2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

サラの柔らかな香車

将棋女流名人の前に現れた青い目の挑戦者。ブラジルで育った日系人だが複雑な家庭環境で言語障害を持つ。彼女を導いたのはかって奨励会で挫折を味わった男。女流名人戦を軸に両者のこれまでの人生が鮮烈に描かれる。早熟な天才たちが集う将棋界の厳しさ。こ…

リブセンス

アルバイト紹介サイトを運営するリブセンスを率い、若干25歳で上場を果たした村上社長の生き方を描くノンフィクション。普通の家庭に育ち、早稲田のベンチャーに応募し、大学一年で会社を立ち上げる。学生時代から段取りを大事にしリーダーシップに優れて…

新幹線を運転する

ベテラン新幹線運転士の語り下ろしを著者が再構成。乗客は普通目にすることの出来ない運転席の情景を浮かび上がらせる。500km以上の距離を15秒以内の精度でむすぶ鉄道技術の神髄。優れたシステムはもちろんだが、運転士の技量に負うところも多い。運転中は…

50代から上手に生きる人ムダに生きる人

少年時代から「徒然草」に慣れ親しんだという著者が、老齢を迎える心構えを改めて古典に学ぶ。シニカルな兼好法師の叙述にあるときは賛同しあるときは反発して、現代での大人の老い方を論じる。要はこれまでの経験を活かして、細かいことに拘泥せず泰然とし…

それでも社長になりました

日経新聞の連載。各社のトップが課長時代を振り返る。時代的には80−90年代で私が入社した頃。共通しているのは海外経験と上層部に対する歯に衣を着せぬ物言い。若い頃には反逆児くらいがちょうどいいのかも知れない。トップの仕事は如何に最前線に働いて…

言葉のチカラ

この度定年退職となったNHKの花形アナウンサーである著者のエッセイ集。不器用であがり性の自分のからを打ち破り、言葉の持つ力を信じて走り続けたアナウンサー人生。カンペに頼らずいかに真実を伝えるかに腐心。何事もよく研究されているなというのが実…

史上最強の内閣

北朝鮮のミサイル発射が迫り、世襲議員からなる自民党内閣はなすすべもない。京都に本拠をおく「影の内閣」に助けを求める。歴史上の偉人を彷彿とさせる実力派内閣が登場。見事に危機を回避する。キーは戦前から残存させた諜報員の活躍。荒唐無稽な設定とお…

原発、いのち、日本人

ペンクラブ会長である浅田次郎氏を始め、各界の文化人が原発存続の是非を問う国民投票の実施を訴える。間接民主制では原発ムラの論理がまかり通りせっかく盛り上がった官邸前の草の根運動が下火になることを危惧する。やや左よりにバイアスがかかってはいる…

日本式モノづくりの敗戦

タイトルの通り電機メーカーを中心とする日本企業の敗因を解析し、将来への方策を説く。時代の流れを読み切れず垂直統合にこだわったため、結果としてスマイルカーブ上で利幅の薄い現場に執着し、既存事業に縛られた。中国をはじめとする新興国への輸出は、…

クオリティ国家という戦略

工業化社会が完全に行き詰まった日本は、ボリューム国家ではなくクオリティ国家を目指せと説く。先例はスイスとシンガポール。製品のブランド戦略と規制撤廃による海外への門戸開放。甲論乙駁の国政では何も決められないため、オーガナイズスモールにより道…

BQ

[書評]BQ 著者はクレディセゾン社長。西武で堤清次の薫陶を受け、自由な発想で新たなビジネス分野を拓く。本書ではこれからの時代へ向けての人材評価指標として、BQ=IQ(知性)xEQ(人間性)xSQ(感性)を提唱する。高度成長期に必要とされたIQ/EQはその…

鉄道会社はややこしい

首都圏での地下鉄と私鉄/JRの相互乗り入れをテーマに、複雑な運転形態と実際の運営を微細に述する。たしかに東京の東西両端でで本来はありえない私鉄の電車が走っている姿は奇異であろう。関西圏では希有な例。また諸外国でもほとんど実例を見ない。これ…

考え方のコツ

かの「暮らしの手帖」の編集長にして文筆家である著者が仕事術を公開。これは続編らしい。内容としては思考、想像、コミュニケーション、時間管理そしてグローバル。私より若い世代のクリエーターらしく非常に合理的で自分を中心に考える一方で、人間関係な…

男の貌

企業小説の第一人者である著者によるリーダー論。あとがきによると編集部による語り下ろし。これまでの代表作から印象的なリーダーたちを再度登場させる。作中では描けなかった素顔の部分や後日談も満載で感心させられる。人間にはだれしも正と負の部分があ…

サイゼリヤ革命

庶民の味方イタリアンチェーンのサイゼリヤを徹底分析。学生時代のアルバイトから起業し上場企業を築き上げた創業者の正垣氏に焦点をあてる。理系的な発想で店舗経営を徹底的に数値化。その目的は経営理念である「人のため、正しく仲良く」おいしい料理を安…

日本の選択

消費税、原発、教育と日本政治が直面する10の問題につきやさしく解説。特に外交面では一般には知られていない意外な観点を提示する。ジャーナリストらしくニュートラルの立場を取るが、立ち位置はリベラルで共感しやすい。問題の中に教育を2つ織り込んで…

愛と憎しみの豚

「豚」を追って世界を駈けるノンフィクション。穢れた存在として否定されるイスラムとユダヤの一神教の世界。一方で極めて効率のよいタンパク源として重用されるキリスト教世界。著者の豚を追う旅はルーマニアで生贄としての豚の刺殺に立ち会い、最後は極寒…

運をつかむ技術

HISの経営を後継に譲り、18年間赤字に苦しむハウステンポスの経営再建に挑む。地元政財界から三顧の礼で迎えられ、周囲の反対に天の邪鬼の本性が奮い立った。赤字体質につかった社員の意識改革が最大のキーポイント。一気に黒字化したがリピーターが獲得で…

ラファエロ展

上野駅で家内と待ち合わせ二人で鑑賞。意外と作品数が少なく時間はかからなかった。初期の板絵の肖像画とバチカンの障壁画の原画をベースにした販売用の版画が多い。37歳で早世し大半を宮廷画家として過ごしたラファエロは後代の画家と異なり作品数自体が…

佐藤可士和さん仕事って楽しいですか

売れっ子アートディレクター/クリエイターが若手の質問に答える形式でこれまでの人生を語る。学生時代や博報堂時代から現実的な夢や目標を次々実現し今日の地歩を築いた。単なる広告デザイナーではなく総合クリエーターとなる。クライアントからは徹底的な…

FACEBOOKバカ

解説本。基本的な設定から効率的な利用法まで実例をあげて示す。まだまだ開発途上であり機能は日ごとに変わるが、知られていない裏技的な要素も詳しく解説。根本的な何を書くべきかの問いには「自分はどういう人として覚えてもらいたいか」と明快な答え。自…

マネー資本主義

世界を揺るがしたリーマンショックの真相を、丹念な取材と豊富な証言で明らかにするドキュメンタリー。投資銀行の暴走。政府の金融緩和政策。利潤を追った年金マネーそして金融工学の落とし穴。4つの要素が絡み合い未曾有の危機を生んだ。繰り返すバブルの一…

今ふたたびの京都

副題に有るとおり、川端康成との親交により昭和30年代に京都を描いた傑作の数々。本書は魁夷の名画と康成の小説の抜粋で構成される。洛中だけでなくにはじまり北山、嵯峨野と周囲の山々も京を形成する重要な要素。繊細な風情が両所により描かれる様は素晴…

東電福島原発事故総理大臣として考えたこと

元総理大臣自身による回顧録。原発事故では最悪の事態の場合、東日本が壊滅し5000万人の避難が必要になることが想定されたこと。危機を回避できたのは多分に幸運な部分があったことを独白。脱原発へ大きな舵を切ったことを自身の大きな転換点、成果とする。…

日本の選択

消費税、原発、教育と日本政治が直面する10の問題につきやさしく解説。特に外交面では一般には知られていない意外な観点を提示する。ジャーナリストらしくニュートラルの立場を取るが、立ち位置はリベラルで共感しやすい。問題の中に教育を2つ織り込んで…