2012-01-01から1年間の記事一覧

一瞬の風になれ

神奈川の公立高校が舞台。サッカーをあきらめ高校から陸上を始めた主人公。天才スプリンターの親友と切磋琢磨しながら、トップ選手と競うまで成長していく。先輩後輩への想い、淡い恋ありの3年間の青春ストーリーが展開される。話の軸になるのは、400m…

鋼鉄のワルキューレ

第二次大戦ドイツ東部戦線での仮想戦記。プロセイン貴族末裔の伯爵令嬢が、指揮官として新型タイガー戦車で迫り来るソ連軍と対峙する。圧倒的な物量の前に大勢は覆しようもないが、3度に渡り胸の空くような戦術的な勝利を収める。壮烈な戦死の直前に愛する…

サムソン流勝利の法則27

サムソンを世界に冠たる超一流企業に育てたイ-ゴンヒ会長の素顔に迫る。急成長から豪腕のイメージがあるが、実は内向的で引きこもり型の経営者。猛勉強をバックボーンに物事を多角的に分析し、決断は素早い。最大の成功は半導体への投資。企業や国の競争力の…

天使の歩廊

ファンタジー小説。戦前に生きた架空の天才建築家。天使に魅入られた彼が建てた西洋建築は、住人を満足、魅了するだけでなく別世界へ引き込んでいく。施主から見た実際の建築のエピソードと幼少からの生い立ちを絡ませながら物語は進む。よく書けてはいるが…

誘拐

歴史的な日韓条約の調印を目前に控えて、現職総理大臣の孫娘が誘拐される。犯人側と警察側の両面から攻防を描く。北朝鮮の謀略にみせかけて、ほぼ素人の主人公が見事に恨みのある地銀の株価を操作することで目的を達成する。事件後たたき上げの刑事が真相を…

蜩ノ記

豊後の小藩が舞台。派閥争いに巻き込まれた中流武士が10年後の切腹を申しつけられながら、藩史の編纂に勤しむ。お目付役として派遣された若い武士が、その人柄と農民への慈愛に惹かれていく。幼い親友の拷問による死亡に憤慨した10歳の長男が見事に武士…

世界は言葉で出来ている

深夜の人気番組の書籍版。古今の著名人の名言を本歌取りし、オリジナルと比較しようというバラエティ。本好きには面白い企画ではある。あにはからんや本家を超える作品はなかなか出てこないところに凄みを感じる。ゴールデンに進出を果たしたとのこと。一度…

女信長

織田信長は実は女であったという大胆な設定。舅の道三を手始めに勝家、浅井長政と女を武器に籠絡していく。目的は戦国時代に終止符を打ち、新たな時代を拓くこと。曲線的な肉体と直線的な発想を有する女性ならではの革命思考。後半は信長自身が自壊していき…

日御子

古代史における通詞の一族あずみ氏を描く大作。奴国、伊都国、邪馬台国の使節として朝鮮や漢、魏に赴く。洛陽までの長旅が鮮烈に描写される。当時の大陸と日本の文明の差は明らかで、貢ぎ物の最重要品は生口(人間)であった。大陸も日本も戦乱に明け暮れる…

ペンギン夫婦の作り方

映画のノベライズ。温厚な中国人の夫と活発な日本人の妻。互いの特技は料理。夫の帰化申請をめぐるドタバタの中で、国境を越えた男女の愛情を描き、ほんわかとさせる。美しく人情豊かな石垣島には行ってみたくなった。実話がベース?([ひ]3-1)ペンギン夫婦の…

この社会で戦う君に「知の世界地図」をあげよう

東工大での講義録。理系の学生を相手に世界情勢と経済学の基礎を講義する。内容は予想以上に平易。専門に没頭する傾向がある学生たちに広い視野を持って欲しいとの想いがベースにはある。著者が持つ幅広い情報まさに知の世界地図ををわかりやすい口調で語り…

清洲会議

本能寺の変の後、織田家の後継を決定する世にいう清洲会議。秀吉、勝家、長秀をメインにそれぞれの思惑と会議の進捗をモノローグ形式で描く。根回しと柔軟性に長けた秀吉が思惑通りの一方的な勝利を得る。現代語訳でユーモアたっぷりに演出するのは当代きっ…

シャルダン展

三菱美術館に立ち寄る。精緻な静物画で名を知られた画家だが、今回は年代順の展示。静物画でデビューしいったん風俗画にシフトするが最後は静物画に回帰する。やはり晩年の作品群を集めた最後の2室は圧巻。色彩は少し大人しくなるが作風は円熟味を増してい…

ピカソは本当に偉いのか

類い希な才能とカリスマ性で現代美術の王として君臨するピカソの本質に迫る。同時に著者の現代美術史観を論じる。ピカソは周到な交渉術により画商を引き込み、嫉妬をあおることで女性遍歴を重ねた。本書の冒頭に示される問いに対する答えとしては、ピカソは…

エルグレコ展

大阪出張の空き時間で国際美術館へ。時間が無くやや駆け足となったが堪能できた。ほとんどが宗教画だが構図と色彩は革新的。目玉はもちろんトレドの祭壇画「無原罪のお宿り」であるが、それ以外にも名画がわんさか。充実した1時間でした。平日なのに結構混…

無名の虎

歴史物。合戦で負傷し右腕が利かなくなった主人公が奉行として甲斐の暴れ川に挑む。2度に渡る大洪水で屋敷や最愛の子を失いながらも、大胆な発想と長年の努力で難工事を成し遂げる。成功の秘訣は民と心を一つにして彼らの協力が得られたことにある。一見乱…

教科書に載った小説

中高の国語教科書に掲載された短編小説を集めた1冊。何かの書評で読み興味を持った。国語の教師だった編者の父の蔵書を貪り読んだ思い出が一風変わったこの本の構成となった。超短編から中編まで全12作。名のある作家の珠玉の小品が並んだ格好。教科書に…

名画と読むイエスキリストの物語

タイトル通りの内容。名画を題材に「受胎告知」から「磔刑」さらに「復活」まで、神の子キリストの一生を振り返る。意外と知らない事実が次々。ヨハネによる洗礼、荒野での修行、数年間で行われた奇蹟の数々。釈迦と同じく実在したことが後の世の信仰の基礎…

マングローブ

告発ノンフィクション。JR東日本労組に君臨する松崎明。革マル派のカリスマ指導者で戦闘的な動労を率いていたが、コペルニクス的な転換でJRの民営化に賛成。革マル組織の保全を図る。経営陣にも癒着し乗客を人質に会社人事にも容喙する。労組は安全を置き去…

四度目の氷河期

母子家庭に育った少年が、自分は遺伝子操作で作られたクロマニョン人の子供だと思いこむところからこの物語は始まる。ありえない設定と思いながら読者は引き込まれることになる。田舎町で見た目の違う子供(ハーフ)はいじめられ孤独に成長するが、ずば抜け…

構図がわかれば絵画がわかる

著者は東京芸大の准教授。専門は美術解剖学。芸術論に加えて解剖学も学ぶ。前半は絵画の構図の入門書。章立てで言えば、平面(点と形)、奥行き(空間と次元)、光(光と色)となる。2次元の絵画にいかに画家が宇宙を展開するかを名画を実例にわかりやすく…

官邸の100時間

副題は「検証福島原発事故」。多数の証言をベースに地震発生からの5日間のドキュメントを伝える。著者は朝日新聞記者。ジャーナリストの使命として歴史資料を残すことに重きを置き、証言に基づき事実のみを積み上げていく。未曾有の災害に官邸も混迷を極め…

アメリカを占拠せよ

アメリカの草の根運動「Occupy」を指導する。拡がる一方の格差社会に対して声をあげようと主張。わすか0.1%の層が富の大半を支配する構造への反発は大きい。繰り返し起業の法人格の問題に言及する。無政府主義との批判には、民主主義の当然の権利と正面から…

代表的日本人

明治期に英文で書かれた一冊。クリスチャンの著者が西洋社会に向けて、日本人の美徳を紹介する。キリスト教的価値観に合致する代表者として、革命家=西郷隆盛、封建領主=上杉鷹山、農民聖者=二宮尊徳、思想家=中江藤樹 宗教家=日蓮。知っているようで知…

希望の木

陸前高田の「奇跡の一本松」。七万本の松原が津波で壊滅する中で、たった一本生き残り復興の象徴となる。NHKラジオ深夜便で発表された詩文に写真をつけての刊行。松を擬人化し家族や仲間が娘を守ろうとした下りは感動を呼ぶ。後書きにあるように作者の新…

日本海軍はなぜ過ったか

戦後行われた海軍将官による反省会の膨大な記録をひもとく。NHK番組での鼎談をベースにする。海軍は縦割りの組織で、国民の幸福よりも組織の成長を優先させたことは歴史の教訓。残念ながら戦後も生かせてはいない。3人の著者は立場は微妙に違うが、反省…

邪馬台

明治期に権力から抹消された山陰の阿仁村。偶然発見されて村の異聞の暗号を民俗学者が解読する。結論を言えば出雲説でたたら製鉄をベースに発展した邪馬台国が大和朝廷に征服され、大国主神話に置き換えられて、出雲大社に封印されたとする。後半は南朝の再…

オープンセサミ

短編集。主人公の年代は異なるが、それぞれの男女や家族の情景を軽妙なタッチで語る。作者の技量は相当なもの。それぞれにきわどい題材を取り上げているが、結末はわりと穏やかで読後感は悪くない。残念ながら全体に印象が薄い感じは否めない。オープン・セ…

八月十五日の神話

メディア論から日本の終戦を検証する。日本では常識となっている終戦記念日だが、国際的にはミズーリ艦上での降伏文書調印が正式な停戦。「敗戦」を「終戦」に読み替えたかった意図が働く。独立を達成した中国、韓国の事情にも配慮した形。良く聞き取れなか…

生きるぼくら

高校時代のひどいイジメにより引きこもりとなった主人公「人生」。母親に家出されやむなく訪ねた蓼科の祖母は痴呆症であった。義理の妹である少女は対人恐怖症であるが、人生と共同で介護と米作りに挑む。祖母の米作りは全くの自然農法で人出がかかり収量は…