時代は昭和初期。深窓の令嬢とその女性運転手がミステリーに挑む。連作形式。謎解き自体よりも、押し寄せる軍国主義のムードに毅然として立ち向かう精神が一服の清涼剤。蟷螂の斧と言われればそれまでだが。雰囲気はいい出来だが期待ほどではない。玻璃の天…

その名の通りの軍人録。データ数多く内容は薄い。仕方ないのだがよく知られた戦史や歴史上の事実は重複も多い。唯一の収穫は出自が記されていること。特に明治の軍人は、旧武家の出身が多くまた、養子が目立つ。C68647都道府県「日本陸海軍」人物ファイル (P…

夏休みの高校生。友人の告白に触発され、それぞれ事情と過去を抱えた親友の二人が死を目撃したいと望むようになる。舞台は老人ホームと小児病棟。意外なところで登場人物たちが複雑に絡み合う見事な構成。少女達のもつ純粋さとその裏返しの残酷さ。二人は友…

著者は国交省で航空行政を担当。羽田空港を実例にあげて、航空管制の実態を開設する。増便は単純に滑走路の本数にひれいしないことが、丁寧に説明される。一般向きに平易に書かれているので、マニアの方にはややものたりないだろう。逆に関西や中部は余力が…

戯作者を目指す主人公が、ネタとして紀伊国屋文左衛門の出自を探るうち、紀州藩のみならず江戸幕府を揺るがすような大事件に巻き込まれる。根源は将軍の後継争い。作者得意の分野のはずだが、あまりに人間関係が入り乱れすぎて、ストーリーがすっと入ってこ…

仕事がぽっかり空いたので夕方鑑賞。マネはどちらかと言えばやや個人的な趣味から外れているが、肖像画の完成度はさすが。中でも女流画家でもあるベルトモリゾは印象的で人物が際だっている。看板になるだけのことはある。静物も悪くない。新装なった三菱一…

名作。１７歳の女子高生が２５年間をタイムスキップし、４２歳の自身の中へ。同じ年の娘を持つ高校教師だった。あり得ない自体にとまどいながらも正面から向き合う本人のけなげさと夫君と娘の理解と優しさ。一方で高校教師として生徒達の成長を見守る立場。…

東映への就職を決めた著者が、女一人でスペインからモロッコを旅する。女性ならではの困難。イスラム世界で強引な男たちに遭遇する。日本人、外国人それに現地の人々とすぐにうち解けるのは若さの特権か。圧巻は砂漠への徒歩旅行。雨が降り凍死の危険さへあ…

早稲田の探検部出身の著者が、世界の辺境をめぐった爆笑エピソード集。漫画雑誌の連載でありやや軟派な内容。正直楽しめたが本格的な紀行文を期待していると物足りない導入編。世界のシワに夢を見ろ! (小学館文庫)作者: 高野秀行出版社/メーカー: 小学館発売…

中場流の新撰組青春期。創設から池田屋事件まで。歴史好きにはよく知られたエピソードに別の視点からスポットをあてる。主役の土方も沖田も喧嘩好きな手のつけられない乱暴者（バラガキ）として描かれる。やがて土方は人間的魅力のある近藤を担ぎ時代の一方…

「マグロ」の第一人者である著者が、資源枯渇がさけばれる最新事情にせまる。漁業関係から流通、消費者までと世界各地に及ぶ丹念な取材。縦割りの分業化が全体像を見えにくくしている。延縄は環境にやさしい漁法であり、ねこそぎ取るのは巻き網漁法。三菱商…

赤塚不二夫の自叙伝。大半は子供時代を過ごした満州の想い出にさかれる。警察官であった父親は公正な生き方が、中国人を惹きつけ戦後の混乱期も家族は無事に帰国することができた。父親の筋の通った生き方はバカボンのパパのモデルとなる。戦後も赤貧の生活…

江戸時代初期に改暦を成し遂げた渋川春海の描く。碁打ちでありながら数学の才能に恵まれ名君保科正之の指名で大事業に取り組む。数学者関孝和との算額論戦での不名誉な誤出題。日蝕を読み違えた大失態を乗り越え、２０数年の宿願を果たす。その陰には多くの…

１９人の作家による超短編集。最近の受賞作家ばかりなので力量は保証付き。ウィットや独特の感性にに感心させられたりほろりとさせられたり。ただ全体の印象としてはいまひとつ残るものがない。495スタートライン―始まりをめぐる19の物語 (幻冬舎文庫)作者: …

東北の寒村。村おこしに立ちあがった青年団と弱小広告代理店の取った手段は、幻の恐竜の出現。巧みな構成とテンポの良さ。風刺も効いて笑わせる。デビュー作と思えない完成度の高さは作者の力量。475オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)作者: 荻原浩出版社/メ…

舞台は冷戦終結前後のベルリンと小樽。ココム疑惑を隠蔽するため処分されかけ東独に亡命した企業戦士の復讐劇が始まる。スピーディーな展開と登場人物の書きわけはさすがだが、やや設定には無理があり、謎解きもみうひとつ。文庫は再販だが原作はさすがに少…