2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

漂流する日本企業

日本経済の失われた30年の原因とその対処法を説く。2度の金融危機により、銀行に依存できなくなった企業は、内部留保を高め積極投資を抑制した。一方で外圧によりガバナンスが流行りとなり、配当性向を高めた。直近では投資額より配当額が高い異常な状況…

成瀬は天下を取りに行く

滋賀、大津、膳所が舞台の青春小説。ヒロイン成瀬は型破りの天才少女。すべてに才能を発揮するが、周囲の評判は一切気にせず、独自の哲学で邁進する。同じマンションの親友が良いパートナーとなり、漫才コンビを組む。中学生から高校卒業までを描くが、恋愛…

文庫旅館で待つ本は

連作集。小さな旅館が舞台。戦前の蔵書からなる文庫があり、若女将が客の悩みに応じた一冊を推薦する。同じ匂いをかぎ分ける特殊能力のなせる技。全5編の前半は軽めだが、後半にかけて重みを増し、最終編は文庫の成り立ちまで遡る。それぞれの1冊があるが…

キャラクターたちの運命論

大ヒットした少年漫画5編を取り上げ、民俗学的な検証を行う。主人公ではなく脇役に焦点をあてる。いずれも原作を完全には読んでいないので今一つ理解が進まない。逆にマンガ自体がよく構成され、それは伝承文学にも通じていることに感心する。 キャラクター…

一日一文

古今東西の名著を365日分紹介する。範囲は哲学から詩歌まで幅広い。有名どころはほぼ網羅されているが、非常に短い引用なので、逆に主張がわかりにくい。スタンプラリーのお供で読破。 一日一文 英知のことば (岩波文庫) 岩波書店 Amazon

旅する練習

小説家である著者とサッカー少女の姪が、我孫子から鹿島まで利根川沿いを徒歩で下る。著者が風景を描く間に、姪はリフティングの練習。快活な彼女が旅を朗らかなものにする。途中知り合った女性との出会いと別れが、少女の心の成長を導く。ところがラストは…

90歳の人間力

人生訓。短めの文章で人の生き方を簡潔に諭す。全編を通じて、失敗が人を大きくする。恐れずに挑戦することを強調。日本人は目で考える、すなわち外見や名前に惑わされ、本質を見極める力が乏しいとの指摘。既出の著作からの焼き直し。ご本人は2020年に逝去…

バスクル新宿

新宿バスターミナルを発着する長距離バスを舞台にする連作集。各編軽いミステリー仕立てで、思わず引き込まれる早い展開。結局はみな良い人たちで、ハッピーエンドのメルヘンタッチ。エンタメとしては楽しめた。巨大バスターミナル自体への興味が少し湧いた…

人物名鑑古今東西いま関西

古今東西の人物短評。著者の専門から思想史、哲学史にページを割く。タイトルにある関西部分は冒頭の第一章だけ。哲学、古代ローマ史についてはこちらの知らない人物が多く、イメージがついて行かない。教養不足を露呈する結果に。読破は正直しんどかった。…

祖母姫ロンドンへ行く

祖母と孫の豪華なロンドン旅行記。ファーストクラスで飛び、バトラーのつく一流ホテルに滞在するというからかなりの富裕層。上流の貴婦人であった祖母は、老齢もあってマイペースというか我儘。著者は振り回されるが、夜はバットガールになり留学時の旧友に…

車のある風景

愛車遍歴エッセイ。編曲家として名を馳せているが稀代のカーマニアでもある。高校生の時に軽免許を取得。以来何十台もの車を乗りこなす。収入の増加に従い、外車にシフト、中でもマニアックな選択が多い。少し庶民とはかけ離れた世界だが、車あるあるはくす…

羊の目

任侠長編小説。夜鷹の子に生まれ、ヤクザと愛人に育てられた主人公。育ての親である親分に裏切られながらも、終生忠誠を尽くす。全篇をおおう暴力と殺人。出来すぎた人間関係は設計されたプロット。思わず引き込まれるが、少し長かったか。スタンプ収集のお…

缶詰だよ人生は

缶詰博士のエッセイ。自らの生い立ちから、缶詰レシピまで。軽めの文章と素朴なイラスト。軽めの内容だが、常識の範囲内でもう一つ足りない。もう少し缶詰紹介に特化しても良かったのではないか。時代的にはマッチするので懐かしい部分はあった。サバ缶とヤ…

夜明けを待つ

エッセイとルポルタージュ集。生と死、日本語教育、宗教と結構重いテーマを扱ったものが多い。淡々とした記述で、本質、真実にまっしぐらに進む作者の真骨頂。本人は希少がんを患い、余命短いとのこと。好きなノンフィクション作家。惜しまれる。 -ダブルリ…

もしもしアッコちゃん

自伝エッセイ。九州の電電公社一家に生まれ、子供のころは転校を繰り返す。両親とも兄弟が多く。親戚にも恵まれる。宮崎西高校から、金沢美大へ。漫画家への夢はもつもののガツガツはせず、応募第一作が採用される幸運。才能豊かなのだろう。傍らにはつねに…

老いてこそユーモア

ユーモアに関するエッセイ。実例を示しながら、古今東西の笑いを考察する。バックにあるのは圧倒的な教養。ネタの対象範囲は広いが、エスプリに思わずにんまりさせられる。繋ぎの一冊としては十分な内容。 老いてこそユーモア (幻冬舎新書 あ 17-1) 作者:阿…

失敗する自由が超越を生む

量子コンピューターの第一人者である東大の古澤教授。その大胆な生き方を紹介する。研究は趣味で本職はウィンドサーフィンと豪語。学生には研究生活をゲームのように愉しめと導く。人生の転機にはかならず幸運が巡りくるがそれは実力がなせるわざだろう。組…