2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「気づきの」の力

「新潮45]に連載の評論集。テーマは得意とする医療からテロ、環境、教育、地方問題と幅広い。鋭い着眼点と真摯な提言は健在。一連のシリーズの第1作となった「壊れる日本人」と比べると多少論点が拡散した感は否めない。 「人類の星の時間」ツヴァイク 「ル…

直感力

歴史作家のエッセイ。副題は「カリスマの条件」。予想通り信長、秀吉や勝海舟などの言動から、現代に通ずるのリーダー論を展開する。ネタとしてはすでによく知られたものがほとんどであまり目新しいはものはなし。簡潔な要約と文体である。直感力―カリスマの…

風の帰る場所

宮崎駿が渋谷陽一のインタビューを受け、自らの仕事の語る。「ナウシカ」のコミック版が底流にあり、一連のアニメとの中で微妙なバランスを取っていたという下りはうなずける。自分の体調の悪さもあるが、対談を編集無く全文掲載されているだけに、やや読み…

ワイルドソウル

戦後南米への移民政策はまさに棄民であった。未開の土地へ放り出された1世たちは、まさに野蛮人なみの生活を強いられ、次々命を落としていく。数奇な運命の上でなんとか生き残った2世が、日本政府に対して壮大な復讐を計画する。外務省ビルへの乱射と元凶…

ポスト資本主義社会

1993年の著作であるが、その近未来予測の正確さには改めて舌を巻く。近代資本主義が成熟し、我々は時代の大きな変革点に臨んでいるとする。来るべき社会は「知価社会」。本文に対する自らの注釈がアクセントになり読みやすい構成になっている。引用多数。 テ…

天璋院と和宮

幕末の徳川将軍家に薩摩と皇室から嫁いだ女性二人。下世話に言えば嫁姑の関係になる。いずれも聡明で優しい女性であるが、政略結婚の思惑と取り巻く忠義の女中たちにより関係はしっくりこない。最後の局面で二人の尽力により徳川家は取りつぶしから救われた…

先端巨大科学で探る地球

4人の共著。先端科学をかいま見ようと挑んだが内容は予想以上に高度。入門書的な書かれているのだろうが専門用語も多く、門外漢には敷居が高い。掘削探査はマントルに到達しようとしている。日本主導の技術の成果に期待。 掘削科学 探査船「地球」 海底観測…

プレカリアート

今や社会問題化しているネットカフェ問題について、フリーターサイドからの告発の書。不況対策として企業が行った雇用の弾力化は、若者の1/3が正規の職につけないという異様な状況を産み出している。これは格差社会を超え貧困問題であるとする。グッドウィル…

佐伯祐三展

県立美術館で開催中の「佐伯祐三展」を鑑賞。地方美術館の開催の割には優品が集められていた。年代順に30年の短い生涯を追う構成。パリ、風景画、文字というイメージがある画家であり、その通りのの風景が圧倒的に多い中で、人物、静物を描いたものに迫力あ…

フランスが夢見た日本

副題は「陶器に写した北斎、広重」。日本で刊行された花鳥風物をそのまま洋食器に絵付けされた作品集。オルセーの収蔵品から。こちらは表慶館で。実は密かに期待していったのだが、やや外れた印象。特にルソー工房のものは銅版転写による量産品のイメージ。…

対決巨匠たちの日本美術

日本美術のさまざまな分野毎に巨匠をあえて対決させて、その作風の違いを際だたせるという企画だが、その出品作のすばらしさに眼を奪われる結果となった。あまり期待していなかった夏企画だけに満足度は高い。企画に経緯を表して私的な評価。 運慶>快慶 (精…

夜明けの街で

中年サラリーマンの不倫がテーマ。1人称で描かれるが、平凡な家庭の幸福と魅惑的な女性との恋愛を天秤にかけ悩む姿には思わず共感を呼び起こされ、感情移入してしまう。伏線にある15年前の殺人事件の謎解きは、時効成立に向けて一気にクライマックスを迎…

大阪人の胸のうち。

軽めのエッセイ。ところどころで漫画が挿入される。内容は何ということない大阪人の日常。どうしても大阪弁ネタが中心となる。感覚的にはあくまで一般の大阪人のモノ。テレビに出てくるコテコテの人は周囲にいない。世代的にも近く(作者は1969年生まれ…

TVウワサの眞相

トーク番組の活字版。テーマは政治、風俗、芸能と多岐にわたるが、ベースとしては権力、メディア批判が支配的。これだけよく放映したとはあらためて感心する。活字化による時差は少しあるところは仕方ない。1300円。「三代の系譜」阪谷TVウワサの眞相作者: …

殺し屋シュウ

悪徳警官であった父を殺した過去を持つ殺し屋が主人公。母親が罪をかぶり本人はアメリカで訓練を受け日本では大学講師でありながら裏の仕事を引き受ける。連作の形式を取るが依頼はいつも特殊なもの。ハードボイルドというより殺し、殺される側双方の人間く…

バイオ燃料

休日を利用してお勉強。 ガソリンへの混合方式はエタノール直接(直接混合方式)とETBE方式がある。 日本のガソリン消費量は6000万KL。E3として200万KL必要。 最大可能エタノール供給量は、未利用農地をすべて作付したとして、653万KL。実際には国産100万KL+…

ラスト

連作集。借金で追い詰められた普通の人々が最後の局面で選択した生きるための手段。ヤミ金融からテレクラ、ホームレスまで精密な取材をベースとする臨場感あふれる描写に引き込まれる。ひょっとしたことで転落の危機を迎える危うい現代日本社会。7作それぞ…

少数精鋭の組織論

筆者はフレンチのオーナーシェフ。12年間パリで修行の経験有り。自らの経営方針を説いた組織論だが、人材の育成論が主となる。キーワードは常に並走。文章のプロでないので仕方がないにしても、説得力に欠ける文章。要は意外性がなく中途半端なのだ。久し…

私と犬との10の約束

帰国便で。ほぼ原作通りの内容で、犬好きにはたまらない内容。すこし冗長かも知れない。嫁入り前の田中麗奈は美し。

秀吉の枷

「信長の棺」の続編。枚数はおよそ2倍、上下巻に分かれる大作。本能寺の抜け道を封じ、間接的に信長を謀殺した秀吉の心理と葛藤はその最期まで続く。秀吉は頭脳明晰でかつ教養もあり、努力家であったと好意的な立場。権力を得てからは、豊臣家を守るために…