戦艦「大和」暗号士の終戦。

慶応大を繰り上げ卒業後、海軍の短期現役士官として戦艦大和の通信士となった小島少尉の戦記。レイテ沖の大和では通信員として機密を知る立場にあり、またそれがために帰還後、機密封鎖のために送り込まれたフィリピンルソン島で陸戦に投入される。最後には死を賭して投降することで米軍に命を救われる。レイテでのの反転は、つきつめて言えば極限状態における司令部の「退却」であり、多くの謎はそれを隠蔽するために、記録が改竄されたことにより発生しているとする。主題はむしろ後半のルソン山中の悲惨な体験であり、これはすでに戦闘でなく虐殺からの逃避行である。地獄では兵士達は簡単に死んでいき、軍律もまったく通じない。あらためて戦争の無意味さを大いに考えさせられた1冊であった。