2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

益川敏英の「あなたがいたから」

NHK「こころの遺伝子」の取材記。ノーベル物理学賞を受賞した益川教授の回は、その師にあたる名大の坂田教授のE(Elementary Particle)研にスポットをあてる。自由と平等をモットーにつねに活発な議論が新しい理論を産み出していた。また象牙の塔にこもること…

心をつなぐニュース

東日本大震災後の地方紙9紙の記事からのピックアップで構成。悲惨な被害とそこからの復興をめざす人々の姿を地元に密着した記者たちの渾身の筆で伝える。非常時ゆえにではあるのだが、ここには記者と対象という通常の関係から一歩踏み込んだ報道の本質があ…

きな子

映画のノベライズ。どんくさいラブのきな子と見習い訓練士の女の子の物語。もちろん出来すぎでステレオタイプなのだが、読みだしたら結末までやめられなくなった。そんなことあるかいと思いながら。映画の脚本としてはこうするしかないでしょう。 きな子 〜…

先送りできない日本

副題は「第二の焼け跡」からの再出発とされているように震災後に書かれているが、構想自体はそれ以前からあったようで財政危機と人口減少に悩む日本社会への提言が主題。単純化すればTPPを含めた積極的な開国による国際化。日本ブランドを活かしたマーケット…

パウル・クレー展

会社を抜け出して会期末近くの会場へ。平日なのに結構な人出。大作は少ないが前衛的な名品がそろっていた。後半は制作過程ごとの展示構成。2次元の絵画から3次元さらに時間軸を超えて4次元の世界まで構築しようとした独自の芸術世界。売店は人混みで絵葉…

本当は危ない「論語」

著者は中国文学の研究者。目新しい論語評になっている。日本では儒教の聖書と位置づけられているものの、由来としては四教五書より一段低い位置にあった。その表現の古拙さ故に幾通りもの解釈が可能であるところに危うさがあるとする。日本に与えた影響も大…

国境事変

公安モノ。北朝鮮系商社に内偵を進めている公安。父親の初代社長は自殺、長男の2代目は殺される。背後には核の起爆装置を巡る争い。対馬を舞台に追跡と銃撃が繰り広げられる。エンタメとして内容的には楽しめるが、深みはない。旅行用とわりきりましょう。…

ハンガリー国立美術館

ハンガリー絵画の殿堂。開館と同時に入ったのでほとんど観客はおらず逆に少し緊張する。中世からスタートし階を上がる毎に時代が下る構成。西洋美術の教科書通りの展開だが、特に19世紀、20世紀の絵画に名品が多い。浅学にして個別の画家はほとんど知ら…

謎手本忠臣蔵

加藤流忠臣蔵。丹念に手紙等の史料をひもときながら、大石内蔵助と柳沢吉保の両面から描く。幕府側がかなりの情報をつかみながら討ち入りを許した謎に迫る。むしろ事後処理の情報操作で本当の理由すなわち幕府と朝廷の確執を隠したところに手腕を見る。関ヶ…

第三の敗戦

震災後の日本を幕末、戦後に続いての第三の敗戦と位置づける。前の2回と同じく社会構造を大変革し、復興に結びつけるよう提言。現在の縦割りの官僚機構を旧陸海軍と同じく、国益より省益を優先する組織と断じる。具体的には復興庁の設置から道州制への移行…

巨富への道

不況下でも業績を伸ばす企業はある。本書では一代で創業し新たな産業分野を築き上げた6例を紹介する。共通するのは独自で斬新なコンセプト。目先の利益ではなく社会が求めるモノを見抜いたことが成功につながった。あとはぶれない実行力と多少の運。成功し…

謎解きはディナーのあとで

話題のミステリー。財閥の令嬢でありながら現職の刑事と謎解き役のその執事。6件の難事件をいとも簡単に解決するが、謎解き自体は大したことなく、むしろふたりの間で交わされるやりとりに楽しむべきところがある。エンタメとしては楽しめたが、まあ雰囲気…

空色ヒッチハイカー

高校の夏休みに50年代のキャデラックを駆り、神奈川から九州唐津まで地道をひた走る旅に出る。途中であったさまざまなヒッチハイカーたちとの出会いと事件。中心には年上の美女が助手席に陣取る。はっきりした強いキャラがなかなかいい。常に目標にしてき…

国家の命運

日米構造協議や北朝鮮を巡る六カ国協議で名を馳せた外交官のエース。外交交渉の基本をあかすが、要はテクニックでなく対人関係。誠実に相手の信頼を得ること。キーワードはオフェンスとロジック。対米交渉は待ちのディフェスでは解決は望めない。独裁国家の…

この国を出でよ

共著。政官界への痛烈な批判から始まる。日本は破産寸前、戦争に喩えればミッドウエーで大敗を喫しているのに国民には何も知らせれていないと断じる。活路は縮小する国内にはなく50倍の市場がある海外へ雄飛するしかない。経営書としてはドラッガーを賛す…

大腸のためのヨガ

ポーズ(1)寝ころんで足を上げブラブラさせる(約10秒)。 →足から腸へ血液が流れる。 ・ポーズ(2)両手を広げ両ひざを曲げる。下半身を右45度にひねる(約10秒)。 10秒後左45度にひねる(約10秒)。→腹筋を刺激し腸の働きを促す。 ・ポー…

あの空の下で

ANAの機内誌に連載された小説とエッセイ。小説の方はいずれも小品で、旅を題材にし若い男女の日常と恋愛を軽くしかし品良く描く。共感を呼ぶのはむしろエッセイの方。この長さではフィクションより自らの体験の方がよりよく活かされているように感じた。美し…

まぼろしの鳥

作者初の小説はメルヘンタッチの短編集。全9編だが狙いと出来にはばらつきがある。各編に共通しているのは人間の叡智を超える大いなる存在のが暗示。プロの作家ほど記述が洗練されてないのは割り引いて考えるべきだろう。充分に楽しめるレベルではあるが、…

モップガール

殺人事件や事故の後片付けを請け負う特殊清掃社。バイトで勤めることになった女性が主人公。彼女はある種の霊感が強く、なんらかのショックで身体に変調をきたす。代表的なものは難聴だが、各編毎に症状はさまざま。事件を解決すれば自然と治まるというのが…

千年樹

その名の通り樹齢1000年の樟の大木。しかしその周囲にはなぜか不幸な歴史がまとわりつく。8編の短編からの連作。それぞれの中で現代と過去の挿話が絡み合う。大木は人間にあるとき冷酷であるときは暖かい。最後に寿命と判断され人間の浅はかな思惑で切り倒…

100回泣くこと

一組のカップルの幸福と死別。工場技術者とデザイナーのカップル。いい雰囲気の二人は結婚の練習と称して幸せな同棲を始めるが、ほどなく彼女が病に倒れる。子宮ガンで治療の甲斐無く世を去ることになる。男は絶え間ない後悔と無力感に苦しむ。恋愛小説では…