2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ターミナルタウン

鉄道SFモノ。かっての鉄道城下町が通過駅となり寂れる。町は東西に分かれ対立。複雑な政治情勢が背景にあるが、これは日本の戦後史の変形。外から目的を持って来た若者が触媒になり、謎解きと変革に臨む。種から育てる隧道や目に見えないタワーなど斬新な設…

太陽の棘

著者得意の絵画もの。終戦直後の沖縄で米軍の精神科医と地元の芸術村の画家たちの交流を描く。凄まじい戦渦と米軍の横暴を受けながらも信じる芸術に身を捧げる画家たちと陰ながら支える家族。実話をベースにした物語は迫力充分。装丁の肖像画は玉那覇正吉氏…

金曜のバカ

著者発の短編集。共通するテーマは青春と恋愛。全体にライトノベル的ほのぼの系ではあるが、ステレオタイプでなくこれまでにない構成手法をとる。良かったのはSF色の濃い「星とミルクティ」。愛犬の視点からの「ゴンとナナ」。期待通りに楽しめました。金…

春を恨んだりしない

副題にあるように震災に関するエッセイ。自然の前ではあまりに無力な人間の生を問う。あまりに甚大な被害、特に亡くなった多くの命に想いを馳せる。文章力云々ではなく作者の感性の力。書かずにはいられなかったのであろう。原発に関してはその存在を過去の…

アジアの非ネイティブに学ぶビジネス英語速習術

著者は元SAP社の副社長。抜擢されて必要に迫られ英語をモノにする。自身の経験から日本の学校英語でなく中国や韓国に代表される実践的な英語学習法を推奨。文法や単語にこだわらず、どれだけ積極的に機会を捉えて会話することが出来るかがKFS。全く同意する…

メリーランド

弱小お笑い芸能プロダクションが舞台の連作。メジャーを目指す芸人達はそれぞれの事情を抱えながら今日を生きる。悩みや複雑な上下関係そして恋愛と普通の若者と何も変わらない。厳しい現実に直面し、挫折と諦めも描かれる。いずれも最後はほのかな希望を示…

改革力

著者はマッキンザーのコンサル。橋下府知事、市長のブレーンとして大阪改革の青写真を描く。前半は大阪の実例を細かく例示。確かに旧態依然とした官僚体制が変わって来たことは確か。最終的には関西をEUに準えた州とする構想。後半は組織に変革を促すための…

トヨタの問題解決

トヨタ系のコンサル会社が、トヨタの強さの源泉である問題解決手法について詳細に解説する。極めてシステマテックで定量的。論理的な手法であるため構成員を納得ずくでひとつのベクトルに向かわせる。小さな改善の積み重ねが大きなイノベーションの源泉にな…

金遣いの王道

書誌学者と投資アナリストの対談。慶応の同窓で旧来の中。ともに老境に入り、美しい死に方を意識する。キーワードは減畜。金の奴隷にならず主人となるには、消費、貯蓄、投資、寄付のバランスが重要。老後は如何に後の世代への貢献が出来るか。当たり前の内…

社長辞めます。

通販の雄ジャパネットたかたは液晶TVの売り上げが90%以上激減し、2気連続の減益に。カリスマ社長は13年に最高益を更新しなければ辞任すると突然公約する。トップダウンの組織に危機感の情勢と世代交代を促す。社員一丸の努力により、V字回復を果たす…

ブルーゴールド

水ビジネスを題材にした商社モノ。入社4年目の商社マンが懲罰人事で出向させられた先は怪しげなコンサル会社。大手商社の汚れ仕事を担当するブラック企業。元やり手の商社マンの社長は硬軟おりまぜビジネスに邁進する。法律ギリギリの稼業だが仕事と社会に…

約束の海

親子二代の潜水艦乗り。父は特殊潜航艇で真珠湾攻撃に向かうも捕虜となる。息子は海自の士官として海難事件に遭遇。世論の批判に直面する。丹念な取材と緻密な構成による物語は圧倒的な迫力で一気に読むものを引き込む。残念ながらこれが絶筆で未完。第二部…

熔ける

106億円という巨額の会社資金をカジノに注ぎ込み、特別背任で実刑が確定した大王製紙の元会長。これまでの来し方とギャンブル地獄を自ら告白、懺悔する。現役で駒場から東大に合格し、強引ながら合理的な経営手法で家庭紙事業を黒字化したあたりは、著者の有…

日本の決断

著者による直近の社会論評。これが三部作の完となるとのこと。いつもながら中立でリベラルな視点は一般国民に極めて近い。アベノミクスの成果には一定の評価を与える一方で、強引な改憲姿勢には警鐘を鳴らす。原発の問題も深刻。いずれ排水問題は先送り出来…

わたしが正義について語るなら

アンパンマンの作者にして先日亡くなった著者の自伝。波瀾万丈の人生。グラフィックデザイナーとして出発し三越に勤務しその後独立。宮城まり子のショーの舞台美術を勤める。アンパンマンを世に送り出したのは50歳を過ぎてからと言う。当初は受け入れられ…

ひかりの魔女

長男の死去により、次男宅に引き取られることになった祖母。書道の先生として尊敬する弟子達を語り手である孫と訪ね歩く。常に相手の気持ちを考え、誉め励まし前向きの生き方に導く。家庭内の問題をひとつひとつ解決し、最後はやくざの抗争も納めてしまう。…

翔ぶ少女

神戸の震災で父母を亡くした3兄妹が、妻を亡くした心療科の医師の養子となり生きる姿を描く。主人公の少女ニケは片足の機能を失い、次第にクラスで孤立していくが、父親代わりの医師や周囲に励まされ、やがて自立していく。医師も瓦礫に埋もれた妻を助けら…

技術を武器にする経営

MOT Manegement of Technologyを解説する。日本企業は独自の技術力で世界に伍する必要があるが、この分野の経営論は立ち遅れていた。実例を示しながら技術屋が陥りそうな陥穽を示し、必要なジャンプアップを説く。私の立場では必要な資質と意識。興味深く読…

虎と月

中島敦「山月記」へのオマージュ。虎となっってしまった父の真実をさぐるべく、14歳の少年が旅に出る。科挙に受かりながらも文学を目指して職を辞し、圧政に苦しむ民衆を助けようとする父の姿。児童文学のジャンルに入るが立派な文学作品となっている。著…

桁外れの結果を出す人は、人が見ていないところで何をしているのか

著者は鳩山一族の一員で、三菱商事をから請われてサンリオの常務。海外向けライセンスビジネスで成功を収める。若干39歳。実父を40歳で亡くしたとのことで、人生の一区切りとして本書を記す。華麗な経歴を支えた陰の部分の努力を、若手向けの啓蒙書の形…