美術

怖いへんないきものの絵

怖い絵シリーズの派生版。中野京子と「へんないきもの」の早川いくをの対談で、珍しい生物を描いた絵画を解説する。あまり有名な作品は無いが、逆に稀少性は高い。ユーモアたっぷりの本文と豊富な図版で一気に読ませる。内容的には軽め。 怖いへんないきもの…

絵はがきで楽しむ歴史散歩

明治から戦前にかけての絵葉書を紹介し、世相や歴史を振り返る。建築物が多いが、戦争や震災など事件を扱ったものも多い。ある意味ひとつの有力なメディアだったのあろう。著者のコレクションから紹介。図像も鮮明でなかなか愉しい。ほかにも世界にはすごい…

はじめから国宝なんてないのだ

日本美術への誘い。美術館のガラスケースの中ではなく、デジタル再生した制作当時のもとの姿を鑑賞する「賞道」を提唱。鑑賞にルールは無く個人の見立てが重要。知識に惑わされない姿勢。絵巻物はアニメーションの原点であると強調。各編の導入にはマンガを…

人生が楽しくなる世界の名画150

著者がヨーロッパ駐在時に通いまくった美術館からお気に入りの名画を抽出して照会。趣味ははっきりしていて、ルネッサンスからロココまで。印象派以降は趣味に合わないとのこと。また裸体を含めて美女がお好みと正直に吐露。ルーブル、ナショナルG,ウィフ…

問題解決のための名画解説

著書は米の美術史家。名画を鑑賞することで、ものの見方には様々な観点が存在することをセミナーで角界に伝えている。特に警察や医療関係には公表とのこと。写真で美術作品の実例を示し主張を繰り返す。興味を引かれる部分とそうでない部分の山谷はあるもの…

屋根裏プラハ

写真家によるエッセイ。プラハの街に魅せられ、アトリエを持つ。共産党時代からの街の変遷をレンズを通して見てきたことになる。盟友である現地のカメラマンとの交流。尊敬する先人へのオマージュも。内容の濃い硬質な文章で読破に時間を要した。沢木氏の推…

語前語後

エッセイ集。数学系の雑誌への連載。Volemeは毎回違うようだ。世相を斬り、芸術を語る。ユーモアも忘れない。著者の主張は極めて常識的で、ともすれば行き過ぎてしまう世間にブレーキをかけるスタンス。納得感はある。巻末は数学者森毅氏との対談。いずれも…

目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

全盲の白鳥さんとのアート鑑賞貴。健常者が美術をまえに見た印象を会話することで、想像を膨らますようだ。面白い体験記が続くが、テーマは意外と統一性がなく、芸術論から優勢主義や差別の問題まで幅ひろく広がる。つきつめれば求められるのは人間同士の関…

21匹のネコがざっくり教えるアート史

タイトル通りの内容。古代エジプトから現代美術まで、猫たちが代表作のモデルになり、その特徴を語る。まずは予想通りの内容だが、著者は英国人アーチストなので、近現代ではあまり知られていない区分けもある。まあ愉しめました。 21匹のネコがさっくり教え…

蔦重の教え

江戸中期の吉原にタイムスリップした主人公。出会ったのは蔦屋重三郎と喜多川歌麿。辣腕プロデユーサーでありながら、人情味あふれる蔦重の魅力に引き込まれていく。真面目に働き、浮世絵の制作過程を見るうちに、これまでの人生を見つめ直す契機となる。し…

岸辺露伴ルーヴルへ行く

映画のノベライズ。売れっ子漫画家の主人公が、謎の漆黒の絵画に挑む。若い時の自身の謎の美女との経験も絡む。最後はホラーサスペンス仕立て。まあエンタメとしては楽しめるレベル。 映画ノベライズ 岸辺露伴 ルーヴルへ行く (集英社オレンジ文庫) 作者:北…

マチスのみかた

画家である著者のマチスへの想い。戦前のニースやパリで巨匠を訪ねた時の思い出が繰り返し語られる。マチスの制作はしっかりしたデッサンが基本でそこから余計なものをそぎ落とし簡略化していく手法。デッサンは何枚にもおよび、油彩に入ってからも書き直し…

誰も知らないジブリアニメの世界

著者による宮崎アニメの解析。子供向けファンタジーの前半、ファミリー志向となった中盤、魔女の宅急便から興業的には成功する。後半は私小説的な要素が強まり、解釈が難しくなる。基本的に宮崎ワールドには好意的。一般に知られていない裏話も満載で愉しく…

岡本太郎の見た日本

思想家でもあった岡本太郎の一面をその著作からひも解く。キーとなるのは戦後に書かれた三部作。パリ留学、中国への出征を経て、日本各地を訪ね民俗学的なフィールドワークの産物。縄文、東北、沖縄、韓国と原始宗教と結びつく日本文化のルーツを探る。東北…

画家とモデル

タイトル通り、残された作品を題材に、画家とモデルのエピソードを18篇にまとめる。ゴヤやモディニアーニなどの有名どころと、意外と知られていない画家までを紹介。どうしても男女の関係をイメージするが、それぞれの愛憎劇は後の類推の部分が多い。死後…

災厄の絵画史

天災、戦争、疫病と人類を苛む惨事に向き合った画家たちを作品を通じて紹介。「怖い絵」シリーズの著者の得意とする分野。絵画史に精通し、歴史と社会背景を語る。文章は短め、図録は大判で一気に読めた。新書版では限界があるので名画はネットでチェック。…

ディック・ブルーナ

ミッフィーの産みの親であるオランダの絵本作家ブルーナの評伝。極限までシンプル化されたデザインで全世界の子供たちに愛される。資産家の出版社の家庭に生まれる。ナチスの時代は地下に潜る。厳格な実業家の父親と衝突し、芸術の道へ。多数の本の表紙を手…

Secret Knowledge

西洋絵画史の研究書。15世紀頃から、すべての画風が一新される。明暗のコントラストが強調され、写実性が増し写真のような表現。カラバッジョに代表される。これは光学機器が使われたであろうとの著者の仮説。カメラオブスターラ。豊富な実例を示すことで…

CONTACT ART

美術紀行文。各地の美術館を訪れ、代表的な作品を紹介する。アートは作者と我々鑑賞者がいて、その関係性で初めて成立する。難しく考えることはなく、まずは接して感じることを推奨。文章は簡潔で短め、口絵はカラーで美しい。地方の美術館が多く紹介されて…

いい絵だな

イラストレーター二人による対談。それぞれの美術遍歴を披露し、鑑賞のための手引を探る。明治初頭の高橋由一から始め、現代美術まで実物も多く図録で紹介されわかりやすい構成。要は世の評価に左右されず、自分の目で絵に接することが重要との結論。たとえ…

美術の物語

古代からポストモダンまで美術史を俯瞰する大著。この分野では圧倒的に支持されるバイブル的な存在。美術の流れを時代別に追う。建築、絵画、彫刻の分野を網羅。美術が過去を参考にしつつ、新しい流れに乗り発展していった変遷が良く理解できる。有名な作例…

長寿と画家

東西の著名な画家の代表作と遺作を通じて、その生涯と芸術性を解明する。文章は適度な長さで印象的なエピソードを紹介。図版も良いがもう少し点数が欲しいところ。画家たちに共通するのは年齢とともに衰える肉体、特に視力の低下に苦しみながら最後まで求め…

円空を旅する

売れっ子漫画家である著者が、円空仏を訪ねる。生誕地岐阜を起点に、東北、北海道、三重志摩、愛知と巡り、終焉の地岐阜に戻る。円空の作順とも合致し、作風の変化を追う旅でもある。徹底したデフォルメと簡易化、それでいて人の心に寄りそう諸仏は、心温ま…

遊戯神通

絵師若冲を題材にした歴史小説。明治期にその子孫である芸妓がいたことからストーリを展開。生涯独身であった若冲に妻と子供の存在を見る。主人公はこちらは末弟の妻となる美形の女性。末弟は実は若冲の実子なのだが、若くして謎の死を遂げる。ヒロインは若…

アートの島犬島へ

岡山の小島犬島。かっては銅精錬所があり栄えたが、戦後は衰退の一途。福武財団によりアートの島としてよみがえる。精錬所は美術館に、古民家は再建してギャラリーとする。瀬戸内美術蔡ではおおくの観客が集まる。著者は港で商店を経営しながら、島の情報を…

妄想美術館

西洋絵画を中心とした美術ネタの対談。放談に近い。それぞれの好みの画家や作品を披露。それにまつわる美術遍歴や想いを語る。原田氏は印象派、ヤマザキ氏はイタリアルネッサンスがお好み。後者には知らない画家も多い。主たる作品はカラー図版で示され読み…

興福寺の365日

エッセイ。堂宇や寺宝の写真とで構成される。著者は現役の興福寺執事。管理室長として日頃の経営や美術展に携わる。最大のイベントは中金堂の再建。寺の内側から見た修行や布教の状況。信仰と観光経営のバランス。文章は簡潔で歯切れは良い。清々しい読後感…

空をゆく巨人

中国出身の現代美術家、蔡國強と彼を強力に支える地元の人々の物語。中心となるのは実業家の志賀忠重氏。かなりユニークな人物で事業では成功しているのは実力の証。蔡氏の作品のためにチームを率いて世界各地にかえつける。代表作は火薬絵と廃船を使ったオ…

星落ちてなお

異彩の絵師、河鍋暁斎の娘である河鍋暁翠が主人公。5歳から父の英才教育を受けるが、画鬼と称される父親を乗り越えることが出来ず苦しむ。明治から大正、大きく変わる時代と画壇を背景に、同じく画家である兄やパトロンその周囲を取り巻く人間関係も丹念に…

愛のぬけがら

画家ムンクの生涯にわたるテキストを紹介。代表的な絵画作品をカラーで掲載。膨大な文章が残されているそうだが、神経症に悩まされていることや、新たな作風に対する世間の批評への反論が目に付く。お勉強をかねて基本英語で読んだが、これ自体が訳文。まあ…