2014-01-01から1年間の記事一覧

肥満

稀代の梟雄安禄山の物語。異民族の出身で商人から身を起こし、その才覚で唐の官位をのし上がる。若い時は人格で、後半はゾロアスター教徒を中心とする財力をバックに、賄賂を使いネットワークを広げる。玄宗皇帝と楊貴妃に気に入られるが、最後は反乱を起こ…

かみつく二人

J-WAVEで放送された二人の対談。才気あふれる二人が毎回会話のバトルで楽しませる。日常的な話題から舞台や映画の話までネタはつきない。十分笑わせてもらったが、ボリュームがあり、意外と読破には力が要った。これが3作目ということのようだが、前作をす…

独走

エッセイ集。女芸人から太田光夫人そしてプロダクション会社社長、ウワバミとしても名をはせる。ユーモアたっぷりの軽めの内容ではあるが、全編を通して夫への信頼と愛情が感じられ好感。同世代と言うこともあり、子供時代の思い出には共感出来る部分も多い…

野球の定石

急逝した高校野球の監督である著者が、選手達に残したメモ。メンタルから始まり、ポジションや状況別にあらゆる戦術が詳細に記される。ある意味内容は常識的なもので、意外性は少ない。著者は早稲田の野球部出身。指導者としての野球人生を歩むが、自殺した…

池田屋乱刃

幕末の池田屋騒動を討ち取られた志士の側から描く異色作。5人の主役の当日の動きとこれまでの活動を平行して描く。あまり一般には知られていない人物像を明らかにする。中でも宮部鼎三と吉田松陰の友情。下級武士であった英才吉田稔麿の苦しみ。そして当日…

自分へのごほうび

エッセイ。NHKを退職しフリーアナになった頃の著書。まずその文章力に驚かされる。本人はカナダ育ちの帰国子女。好奇心旺盛でかつ度胸がありどちらかというと男っぽい。人気アナであった時期に退職したのも自分の可能性を探るため。軽めの話題から人生論…

ライツオン

明治初期のお抱えイギリス人技師。日本各地に灯台を立てる。ここまでは史実に基づく。ハーフの青年が通訳として雇われ、彼の視点から一家と日本人の交流を描く。初め日本人を野蛮人と馬鹿にしていた技師もその技術と文化の高さに瞠目し、やがて互いに尊敬す…

東京ポロロッカ

多摩川をアマゾンのようなポロロッカが襲う。噂は憶測を呼び周辺住民を巻き込んでいく。7編からなる短編連作集。語られるのは下流から上流にかけての家族の物語。それぞれ抱える家庭の事情が良い方向で解決していき、さわやかな読後感を呼ぶ。主題は大切な…

イベリコ豚を買いに

食肉流通には素人の著者が、本物のイベリコ豚の味に魅せられ、スペインから輸入新製品であるスモークハムを開発、販売するまでのルポ。これまでのネットワークを活かし、有名シェフの慣習で本来生ハムになる部位をスモークする。生ハムは塩漬けの乾燥のみで…

漁港の肉子ちゃん

さびれた漁港の焼き肉屋に住み込みで働く母娘。底抜けに明るい太めの母親と思春期の入口に差し掛かった小5の娘。何度も男に騙されながら流れ着いた母親は、天真爛漫というか天然で廻りの人気者になる。娘はクラスの派閥争いや淡い初恋に悩まされながらやが…

家康の子

徳川家康の次男。結城秀康を主人公とした時代小説。豊臣秀吉に人質として預けられ、両雄の一字ずつをその名に持つが、歴史上はあまり知られていない。本作はその生き様にスポットをあて、父に見捨てられた悲しみと、両家の絆として奔走する姿を主題に描く。…

風のマジム

秀作。那覇の派遣社員OLが社内企業コンテストに応募。南大東島でのラム醸造に挑む。社内の思惑や法規制、保守的な島民の反対を押し切ったのは女系家族の支えと、なんと言っても自分が選んだ道への熱い思い。マジムとは沖縄弁で真心。誠意あふれる対応が周…

ジャパンディグニティ

津軽漆が題材。家業の漆は衰退の一途。母親は離婚し家出。弟はおかまのディトレーダー。主人公のヒロインは内気で何をやってもうまくいかない。レジうちのパートを辞めて父につき漆職人を目指す。当然簡単では無いが、オランダの展示会に出したピアノが評判…

ドックテールズ

犬に関する中編が5作。ファンタジーあり、ドラマチックなものありと犬好きを唸らせる一冊。あまり擬人化せず人間からの視点で詳細に犬の姿を描写する。トラウマに陥った訓練士の復活劇を描いた「向い風」が秀作。犬は本当に人間にとって良きパートナーであ…

六三四に挑む

東京スカイツリーの建設を描く技術系ノンフィクション。それぞれの分野の一流企業が総力をあげて未知の世界に挑む。設計から現場施工まで最新技術を取り入れてミリ単位の精度で築き上げた。共通するのは利益を度外視して、社員のモチベーションという目に見…

バーカウンターは人生の勉強机である

架空のバーを舞台とした交友録。編集者として幅広い人脈を誇る著者が、自慢のシングルモルトを振る舞いながらゲストと対談する。軽妙な会話とこだわりのダンディズム。万年筆とシガーが数多く登場する。財産は圧倒的な読書量とじかに接した一流の人物達との…

民宿雪国

新潟の寂れた民宿の主人である老人は、日本を代表する優れた画家。これは作られた偶像で、その実は大量殺人鬼。殺した被害者の肖像を絵にとどめる。職業軍人の妾腹の子として、実父や異母兄に虐げられた経験が壮絶な復讐を産む。一方で韓国人慰安婦への純愛…

四次元時計は狂わない

文藝春秋の巻頭を飾ったエッセイ集。震災直後の暗い世相に活をいれるべく、意図して前向きな筆致としている。特に技術立国に期待感を抱かせる。最たるはレーザー発振による原子レベルでの分析技術。新たな創薬事業につながる。全編を通じて感じられるのは圧…

仕事の手帳

随筆集。本格派ノンフィクション作家である著者が自らの仕事の履歴を振り返る。編集者としてスタートし、その後自らが書く立場に。ノンフィクションの王道でその手法は徹底した取材。星新一の評伝を書くいきさつが興味深い。ラジオでのインタビュー。書評。…

幸せまねき

家族四人と犬猫の平均的な一家。思春期の娘の悩みに加えて、母親の不倫、子供のイジメと重大な危機を迎える。立ち上がったのは犬と猫。知らぬ間にそれぞれのやり方で家族を助ける。特にいじめっこの凶暴な飼い犬に立ち向かった勇気は家族全員を奮い立たせ、…

人はデータでは動かない

著者は女子日本代表のチーフアナリスト。ITを駆使してデータ解析を行うパイオニア。ロンドン五輪での戦いを支え、チームを銅メダルに導いた。徹底したデータ解析も重要だが、いかにそれを選手に伝えるかに腐心する。要らないデータはそぎ落とし、心の琴線に…

タイムスリップ釈迦如来

冗談小説。主人公と教え子が古代インドにタイムスリップし、悟りを開いた直後のブッダと巡り会い、弟子を増やし教団を大きくしていく。ブッダ本人がおかまの設定。老子やソクラテスを論破するあたりになると荒唐無稽を通りこして呆れるしかない。よくぞ最後…

大阪人の格言

タイトル通りの内容。何かにつけて常に笑いを求め、それでいてある意味シャイな市井の大阪人の放った名言集。ディープな世界を明るく紹介。 無理はせなあかん。けど無茶はしたらあかん。 平行線は交わらへんけど、離れへん。 行ったこと無いけど気分はドバイ…

新徴組

著者には珍しい幕末史を題材とした長編。新撰組を京に残し、江戸に戻った浪士組は清河八郎の出身地である庄内藩の預かりとなる。戊辰戦争では会津と連合を組み頑強に新政府に抵抗する。物語は沖田総司の義兄である林太郎とその上司でありプリンス酒井玄蕃を…

星間商事株式会社社史編纂室

中堅商社の社史編纂室。社内でも忘れられたような職場だが、空白の高度成長期に気づき、その闇を暴露する裏社史を同時に発行する。ヒロインが趣味で続けてきた同人誌のノウハウが活かされる。明るいお仕事もの。少し出来過ぎの展開はお約束だろう。星間商事…

天魔ゆく空

室町時代後期。戦国時代を招いた管領細川政元の生涯を描く著者の歴史大作。あらゆるレベルで同族間の権力闘争が行われる時代。少年時代から圧倒的な才気を見せつけ、やがては半将軍と称せられる権力を手にする。その反面自らの出自の悩みを抱え、生涯独身を…

黄土の疾風

の記憶。その子らが日中農業の架け橋になろうと尽力する。自助努力をしない中国農民の姿を赤裸々に描く。買収をもくろむ海外ファンドの暗躍もあるが最後は正義の勝利に終わる。時を超えた純愛がテーマ。急いで読んだが重厚なプロットで結構感動した。黄土の…

好き嫌いと経営

日本を代表する14人の経営者との対談。良し悪しでなく、好き嫌いを経営判断の論点におく。いずれの人もハードワーカーで勉強家である。作者の言葉を借りれば、全力を出し切る能力がある。部下任せにせず、決断は早い。見習いたいところ。 パワーハラスメン…

窓から逃げた100歳の老人

100歳の誕生日に老人ホームを抜け出した主人公。ギャングの大金を盗み追われる立場となるが、行く先々で新たな仲間を引き込み危機を避けていく。平行して語られるこれまでの人生。20世紀の動乱の歴史に顔を出す。訳者の後書きを借りれば「出鱈目小説」…

編集ガール

ヒロインは中堅出版社の経理担当。カリスマ社長の独断で新規発行の雑誌編集長に。頼りは部下となった恋人だが、男女の感性の違いから編集方針で対立する。脇役は他に3人だが、それぞれの役割は予想通り。苦労の末に無事創刊号を発刊。彼との仲も修復し予定…