラ、クリスマスマーケット、モンサンミッシェル、台湾天燈祭、リオのカーニバル。赤毛のアンと女性好みの目的地。個人では少し難易度の高いところ。効率はいいが時間等に制限が多い。軽…

野口聡一の全仕事術

3度目の宇宙飛行かつ国際ステーションでの長期滞在を終えた著者が、その思いを綴る。スペースシャトル、ソユーズ、クルードラゴンと国籍も所属も異なる媒体での飛行。それだけ国際的に信頼を勝ち得ていることの査証。能力はもちろんだが究極は人間的な魅力…

スーツの選んだ鉄道百景

鉄道ユーチューバーである著者の、口述、映像をベースに編集部が文書化。北から南まで日本全国の鉄道百景を選定。全体に東側にに集中しているように思える。乗り鉄としては基本的な有名どころは網羅。知らないところは多い。旅心をくすぐられる。 新たに選ん…

大相撲と鉄道

著者は現役の行司。部屋に所属し何かと役務が命じられる。長年交通係を担当。大人数での移動を差配統括する。貸し切り団体列車は一部のみ残り、現在は新幹線とバスが主流。一般客に交じって移動する。独特の階級社会だけあって面白いエピソードには事欠かな…

北斗星に乗って

連作集全8編。上野と札幌を結んだ豪華寝台列車を舞台に人間模様を描く。様々な人間ドラマを描く。日常からの離脱を求める、人生の大きな節目を迎える。あえて時間のかかる寝台特急を選んだ人たち。事情も様々であれば部屋のチョイスもそれぞれ。どちらkと言…

四次元温泉日記

一風変わった温泉エッセイ。キーワードは迷路。増築を重ねた古い温泉旅館を探ね、館内を探検する。もともと神経質で風呂ギライだった作者が、次第に温泉にはまり、湯船に身をゆだねることを愉しむ心情がもうひとつの主題。中年男3人組の互いに縛られない旅も…