軍事

歌われなかった海賊へ

第二次大戦末期のドイツ。ナチスに反抗する若者のグループ「エーデルヴァイス海賊団」。様々な事情を抱えながらそこに身を投じた4人の物語。立ちはだかるのはゲシュタポ、ヒットラーユーゲントさらに一般の大人たちの無理解。若く純粋な彼らは理想に向かい…

ソルハ

アフガニスタンを舞台にした児童文学。カーブールの中流家庭が舞台。主人公は就学間もない少女。長い内戦が収まり、ようやく平穏が訪れたかに見えたが、タリバンによる圧制が始まる。女性の権利を否定し、教師であった母親は射殺される。アメリカによる空爆…

聖地旅順と帝国の半世紀

日露戦争から、太平洋戦争まで、激動の歴史を旅順、大連に視点を当てて描く。三国干渉によりロシアの租借地となり、激戦を経て日本の統治下に、21箇条の要求で火事場泥棒的に租借を延長。中国人民の反感を買う。日本人にとってはある意味聖地となるが、時…

絶対に行けない世界の非公開区域99

タイトル通り一般人の立ち入りが禁止されている施設や地域を写真入りで紹介する。予想通り軍事、諜報機関がほとんどであり、特に核兵器に関係する施設も多い。日本では伊勢神宮の神域のみが掲載。説明文がやや長く、じっくり読んだので想定より時間を要した…

池上彰の世界の見方北欧

北欧4国の国事情。厳しい環境と列強の間にはさまれて独自の政治、文化の路線を歩む。税負担は高いが、高福祉、教育重視は少ない人口で生き抜くための合理的な選択。日本が見習うべき制度も多い。中学校での授業にしては内容のレベルは高い。シリーズを遡る形…

敗軍の名将

太平洋戦争。戦後生まれの著者が悲惨な戦場から4人の名将の戦いぶりを描いたノンフィクション。インパール作戦の佐藤、宮崎、沖縄戦の八原参謀、海軍芙蓉航空隊の美濃部。理不尽な大本営や上層部の命令に反してでも、合理的な自らの理想を貫く。ただその正…

もう歩けないからが始まり

陸上自衛隊の実情を、兵員目線で記述。厳しい訓練に明け暮れてはいるが、戦前のように不条理ではなく、納得しなければ動かない。考えてみると辞める選択肢もある。面白おかしく書いているが、ある意味常識的な話で、一般社会とも通じるところはある。地著者…

エネルギー危機と原発回帰

NHKの重鎮二人がエネルギー危機を理由に急がれる原発再稼働に疑問を呈する。中立であると断ってはいるが、様々な問題点を指摘。老朽化対策と原発のゴミ問題。いずれも見切り発車の状態。根底には関係省庁、電力会社、地方自治体と関係者が多すぎ、変革が進ま…

紛争地の看護師

国境なき医師団の看護師の体験記。著者は日本の看護師であり、国際貢献のためにオーストラリアに留学したことにまず驚く。英語を身に着け、17回も戦地に赴く。シリア、イエメン、ガザ。想像以上に悲惨で過酷な状況。安全は考慮されているが、保証は全くな…

ナポレオン街道

稀代の英雄の足跡を訪ねる紀行文。生誕の地コルシカ島からパリ、イタリア、エジプトと巡る。行く先々で無頼派らしくギャンブルと酒に興じる。それも旅情を掻き立てて良い。ナポレオンにまつわる書物は30万冊を超えるという。軍事的才能は言うに及ばず非常に…

硫黄島上陸

太平洋戦争最後の激戦地硫黄島。軍事基地として一般人の上陸は原則禁止。戦死率95%の島にはなお一万以上の遺骨が眠る。著者は新聞記者でありながら自発的に収集団に参加。その現状と謎の解明を本書に託する。様々な神話があるが、外務防衛筋のアメリカに…

政宗の遺言

伊達政宗の最期を新米小姓の視点で描く歴史ミステリー。江戸に上がり、人生最後の仕上げを進める戦国の英雄と、その半生を語り部が伝えていく構成。謀略に優れ版図を広げるが、秀吉や家康には常に謀反を疑われ、機知で乗り切ってきた。最後にどんでん返しも…

笑って人類

近未来SF大作。世界の大国とテロ組織の平和会議当日に、テロ組織の代表が自爆テロを敢行。残されたうら若き女性補佐官と日本の能無し首相があきらめず平和条約の締結に挑む。終盤にかけ、過去の謀略や経緯さらにはどんでん返しが明らかになってくる。未来の…

ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか

膠着状態となったウクライナ戦争の帰結をその原因分析から紐解く。この戦争は旧ソ連圏の再生を目指すロシアと西欧側への参加を目指すウクライナの互いのアイデンティティを賭けた闘いであり、妥協の余地は少ない。ロシアが開戦に踏み切った理由には、資源高…

黒い海

2008年の海難事故。漁船が沈没し17名の命が失われた。事故調査委員会は波のためとシナリオ通りに簡単に片づけた。海難事故としては漁船は優先度が低いとは憤りを禁じ得ない。生存者の証言と大量の油が大きな疑問として残る。可能性が高いのは潜水艦との衝突…

桜華

防大女子一期生の人生を追うノンフィクション。男性社会に飛び込み、あらゆる偏見と闘いながら、第一線で活躍する。志望動機はさまざまだが、女性の一期生に憧れた部分も大きい。評価は男女公平であり、人間性やリーダーシップを問われる。職場結婚がほとん…

撤退戦

近代戦史の中から9例を精査。最も困難を極める撤退戦の成功と失敗の実例を考察する。どうしても組織の各レベルで判断は遅れがちで状況を悪くする。筋の通った命令系統が必要。現場は正確な状況報告、トップ側は部下を慮ることなく冷徹な判断が求められる。…

世界の賢人12人が見たウクライナの未来プーチンの運命

タイトル通りの内容。様々な分野の著名人が寄稿したもの。2月の開戦直後の論評が多く、最近の戦況は考慮されていない。立場は様々だが、ロシア帝国復活を狙うプーチンの狙い、世界大戦の危機感などは共通。西側の論評なので民主主義を守るために立ち上がるべ…

ウクライナ戦争は世界をどう変えたか

タイトル通りの時事評論。海外情報を網羅し多面的に状況を分析する。この戦争は第二次大戦の東部戦線の延長線上にあると指摘。ロシアから見れば、ナチスから欧州を解放したのは自分たちであり、西側がNATO拡大により領土を拡大してくるのは裏切り行為としか…

失敗の本質を語る

著者の自叙伝。種本は私の履歴書。名著「失敗の本質」からその後の研究人生を振り返る。組織論、知識創造論。を極め独自のSECIモデルを展開。米海兵隊を自己変革する理想のモデルとする。私も考えたら結構読んではいる。特に後半生は哲学的要素も加わり、抽…

陸・海・空 軍人によるウクライナ侵攻分析

ロシアのウクライナ侵攻の実情を、自衛隊大物OBたちが解説。専門家の目から見て戦況を冷静に分析する。互いの対空ミサイルが有効で本格的な制空戦闘は行われていない。ロシアのキエフ侵攻は政権転覆を狙った神経戦で占領の意図はない。撃沈された軍艦モス…

習近平帝国の暗号2035

習近平政権の内情と目指す姿を描く。著者は日経記者で北京駐在。ちょうど5年前の党大会。2期目を目指す人事抗争。腐敗撲滅を武器に軍部を含めた反対勢力を無力化していく。経済発展と軍備拡張により2035年に米国を凌駕することが野望。そのために今は雌伏…

自衛隊最高幹部が語る台湾有事

台湾有事を想定したシュミレーション結果と、その結果を受けて元幕僚長の座談会。中国の攻勢はサイバー空間を初めとするグレーゾーンから開始され、尖閣や先島諸島も攻撃対象となり、自衛隊は2方面作戦を強いられる。もう一つの課題が住民の避難。中国在留…

和らぎの国

女帝推古天皇を主人公とする時代小説。皇族の後継争いと豪族間の権力闘争が繰り返される飛鳥の時代。女性でありながら政治感覚に長けた皇太后が皇位を継承する。聖徳太子と竹田皇子の補佐を受けながら、和を重視し大和を文明国へ変身させる。内政では蘇我馬…

同志少女よ敵を撃て

独ソ戦を舞台にした戦史小説。実在したソ連の女性狙撃兵部隊がモデル。故郷の村をドイツ軍に蹂躙されたヒロインが復讐のためにスナイパーとなる。厳しい女性教官のもとに養成され、スターリングラード、ケーニヒブルグと激戦地へ駆り出される。見方からも狙…

原発事故最悪のシナリオ

福島第一の事故のノンフィクション。NHK-Eテレ特集の取材記。事故発生から日本政府のシナリオ作成まで2週間を要し、しかも公表されなかった顛末を探る。一方でアメリカ側は原発事故の連鎖を想定し、最悪の事態に備えた。パニックを避ける目的は理解される…

ナチを欺いた死体

第二次大戦のシチリア反抗作戦。英国諜報部が実施した謀略欺瞞作戦。死体に重要文書を持たせ、わざとスペイン海岸に漂着させる。そこには他の攻撃目標が示されドイツ側の防御態勢を混乱させる。結果として作戦は成功し、ムッソリーニの失脚につながった。本…

討ち入りたくない内蔵助

コミカルタッチな歴史小説。松の廊下から討ち入りまでを内蔵助の心情描写で描く。少しでも藩士の命を助けようと、浅野家再興に駆けるが、幕府の結論が下った後は、討ち入りにより幕府の裁定を正そうとする。人心掌握術とそのうらにある本来の人間臭さを現代…

大阪城

歴史上のエピソード50編を紹介。史実か伝承か微妙なものを含む。石山本願寺から明治維新までまさに戦乱の歴史。特に大阪の陣後の残された遺族の行く先はあまり知られていない。著者は大阪城の学芸員。昭和の再建からまもなく100年とのこと。 大坂城―秀…

防大女子

タイトル通り、著者は防衛大学の出身。幹部候補学校を中退、記者となる。前半はあまり知られていない防大生活を詳述。4年間、圧倒的な男性社会、厳しい上下関係で心身ともに鍛えられる。ほとんど自由のない生活で、1年時に多くが退学する。本書は卒業生の…