アヒルと鴨のコインロッカー

初めて著者の作品に接するが、予想以上に良かった。東北大に入学した新入生が、アパートの隣人に頼まれ本屋に強盗に入るという奇抜な書き出し。物語は現在とその遠因となった2年前のペット虐待事件を織り交ぜながら、淡々とスピィーディーに進展する。登場人物の描き込みも見事で、お気に入りはペットショップの無表情美人オーナー。会話主体の組み立てだが機知に富んだやりとりで楽しめる。実は登場人物の入れ替えという大トリックがあるのだが、これには正直驚かされた。アヒルと鴨は日本人とアジア人の微妙な関係を象徴する。ミステリーの範疇にされているが、叙情文学として評価したい。今後に期待し甘めながらA評価を進呈。

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)