2020-01-01から1年間の記事一覧

教養としての投資

著者は農林中金のファンドマネージャー。バフェット流の株式長期保有を基本とする資産運用で成果をあげる。徹底した調査と仮設の検証。優良企業を選定する。繰り返されるのが参入障壁の有無と長期潮流。日本企業には手厳しい。投資というより経営面で参考に…

宇宙の覇者ベゾスVSマスク

今を時めく米のIT長者が宇宙開発に挑む。幼い頃アポロに触発された夢の実現。官僚化したNASAを反面教師とする。技術開発は容易ではなくなんども爆発や失敗に見舞われるが、めげないチャレンジャー精神。アプローチはウサギと亀に例えられるように両極端だが…

美意識の値段

著者はクリスティーズの日本法人代表。数々の美術品取引を手掛ける。父親の影響もあり、若い頃から日本美術の知識を詰め込まれる。ビジネスではなく美術品を継承していくことの重要性を強調。オークションの裏側を描く前半が特に興味深い。後半の日本美術の…

言葉が暴走する時代の処世術

ユニークな対談。繰り返し強調されるのは直接対面しての会話の重要性。言葉と文字は違う。SNS、IT万能の時代に警鐘を鳴らす。山際教授の霊長学、人類学の蘊蓄をわかりやすく引き出す太田氏は見事。 -ゴリラは戦わないが、負けない -ゴリラと人間の違いは問い…

#ゴミ捨てろ

評判のSNSの書籍化。どうしてもゴミを捨てられない夫の所業を、画像でアップ。フォロワーを獲得した。九州弁丸出しで微笑ましい夫婦の生活を描写し笑わせる。まあいろんな人がいるものだ。軽めの娯楽本。 #ゴミ捨てろ うちの旦那はティッシュをゴミ箱に捨て…

美しき愚かものたちのタブロー

松方コレクションを題材にしたフィクション。幸次郎による収集、戦中の疎開、戦後の返還交渉と数奇な運命をたどった稀代の名画たち。日本の美術の発展を願い、死命をかけて守り抜いた人々を描く。会話が多く引き込まれるが、少し欲張りすぎで焦点がぼけた感…

自衛隊は市街戦を戦えるか

長年ソ連を仮想的としてきた陸自は、対テロ戦略等の現代の戦争に備え、新しい体制に組み替える必要がある。著者は連隊長として率先して市街戦訓練を導入。装備や戦略はもちろんだが、まずその組織に染み付いた病理を克服する必要を説く。旧軍の悪弊を引継ぎ…

勿忘草の咲く町で

安曇野の地方病院。風貌は冴えないが真正直な研修医と一本気で溌剌とした看護師の恋物語。周囲の登場人物もそれぞれ個性的。変曲点を迎えつつある老人医療、いかに終末と向き合うかの重いテーマである。花屋の息子である医師はその深い造詣で文字通り物語に…

スーツケースの半分は

連作集。幸せをよぶ青いスーツケース。30前の女友達四人がこれを持ち、それぞれ旅に出て、幸せや新しい生き方を見つける。さらに友人や元の持ち主、製作者まで話を展開。基本ほのぼの系だが、日ごろのしがらみに捕らわれず一歩を踏み出す勇気がテーマ。軽…

アノニム

ジャクソン・ポロックの未発見の大作をモチーフにする。香港でのオークションに出品され、盗賊団と義賊団のコンゲーム。現地の高校生カップルも交えてジェットコースター小説になっている。ポロックはピカソに憧れ、それを乗り越えるために新たな一歩を踏み…

異類婚姻譚

中短編集。日常や夫婦を題材にした不思議な作品が続く。標題作は平凡な夫婦がやがて顔が似ていき、蛇ボールの喩えのようにお互いに食い合うという奇譚。本作で芥川賞受賞。確かに引き込まれる内容だが簡単に主題は読み解けない。嫌いではないが微妙な評価。 …

ベストセラーで読み解く現代アメリカ

タイトル通り洋書の書評集。ベストセラーの要約が凝縮されなかなか面白かった。政治、人種、宗教から性問題と複雑なアメリカ社会の表裏が垣間見える。作者の立ち位置はかなりの左寄り。トランプ政権に厳しい。私にとって興味のある分野とそうでない分野があ…

参謀のホテル

企業小説。再建屋のプロが名門ホテルのGMとして、経営改革にあたる。外部からの素人経営者に抵抗は半端ではない。若手を中心に権限移譲を進め、モチベーションを高める。一方で借金返済にオーナーは売却話を進める。結局M&Aは経理担当の不正をごまかすための…

エンドオブライフ

末期がん患者の在宅治療と看取りをテーマにしたノンフィクション。主人公である看護師が自らすい臓がんを発症。本人は精神的に迷いながら家族や友人に囲まれ最期を迎える。著者の母も難病の末、父親の手厚い介護で旅立つ。人の生死の重いテーマに真正面から…

勝者の思考回路

著者は外食系のブランドプロデューサー。お嬢様から社長秘書を経て辣腕コンサルへと華麗な転身。派手な外見とは異なりしっかりした生き方を実践。実家の破産や厳しい留学体験が彼女の成功への思考回路を形作る。本書はそのエッセンスを述べる。基本は誠意を…

フラウの戦争論

戦争論の著者ででるクラウゼヴィッツの物語。プロセイン軍の参謀として、ナポレオン戦争を戦う。妻であるフラウは貴婦人であるが、夫の仕事に理解は無く夫婦仲は円満と言えない。一方の主役であるナポレオンは軍事的天才であり、圧倒的なカリスマで国民皆兵…

孤塁

震災ノンフィクション。3.11の激震から文字通り奮闘する地元消防の苦闘を描く。ほとんど報道されてないが、原発にも何度も出動。被爆の恐怖と闘いながら、使命感に突き動かされる。特攻という言葉が自然に使われる。自らの恐怖、家族への想い、いわれな…

あの絵のまえで

短編集。名画がキーになる家族や男女の物語。決して豊かでない人々が、それぞれに絆を確認し、幸せを見つける。主題としてはアートにはその力があるということ。全6作。巧みである。直島には行かなくては。 〈あの絵〉のまえで 作者:原田 マハ 発売日: 2020…

Yコンビネーター

シリコンバレーのスタートアップ養成スクールに密着取材。1クール90日、起業を目指す若者たちの奮闘を描く。ほとんどが有名大学の俊英。まずは入学審査が厳しい。最後のデモデーで投資家の前でプレゼン。起業にこぎつけるのは1割に満たない。今はネット…

世界の神様解剖図鑑

タイトル通り、世界中の神話の世界をイラストつきで解説する。日本、インド、ギリシャ、北欧がメイン。一神教の世界には存在しない分野。強調されるのは共通性。これはよく言われるところ。入門書として網羅的だが、一部の雑学の域を出ない。何かあったら調…

青い星までとんでいけ

SF短編集。ハードウエアの宇宙探索ものやライトノベル的な美少女恋愛ものもあり、バラエティには富む。エンタメとして十分楽しめたが、のめりこむほどではない。今後の読書領域にてSFをどうするか微妙なところ。 青い星まで飛んでいけ 作者:小川一水 発売…

絶滅の人類史

猿人類から現在の我々まで。人類の進化を科学的に辿る。700万年の間に多くの種が発生し絶命していった。生物考古学的な論争は数多いが大体の道筋は明らか。2足歩行の人類は、大きな脳を持つことができ、食物を運搬、共同社会で子育てをし、厳しい競争を生き…

FACTを基に日本を正しく読み解く方法

評論集。もとはWEBか。タイトル通り直近の社会問題をデータをもとに解説、自論を展開する。論調は右寄りで、現行の政策を擁護。対するマスコミや左側の政治家には手厳しい。データを見れば説得力はあるが、上から目線なのは財務官僚のキャリアのためか。 -川…

参謀の思考法

中堅時代秘書課長として、トップに使えファイアストンの買収を乗り切った著者が、参謀役の重要性を説く。原理原則に従い自律のロジックを持ち思想まで高め、結果を恐れずトップに諫言する。トップから見れば、裸の王様にならぬよう、信頼できる参謀役を置く…

邦人奪還

軍事IF小説。尖閣への中国侵攻排除、北朝鮮からの拉致被害者奪還と陸海の特殊部隊が大活躍する。元自衛官の著者ゆえにPRになるところはやむを得ないが、リアル感は十分。主題はむしろ法制上闘えない組織にある。日本政府とその背後にあるアメリカの戦略が垣…

超限戦

中国軍人が書いた軍事論。湾岸戦争の結果を色濃く反映するが、非軍事部門への展開を強く示唆。未来の戦争はサイバー空間や経済、メディア戦が主戦場になるとする。ハード技術だけでなく、思想の転換が必要。20年前なので未だ米中間には戦力差がある局面。…

火星の人

SF大作。アクシデントで火星に一人残された主人公が、自らの科学的知識でサバイバル。植物学者でエンジニアの経験を活かす。何より活力は明日を信じることと切り替えの早さ。最後は残りのクルーが身を挺して救出にあたる。評判に違わぬ秀作だが、少し長す…

バッタを倒しにアフリカへ

昆虫学者を目指すポスドクが、アフリカモーリタニアでフィールドワーク。大量発生するバッタのメカニズムを探り、撲滅へのヒントを探る。異文化の中での研究生活の実態が面白おかしく描かれる。京大の白眉研究者に選ばれるなどユニークで優秀なのだが、肝心…

太平洋食堂

主人公大石誠之助は、明治時代の新宮の義人。医師であり、海外に見聞を広め、藩閥政治、特に貧富の差に疑問を抱く。一方東京には英才幸徳秋水あり。卓抜した理論と文章力で主義者のカリスマとなる。いずれも喧伝されるような急進主義者ではなく、今で言えば…

帝国ホテル厨房物語

帝国ホテルの総料理長ムッシュ村上シェフの自叙伝。幼くして両親を亡くし、ガキ大将は料理の世界へ。下積みから憧れの帝国ホテルの厨房へ。出征、シベリア抑留も経験。どんな環境でも料理の腕とリーダーシップで前向きに生きる。復帰後は若くしてヨーロッパ…