2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

シークレットエクスプレス

ジェットコースター小説。青森から佐賀までの緊急貨物輸送。自衛隊の訓練を偽装しているが、実は原発の廃棄燃料輸送。不祥事から表に出せない裏事情。JR貨物の運転士出身のプロが主役。新聞社の女性記者と原発反対派が列車を追う。最後は小泉首相がモデルの…

最後の読書

連載エッセイ。老境に入った自らの読書に関する近況を綴る。残りの人生を考えざるを得ない年齢。過去の膨大な遍歴を見返すと本人も自覚されているが少年期、青年期に立ち返るものが多い。書評の部分では同世代の作家の動向に関するものも多い。残念ながら世…

経済成長なき幸福国家論

対談。長期的な人口減少により日本経済の下り坂傾向は避けようがない。藻谷氏は人口動静を論じる。一般の認識とことなり東京は急激に高齢化が進む。高齢者の絶対数が多い。平田氏はユニークな活動をする地方自治体を紹介する。首長により面白い取り組みは現…

犬部

北里大学獣医学部の動物愛護サークルを描くノンフィクション。捨てられた犬猫を保護し、里親を見つける活動を続ける。その実態は生半可なものではなく、自らの生活を犠牲にしての闘いが続く。メンバーは獣医師の卵であり、意識は高いが葛藤は続く。一時廃部…

仕事ができるとはどういうことか

対談。ビジネス社会における「スキル」と「センス」を評価する。日本社会では前者に重きをおくが、重要なのは後者。定量的に評価しにくい能力であるが、一定以上の組織を率いるには必須。思考法はインサイドアウト。仕事は自らの意思の表明。著名な実例をあ…

ふくしま原発作業員日誌

原発事故から10年。現場で戦った作業員たちの記録。報道管制が厳しい中、丹念な取材で人間関係を構築。それぞれの思いと現場の理不尽さを描く。彼らを支えるのは郷土愛と使命感。厳しい労働環境と被爆の恐怖の中での奮闘には頭が下がる。もちろん危険手当…

金融バブル崩壊

警告の書。現在の金融市場は完全にバブルであり、早晩崩壊が避けられない。コロナ下で財政出動が加速され、行き場のない市場がマーケットを押し上げている。次に来るのはハイパーインフレ。理論的に考えるとまったく正しい見解。対策としては銘柄を選抜した…

変化の時を生き抜く

富士ソフト創業者野澤宏の伝記。大学卒業後、専門学校の講師を経て、教え子と自宅で創業。独立系ソフトベンダーとして一代で巨大企業を築く。強みはランプサムでの受注とハードへの組み込み技術。時代の追い風もあるが、積極的な経営は見事。勝負は人材と新…

晩年の子供

短編集。少女時代の体験をもとに描かれた8篇。小学生の高学年から思春期まで。精神の成長と性への嫌悪と感心を女性視点から描く。踏み込んだ赤裸々な表現は作者の真骨頂。引き込まれるように読ませて頂いた。初版は90年頃の作品だが古さを感じない。何か…

世界最先端8社の大戦略

タイトル通り、8社の戦略モデルを解析、解説する。Tesla, Apple,Salesforce, Walmart, Microsoft, Peloton, DBS, Amazon。良く知られた巨大IT企業だけでなく、新興企業、既存事業から大転換を果たしたモデルも紹介。DXがキーワードだが表面的なものでなく…

リーダーの仮面

筆者はあらたな組織論「識学」を提唱。実践のため同名で会社を設立。経営している。リーダーは感情を務めて排し、仮面をかぶることで部下を指導、育成する。ポイントは5つ。ルール、位置、利益、結果、成長。人の能力に大差はないとし、公平な競争を導く。…

ブロークンブリテンに聞け

イギリスブライトン在住の著者によるコラム。日本の文芸誌群像に連載。格差が進む英国社会で底辺側から見た鋭い論評。ブレクジット、王室問題、コロナ対策と国を二分する論争が続く。日本から見るとどうしても遠い実相が良くわかる。映画や音楽の話題になる…

一俗六仙

エッセイ集。前半は経営者として日立のV字回復に挑んだ時代を振り返る。ラストマンとしての心構え。後半は引退後の生活。タイトルは週七日のうち、1日を俗社会に繋がり、残り6日は趣味に生きるとする意味。なかなか多忙で充実されており、俗の比率が高いよ…

アンブレイカブル

連作小説。主人公は内務省のエリート官僚。特高警察を指揮し、戦前戦中を通じて思想弾圧、小林多喜二や三木清を死に追い込む。はじめは理想を追う施策でも、巨大組織は自己防衛のために拡大を続け、人間性を圧殺していく。作者の特異な諜報ジャンルのエンタ…