2011-01-01から1年間の記事一覧

小暮写真館

変わり者の父親が住居に購入した古びた写真館。長男である都立高校生はひょんなことから心霊写真バスターとして名を馳せることになる。やがては一家の凍らせた過去である幼い妹の病死に向かい合うことに。高校の友人や自殺願望のある年上の事務員と脇役もが…

ガンダムと日本人

名作アニメ「ガンダム」を通した日本文化論。近代日本の歴史は周知の内容なのでやや退屈。ジオンをナチスに擬えるのは納得できるが、シャアを小沢一郎と同じ壊し屋と論じるのは疑問符がつく。このアニメの真価は子供用のロボアニメを大人の鑑賞にも耐える人…

日露戦争陸戦の研究

タイトル通りの内容。戦史を忠実に研究し、「坂の上の雲」で植え付けられた誤ったイメージの払拭を図る。日露戦争はロシア側の挑発により暴発した朝鮮半島の防衛戦争であったこと、戦域は鉄道沿いの極めて狭い範囲で行われたこと。日本陸軍も近代化が進んで…

誰にも書ける一冊の本

老いた父の臨終の席で手渡された原稿。それは残された家族にあてた自伝小説であった。息子である語り手から見ても平凡な人生と思ってた父親の、波乱万丈の人生が語られる。作中作の登場人物が雪の中の葬儀に駈けつけるラストは感動的。死に様をテーマにした…

オーダーメイド殺人クラブ

女子中学生がいじめに耐えかね、同級生の昆虫系男子に自らの殺害を依頼する。できるだけ劇的に誰もの記憶に残るようなシナリオを考案しそれを記録する。結局は未遂に終わるのだがリアルであり得る話に思えてしまうところが怖い。この年代が持つ精神の不安定…

自動車革命

NHK特集の取材記。自動車産業はガソリンエンジンから電気自動車への100年ぶりの転換点を迎えており、そのキーテクノロジーであるリチウム電池について、米中日を取材する。猛スピードで走る中国勢と市場獲得をにらんで技術供与を厭わないアメリカ。その狭…

ゴヤ展

朝起きれなかったこともあり、急遽AM半休にして、上野にゴヤ展を観に行く。呼び物は着衣のマヤだが意外と油彩が少なく、素描と版画が多い。宮廷画家のイメージが強いが啓蒙主義から社会性に富む主題が多い。さすがに年末の午前中はゆっくり鑑賞できた。プラ…

人事部は見ている

タイトルは反語かと思う。人事部員はもちろん懸命ではあるが、細かい個人情報は把握していない。むしろ組織やシステムの維持、管理に重点を置いている。人事関係に長くキャリアを置く著者の論点には説得力はあるものの内容は常識の範囲内。時代の要請により…

日本復興計画

震災後の早い段階からメディアで述べた原発の状況を中心にまとめた一冊。さすがに専門家であるだけに分析は今見ても性格。日本の原子力産業は終焉。原発5キロ圏内には未来永劫人は住めない。電源喪失がいかに原発にとって致命的であったかあらためて思い知…

双月高校クイズ日和

都立高校のクイズ同好会が舞台のライトノベル。弱小の同好会だがそれぞれ事情のあるメンバーがやがて結束し成長していくという王道。クラブを目の敵にする生徒会との対決が一つの山場。何事にも夢中にそして一生懸命になれるのは青春の特権ではある。楽しく…

安土城の幽霊

短編集。信長にまつわる3編を掲載。関係する人物像はよく描けているが、異聞録と銘打っているように本編を読んでいることが前提となっている。タイへの出張中に一気に読破。安土城の幽霊―「信長の棺」異聞録作者: 加藤廣出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2…

四十九日のレシピ

長年連れ添った妻を亡くした父親と、夫の浮気が原因で別居中の娘。妻の教え子というヤンキー娘とブラジル青年が強引におしかけ四十九日の大宴会の準備にかかる。笑いありペーソスあり、空白だった妻の過去が教え子たちによって埋められていき、親子とも明日…

風にそよぐ墓標

日航機事故から4半世紀。遺族の中で当時の父親の年齢に達した息子たちがようやく語り始めた。6家族の例を紹介する。母親たちがパニックに陥る中、男としての責任感から悲劇に正面から向かい合う息子たちの姿は感動的である。中にはマスコミや検察医の家族…

韓国語でオモニと読む。作者の母の伝記である。16歳で結婚のため単身日本へ渡り、戦中戦後を九州熊本で生き抜く。文盲ながら商才にたける一方同胞には温かい支援を惜しまない。世俗的には幸福と言い難いが、その一生はまさに動乱期の韓国の歴史を象徴する…

殺人ピエロの孤島同窓会

架空の東硫黄島が舞台の孤島モノ。同窓会に集まった36人が次々と殺される。イジメにあった男子がピエロに扮して殺人劇を繰り広げる。粗い設定、稚拙な描写、謎解きもいまいち。作者12歳の作品とのこと。話題性を狙い特別賞を設定したのが楽屋ネタのよう…

震災後

震災で将来への希望を失い、闇の部分に吸い込まれそうな中学生の息子を、平凡なサラリーマンである父親が救う。ヤマ場は二つ。前半は気仙沼へのボランティア。後半は全校集会でのスピーチ。元自衛官幹部である祖父の影響は大きいが、幾世代に渡っても人類は…

来たれ野球部

とある進学校が舞台。3つの自殺を軸にストーリーは展開。野球部のエースで学年トップの少年とその幼馴染で他人との係わりを嫌う少女。少年の内面に潜む独占欲はやがて死を超越しようと純化していく不条理な世界。タイトルと軽めの装丁に関わらず、重めの内…

ネプチューンの迷宮

ミクロネシアの小国が部隊。元海上保安庁の救難隊員がクーデーターに巻き込まれる。リン鉱山資源の枯渇を背景に、移住を目論む元大統領派がしかけた謀略に立ち向かう主人公と気骨の警察長官。まわりの人物も多彩で、典型的なノンストップノベルで安心して長…

インシテミル

社会実験のアルバイトと称して特別な地下施設に閉じこめられた12人の男女。殺人と犯人捜しでボーナスが支給されるサバイバルゲーム。本格ミステリーだが前半の展開に比べて謎解きには緊迫感に欠ける。動機付けが弱いせいか。Cかな。インシテミル (文春文庫…

MOA美術館

正しくはエムオーエー美術館と読む。熱海駅の山側広大な敷地に威容を誇る。予定していたゴルフが中止になり急遽訪問。呼び物の国宝のうち、光悦の紅梅白梅図は期間限定とのことで模写が展示。仁清の茶壺がさすがの風格で引きつけられる。他にも乾山の作品等…

日本破綻「その日」に備える資産防衛術

タイトル通りの内容。国債の暴落から日本経済は破綻し、ハイパーインフレが生じる。個人資産の防衛には分散投資を推奨。具体的には強い国のリスク資産。すなわちドルを保持せよとのこと。火災保険と思って動いてみるか。日本破綻 「その日」に備える資産防衛…

つむじ風食堂の夜

メルヘン小説。とある街の十字路にたたずむ食堂に集う人々。4人の個性ある登場人物が、時に他愛ないあるいは哲学的な会話で楽しませる。親子の想い出や淡い恋も語られるが、全体としては色彩を楽しむべき作品。実際には著者と編集者の会話から生まれたとの…

唐人巻

長崎中華街 福建謹製 これまでで一番旨かった。 通販は下記http://www.e-nagasaki.com

真夜中のパン屋さん

亡き妻の遺志をつぐ元国連職員と天才パン職人の異色コンビが営む夜間営業のパン屋。そこの居候することになったとがった女子高生。都会の夜に救うオタクやニューハーフを巻き込みながらメルヘンチックに物語は展開する。それぞれの事情が章ごとに語られるの…

月の上の観覧車

短編集。人生の終盤を迎えた男たちを描く8編。男はいくつになっても純情で夢を追う生き物であるが、必ずしも女性や家族には理解されない。家族の死や別離を伴う重めのテーマ。ストーリー構成には磨きがかかり、哀愁が漂う。「上海租界の魔術師」「レシピ」…

光の王国

世界各地にフェルメールの絵画を訪ね歩く紀行文。各美術館で学芸員との情報交換の場が組まれ、恵まれた鑑賞の旅。作品そのもととそれに影響を受けたであろう、野口英世を始めとする科学者の邂逅にも想いを馳せる。光を微分的に切り取り瞬間を描き切った謎お…

孫の二乗の法則

ソフトバンク孫正義の人生哲学である、5x5の25文字。孫氏の兵法から引用された部分とオリジナル部分がある。本書ではこれまでの経営判断からその意味合いを解説する。ともかく時間をおしまず考え抜き、決断すれば押しまくる氏の生き方には敬服。590B孫…

日本人の誇り

現在の日本を覆う国運の衰退は、一時的な経済状況によるものでなくアメリカによって植えつけられた東京裁判史観によるものと断じる。明治初期に外国人を驚嘆させた日本独自の共同体の美学を取り戻すべきと主張、具体的な第一歩は憲法改正にあるとする。極右…

人口激減

サブタイトルにあるように日本は真の開国をし、移民を積極的に受け入れるべしとの主張。人口減による国力の低下の打開策としては誰もが思いつくものの、治安の悪化や独自文化の崩壊を理由に踏み切れない問題。2035年を2つのケースでシュミレーションする。…

「想定外」の罠

柳田「事故学」の集大成。広島から福島まで核の事故と被害を追って来た著者の緊急出版。ただし書き下ろしは冒頭の1章のみで、他はこれまでの著作からの抜粋。犠牲が出る度にハード、ソフトの両面で対策はうたれているものの、いたちごっこの域を出ない部分…