2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

楽園のカンヴァス

美術ミステリー。稀代のコレクターに招かれた日米の美術研究者。その前に示されたのはMOMAのルソーの「夢」にそっくりの作品と謂われを書いた秘密の書。一日に一章ずつの閲覧を許され、最終日に真贋を判断する。途中でピカソが絡んでくる。青の時代の幻の作…

リーダーシップ

危機に臨む理想のリーダーを歴史から考察する。鳩山、管の両首相を徹底的に批判した後に、保科正俊、吉田松陰、山口多聞を理想像として賞賛する。キーは副題にあるように大局観と胆力。教育論としては文武両道を推奨。机上の空論でなく、実行力の伴うリーダ…

セザンヌ展

時間が空いたので開催2日目のセザンヌ展へ。副題はパリとプロバンス。若い頃から最晩年までを時系列で追いながら、パリと南仏を往復した画家の人生を追う。予想通り風景画と静物画がメインだが、自画像を代表とする肖像画も良い。粒ぞろいの作品の中でオル…

撤退の本質

共著。軍事と経営を結びつけ、撤退の困難さを論じる。8章立てであるが、軍事面はいずれも有名な史実で目新しさは乏しい。その中で旅順の乃木将軍は合理的な戦法を取っており、攻撃目標の選定は大本営に責任があるとする。日本陸軍の最大の失敗は日露戦争の…

僕のお父さんは東電の社員です。

毎日小学生新聞に送られた一通の手紙。ここから福島原発事故について子供達だけでなく大人をまきこんだ議論が展開される。さすがに小学4年生あたりの意見は少し幼いが、高学年や中高生は問題の本質をとらえている。地震国である日本になぜ世界第3位の数の…

この命義に捧ぐ

根本陸軍中将の生き様を描くノンフィクション。終戦時の駐蒙司令官であったが、命に反してソ連による武装解除を拒否して抗戦。居留民の脱出時間を稼いだ。このときの国民政府への恩義を果たすため占領下の命がけで日本からポンポン船で台湾へ密航。軍事顧問…

天使の報酬

外交官黒田シリーズ。アマルフィの続編。舞台はサンフランシスコから東京へ。誘拐とテロ。背後には南米ボリビアでのガス利権と米系製薬会社の人体実験。盛りだくさんの展開だが、最後は出来の悪い息子をかばう政治家と厚生官僚のオチ。出世と保身からそれに…

ユベール・ロベール展

上野、西洋美術館で鑑賞。18世紀フランス人の風景画家だがイタリア留学中に感得した遺跡をモチーフとした作品がほとんど。作風は極めてオーソドックス。赤チョークの素描サンギーヌはなかなか印象的だが、油絵になると今ひとつ。色使いが少し派手なせいか…

8月17日ソ連軍上陸す

歴史ノンフィクション。終戦後すぐソ連軍が上陸した千島最北端の占守島。3日間にわたり物量に勝る敵軍に敢然と立ち向かった日本陸軍。戦車連隊を率いた池田連隊長の壮絶な戦死。軍使に出された若い大尉の決死行。大量の史料を元にまとめているが、記録には…

なでしこ力

「ぢから」と読ませる。時期的には監督就任からワールドカップ予選まで。大胆なシステムの変更と澤のボランチ起用と、戦略を変更する一方で、選手の自主性を重んじるチーム運営で、日本女子を世界の強豪に押し上げた。控えや裏方さんにも気を配る。試合内容…

勝ち続ける経営

日本マクドナルドをV字回復させた著者の講演がベース。経営手法は極めて王道。本業を大事にし、地道な改革を進める。意識改革はトップから発信し、いかに組織に浸透させるかはコミュニケーション力。短期的な利益が減少しても、店舗削減を進め、逆に効率を…

折れた竜骨

中世北海の孤島が舞台がミステリー。バイキングとの決戦を目前に領主が何者かに殺害される。東方の騎士とその弟子が残された姫君と協力して犯人を特定する。魔術有り、密室有りで盛りだくさん。最後には期待通りどんでん返しもあり。ある意味でオーソドック…

ジャクソンポロック展

竹橋で鑑賞。時代順の構成で所期の具象から1950年のピーク。晩年期とわかりやすい流れになっている。海外からは出展に加え、国内の作品はすべて集めたという力の入れよう。やはり圧巻は絶頂期の大作。観れば観るほど色彩が際だち、様々な印象を与える。…

しあわせのパン

北海道の湖畔にある不思議なカフェ。若いカップルが経営し、天然酵母のパンと深煎りのコーヒーが旨い。東京で失恋したOL、両親が離婚した少女。妻の死期が迫った老夫婦がそれぞれ立ち寄り救われる。最終章でカップルの出会いと恋愛が進行形で語られ、ハッ…

電車屋アカギ

京急をモデルとした神奈川電鉄。その保全工場が舞台。伝説の職人であるアカギと彼を取り巻く人間たちのドラマ。引きこもりや不良少年がやがて電車屋として成長していく。旧型車両が次々廃止される中でリストラの対象となる工員たち。本隊と下請けとの力関係…

鉄道旅へ行って来ます

鉄ちゃん文士3人による鼎談。実際には原氏が計画し、車内や旅先で鉄道談義に花が咲く。八高線の分岐に人生を感じたり、北陸線の駅そばを食べ歩いたりと、マニアとは一歩違う企画が興味深い。それぞれのアプローチは異なるが、鉄道に対する想いはひしひし伝…

連合艦隊戦艦12隻を検証する

戦前戦後の軍艦マニアを自称する座談会形式で旧日本海軍の戦艦の戦歴を検証する。基本的には海軍マニアであれば常識の話だが、たまに面白いエピソードが出てくる。好戦的な記述が目立つが、好きな軍艦には活躍して欲しかったという思いがあふれる。温存主義…

ザッケローニの哲学

自伝。少年時代からイタリアでセリアAの監督としての成功までを簡潔に綴る。年代で言えば98年まで。選手としては病のため大成せず、地方の弱小チームからコーチを始める。収入は少なく副業として保険業に従事していた。成果を評価されつぎつぎビックネー…

商いのコツは「儲」という字に隠されている。

首都圏で立ち食いそばチェーン富士そば経営する著者が伝える経営のコツ。50項目にまとめられる、初めての24時間営業。通行人の服装の色による立地の選択。毎年15%のメニューの更新と長年の経験と勘でユニークな経営手法が紹介される。内容的には極め…

日中もし戦わば

日米中の論客による座談会。最近の中国の東アジアにおける覇権主義が争点。軍事衝突のリスクとして尖閣、朝鮮半島、台湾問題をあげる。中国の軍事拡張はアメリカに対する防衛的な色彩が強く、また内政の安定が最重要課題で、対外的に積極的な攻勢に出る意図…

なぜ阪神は勝てないのか

江夏と岡田、ともに阪神を愛するOB二人の共著。対談を中心に構成される。2009年のシーズン中の著作なので真弓監督への批判が多くなるのは仕方がない。指揮官として主力選手への気配りが足りないのではないかとのこと。時として起用は冷酷であることはやむを…

あなたは誰?私はここにいる。

著者が自らの美術遍歴を語る一冊。悩み多き青年時代に出会ったデューラーの自画像に啓発され、自分の存在意義を見いだしたとする。突き詰めて言えば芸術作品は作者のアイデンティティの追求であり、それに感応するところに観る側の価値がある。全般に形而上…

訣別

平成維新での提言から20年。日本は何もせず著者の予想通り泥沼につかりもがき苦しんでいる。本書でいうところの訣別とは、幕藩、明治、戦後の3体制からの脱却を意味する。政局に熱中する政治家とマスコミ、権限の保持と前例のみに執着する官僚に厳しい批…

黄金の丘で君と転げまわりたいのだ

三浦しをんがその飲み仲間と丁稚役になり、岡元先生の元に弟子入りする。毎回ワインを楽しみながら基礎から学習していくスタイル。知識先行でなく実践優先。賑やかでコミカルな集まりが続く。傾向として自然派ワインが好まれているようだが、その選択はショ…

河北新報のいちばん長い日

大震災に直撃された仙台を本拠地とする河北新報。本書は震災当日からのメデイアとしての苦闘の記録である。当日から新潟新報との災害協定を活かして号外を出し、翌日も途絶えることなく発行を続けた。これは地元紙としての使命感に支えられた部分が大きい。…

チア男子

大学一年の親友二人。柔道を断念したハルキと今は家族のために無き両親の想いを繋ぎたい一馬。彼らの呼びかけに応えた7人がやがて16人になり、全国大会に挑む。それぞれの個性を明確にしつつも16人の書き分けはさすがに難しいようで、練習ノートと最終…

私の愛した巨人

完全な便乗本。種本は2006年からの「ベースボール」に連載したエッセイ。球団社長としてチーム運営と選手育成に勤しんだ時代のもの。新聞記者だけに文章力と構成力は流石ではあるが、現在の時事ネタからに絡むのは前書きのみ。これを購入して読んだ人は…