2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

エコノトーク

対談と連載コラムで構成される。リーマンショック以降のたうつ日本経済と社会に活を入れるべく両者とも積極財政を強く求める。交互に執筆したコラムは論争になっていず、やや物足りないが、出来は小宮氏の方が一枚上。旬をすぎたせいかやや物足りない一冊。 …

日本の国宝、最初はこんな色だった。

著者は古美術のデジタル復元の第一人者。東大寺大仏殿をはじめ日本美術を初期の姿を仮想空間によみがえらせる。史実データと考証をベースにしているが、推測による部分も残るのは事実。IT技術を駆使して得られた世界は見る者を圧倒する。著者の真骨頂は単な…

堕ちた翼

副題はずばりJAL倒産。2009/9の民主党政権誕生から、2010/1の更生法適用までを朝日新聞の取材をベースに重厚なタッチで描く。JALをここまで追い込んだのは、国策会社としての官僚体質。エリート部門が保身に終始し、問題を先送りしてきたつけ。損益的…

パラドックス13

久々の東野作品は、近未来異次元SF。ブラックホールの接近により生じた13秒間の時間の間隙に落ち込んだ11人の運命。警察官の兄弟を中心に必死に生き抜こうとするが、まるで彼らを抹殺しようとするように次々天変地異が襲う。ラストは予定調和を否めな…

影響力

著者は社会心理学者。古今の学術論文より「影響力」についてまとめる。基本はアメとムチからなる賞罰2つの影響力。それから派生する合計10種の影響力につき解説する。一般向けにわかりやすい例で示される。特に社会心理学上の実験の詳細が興味深い。全体…

ふたつの枷

太平洋戦争を題材にした短編集。一貫したテーマは下級兵士と民間人の関係。敗戦により崩壊していく陸軍組織の中で、原住民との関係も微妙となっていき、不幸な事件も数多く起きた。兵士の立場と人間としての良心の葛藤を描いた力作。ふたつの枷作者: 古処誠…

温室デイズ

小中学校でいじめにあった二人の少女。優子は不登校となり、みちるは一人学校に残り戦う。子供達の持ついじめ特有の陰湿、残忍さと集団の力は、個人の力を超越する。卒業間近になってそれぞれ個人の中の小さな勇気と努力が身を結び、ほのかな希望は暗示され…

兵隊たちの陸軍史

陸軍モノが続く。旧軍の組織、日常生活を初年兵と二年兵の生活実態を主に記録する。前半で紹介される現役と予備役のシステムは極めて合理的で、非常時に即応し、一気に戦力を買う銃出来るようになっている。中盤以降は戦史だが、この部分は饒舌。個別の戦闘…

軍旗はためく下に

戦記物。軍法会議をメインにしたのは珍しい。陸軍の法経システムはいかに不条理で上層部の支配のための道具に過ぎなかったことが克明に語られる。特に戦争末期の南方では食料調達に出て、そのまま不明になった兵員が脱走兵扱いされていたとのこと。飢えと疫…

民主党が日本経済を破壊する

自民党政権時代、財政を担当した著者の持論をまとめたもの。危機的な財政を救うには消費税は年金に目的化した上で増税し国民の負担を引き上げるべき。財政の専門家として筋は一本通っている。自分の業績を誇張することもなく政治からしからぬあたりが人徳な…

黙秘

法廷モノ。副題にあるように裁判員裁判をさっそく題材にする。被告の人徳家はストーカーに殺された娘の恨みをはらしたとして殺人罪で訴えられる。肝心なところで黙秘するのは誰かをかばっているように思われが、公にしたくない家族の秘密がやがて暴かれてい…

わが夫坂本竜馬

維新後に聞き取りで書かれた手記を現代語訳。おりょうの視点から見た幕末史。伝えられるとおり気性の激しい一本気な女性像が浮かぶ。記述はかなり狭められた視界からの眺め、当時の彼女の置かれた立場や情報量からはやむをえない。明治後の不幸な半生は意識…

君に続く線路

舞台は戦前の炭鉱鉄道。中年の保線士と深窓の令嬢の淡い恋。親の決めた見合いを断り続ける気の強い令嬢が、鉄道にすべてをささげた一本気な男に徐々に魅かれていく。単純なストーリーだが山場もしっかり用意され、読み応えアリ。デビュー作とは思えない力量…

八月の舟

舞台は北関東。やや不良ぶる高校生の初恋と突然の母親の死。斜に構えた主人公は作者の投影か。若い頃の習作というイメージもあるが、鮮烈ではある。初版は1990年。メールもネットも無い時代でもある。八月の舟 (ハルキ文庫)作者: 樋口有介出版社/メーカ…

実伝直江兼続

対談や過去の著作より文武を備えた希代の武将の実像に迫る。「天地人」ブームのあやかり本。謙信の後継争いでは古風な武人である景勝を助けるが、石田三成との盟約により、家康にに一代決戦を挑む。編集であるため有名なエピソードは読みにくい。やはり本編…

ネット帝国主義と日本の敗北

ネットがもたらす危機を論評。現在はもたらす利益はプラットフォームレイヤーに集中し、コンテンツレイヤーは疲弊している。これはジャーナリズムと文化に危機をもたらす。一方でプラットフォームはほとんどがアメリカ企業が独占。国家戦略にも問題が大きい…

RAILWAYS

映画のノベル化。脚本家が担当。役員就任を目に前にしたエリートだが、無二の親友や家族の繋がりを犠牲にしていたことに気づき、人生を大転換する。49歳にしてバタデンの運転士に。暖かい出雲地方の光の中で、スローだが人間味のある本当の人生が始まる。…