歴史

聖地旅順と帝国の半世紀

日露戦争から、太平洋戦争まで、激動の歴史を旅順、大連に視点を当てて描く。三国干渉によりロシアの租借地となり、激戦を経て日本の統治下に、21箇条の要求で火事場泥棒的に租借を延長。中国人民の反感を買う。日本人にとってはある意味聖地となるが、時…

絵はがきで楽しむ歴史散歩

明治から戦前にかけての絵葉書を紹介し、世相や歴史を振り返る。建築物が多いが、戦争や震災など事件を扱ったものも多い。ある意味ひとつの有力なメディアだったのあろう。著者のコレクションから紹介。図像も鮮明でなかなか愉しい。ほかにも世界にはすごい…

はじめから国宝なんてないのだ

日本美術への誘い。美術館のガラスケースの中ではなく、デジタル再生した制作当時のもとの姿を鑑賞する「賞道」を提唱。鑑賞にルールは無く個人の見立てが重要。知識に惑わされない姿勢。絵巻物はアニメーションの原点であると強調。各編の導入にはマンガを…

鞍馬天狗のおじさんは

戦前の大スター嵐寛寿郎の想い出語りを、ルポライター竹中氏がまとめた大作。時代劇、チャンバラ映画の全盛期。興業的には成功であるが、芸術的には一段低く見られ評価されてこなかった。各スターが独自のプロダクションを設立するも、映画業界の資本の論理…

密航のち洗濯

戦中戦後を生きた朝鮮人の小説家。彼の残した作品と日記から、家族の運命を探るルポ。終戦直後の北からの逃避行、米軍占領下の日本への密航。最愛の妻を残して単身泳いで上陸する。日本人と再婚し東京でクリーニング店を営むが、絶えず差別と貧しさとの戦い…

一日一文

古今東西の名著を365日分紹介する。範囲は哲学から詩歌まで幅広い。有名どころはほぼ網羅されているが、非常に短い引用なので、逆に主張がわかりにくい。スタンプラリーのお供で読破。 一日一文 英知のことば (岩波文庫) 岩波書店 Amazon

人物名鑑古今東西いま関西

古今東西の人物短評。著者の専門から思想史、哲学史にページを割く。タイトルにある関西部分は冒頭の第一章だけ。哲学、古代ローマ史についてはこちらの知らない人物が多く、イメージがついて行かない。教養不足を露呈する結果に。読破は正直しんどかった。…

敗軍の名将

太平洋戦争。戦後生まれの著者が悲惨な戦場から4人の名将の戦いぶりを描いたノンフィクション。インパール作戦の佐藤、宮崎、沖縄戦の八原参謀、海軍芙蓉航空隊の美濃部。理不尽な大本営や上層部の命令に反してでも、合理的な自らの理想を貫く。ただその正…

少年空海アインシュタイン時空を超える

科学系SF。空海と観音菩薩が、博士(ホーキンスがモデル)の導きで時空を旅し、物理学の歴史をたどる。それぞれエポックメーキングな発見の瞬間に立ち会う。地球上のことはニュートン力学で証明できるが、宇宙のことは相対性理論が必要。毎回のことだが、後…

化け込み婦人記者奮闘記

明治から戦前にかけて、婦人記者の潜入取材を描く。女性の地位が低く、また記者の立場も決して高くない時代。部数獲得のために社会の下層実相を描く。読者は興味本位であり、あまり本質に迫るルポにはならない。若い女性にはどこでも芸者やその筋への勧誘が…

信長の正体

歴史学上の信長の位置づけを論じる一冊。多角的に史実を積み上げて解析する。戦国時代を終わらせるために時代が要求して出現した変革者との結論。きわめてアカデミックな解析で興味深い。信長だけでなく古代からの日本史の流れをおさらいする。短いが幸著で…

世界を動かした名演説

タイトル通り歴史に残る名演説15編を紹介する。世界情勢を池上氏が、英語表現のレトリックをパックンが解説する。いかに聴衆を引き付け、共感を呼ぶかが最大のポイント。どれも素晴らしいが、レーガンの話術は高評価。最後の女性3人もインパクトが強い。…

ナポレオン街道

稀代の英雄の足跡を訪ねる紀行文。生誕の地コルシカ島からパリ、イタリア、エジプトと巡る。行く先々で無頼派らしくギャンブルと酒に興じる。それも旅情を掻き立てて良い。ナポレオンにまつわる書物は30万冊を超えるという。軍事的才能は言うに及ばず非常に…

蔦重の教え

江戸中期の吉原にタイムスリップした主人公。出会ったのは蔦屋重三郎と喜多川歌麿。辣腕プロデユーサーでありながら、人情味あふれる蔦重の魅力に引き込まれていく。真面目に働き、浮世絵の制作過程を見るうちに、これまでの人生を見つめ直す契機となる。し…

硫黄島上陸

太平洋戦争最後の激戦地硫黄島。軍事基地として一般人の上陸は原則禁止。戦死率95%の島にはなお一万以上の遺骨が眠る。著者は新聞記者でありながら自発的に収集団に参加。その現状と謎の解明を本書に託する。様々な神話があるが、外務防衛筋のアメリカに…

言い訳するブッダ

仏教経典の中の、矛盾を「言い訳」としてユーモアたっぷりに解説。ブッタの時代の初期から、現代の各宗派に至るまで、普通では解説できないところに辻褄合わせを行う。著者は浄土宗の僧で高名な仏典の研究者であるが、初心者向けに平易に解説。好感が持てる…

ガリレオの求職活動、ニュートンの家計簿

コペルニクスからニュートンまで、ルネッサンス以降の科学者の生活面に光を当てる。一言で言えば、パトロンの時代から近代的な研修組織への変遷。その偉大な科学的業績から、高邁な人格者であるように思われがちだが、それぞれに生々しい私生活がある。性格…

政宗の遺言

伊達政宗の最期を新米小姓の視点で描く歴史ミステリー。江戸に上がり、人生最後の仕上げを進める戦国の英雄と、その半生を語り部が伝えていく構成。謀略に優れ版図を広げるが、秀吉や家康には常に謀反を疑われ、機知で乗り切ってきた。最後にどんでん返しも…

2035年の世界地図

世界の知性と呼ばれる4人が、コロナパンデミック、ウクライナ侵攻で揺れ動く世界を展望する。副題にあるように民主主義と資本主義の未来。総じて楽観的で、一時的な後退はあるにせよ、終結後はグローバル化が進展すると予測。西欧的な見方がベースとなるが…

南風に乗る

沖縄の戦後史を描く歴史小説。主人公は二人、詩人の山之口獏氏と政治家の瀬長亀次郎氏。日本の講和条約から切り離され、長く続く米軍の占領統治の実態。日本人を見下した植民地感覚。沖縄の民衆の苦しみは本土には届かずやがて不満は爆発する。72年の復帰…

文豪社長になる

作家菊池寛の生涯を描いた小説。流行作家から「文芸春秋」を創刊。社長を兼務しやがて近代的な出版社に育て上げる。もっとも経営者としては不適で、信じていた部下に横領され、倒産寸前の危機を迎える。戦中は軍の宣伝に協力したことにより、戦後は公職追放…

災厄の絵画史

天災、戦争、疫病と人類を苛む惨事に向き合った画家たちを作品を通じて紹介。「怖い絵」シリーズの著者の得意とする分野。絵画史に精通し、歴史と社会背景を語る。文章は短め、図録は大判で一気に読めた。新書版では限界があるので名画はネットでチェック。…

流人道中記

不義密通の罪で、松前藩預かりとなった旗本とそれを護送する下級ご家人の与力の道中記。江戸から三厩まで。罪人でありながらさばけた旗本と生真面目な与力のやりとりが愉しい。予想通り道中でさまざまな事件に巻き込まれながら、人情味あふれた解決を産んで…

見果てぬ王道

中国の革命の父、孫文とそれを支えた日本人実業家梅屋庄吉の交流を描く歴史小説。梅屋の方は正直あまり知られていない。長崎出身だが若い時から海外雄飛。写真館と映画興行で財をなす。欧米に虐げられるアジアの人民を救うべく、物心両面の援助を生涯続ける…

11人の考える日本人

近代日本において思想の礎となった11人を取り上げる。その生涯と思想哲学のエッセンスを平易に紹介。錚々たるエリートの系譜。思想を紹介すると内容的にはどうしてもハード。特に時代が近くなるほど難易度は上がる。予想はしていたが。 -吉田松陰 教育の力…

伊藤忠

見事に商社のトップに躍り出た伊藤忠の経営の歴史。近江商人を発祥とし、繊維問屋から総合商社へ。高度成長の波に乗ろうと資源、石油精製に乗り出すが痛い目にあい、撤退。現在は生活関連に重点を置き、堅実に業績を伸ばす。歴代優秀な社長を生み出している…

天路の旅人

大戦末期の中国大陸。密偵としてモンゴル、チベットに赴いた若者。ラマ僧に扮し、現地に溶け込みながら長い旅路の末にチベットにたどり着く。終戦後もインドやネパールと修行の旅を続ける。社会の最下層に身をやつしながら、語学力と真面目な働きぶりはどこ…

銀河鉄道の父

宮沢賢治の父親政次郎が主人公。厳格な明治の父、古い商家のしきたりで本人は小学校卒。質屋を経営し財を成し、地元の名士である。5人の子供の父親として愛情にはあふれて、常に気にかけてはいるが、表には出さない。特に自由奔放な賢治とは折に触れて衝突…

ダビテの星をみつめて

ユダヤネットワークの力の根源を解析する。歴史上幾たび絶滅の危機を経験したユダヤ民族は、世界中で経済、政治をコントロールする。根本の行動原理は高付加価値主義と国際主義である。ソ連の崩壊に伴い、東欧から新たな移民がイスラエルに流れた。現在は、…

日中友好侵略史

国交正常化から50年。中国のしたたかな対日工作を明らかにする。文化大革命で疲弊した中国は必死で正常化を望み、台湾を国際社会から排斥した。本書のクライマックスは田中訪中と椎名訪台である。日本は性善説で初心であり、当時から軽くあしらわれている…