砦無き者

破線のマリス」につぐTV報道局を舞台にしたミステリー。マスコミとしてどこまで先入観なしに真実を伝えることが許されるかが命題。若手ディレクターが事件報道で活躍する前編を導入部に続き、恋人が過剰報道のため自殺したとする青年が引きこもりの若者たちのカリスマとなっていく後半に一気に読者を引き込む。ディレクターはカリスマの過去を探り、すべてが計算された虚像であることをあばこうとする。後半の大がかりな設定はやや現実離れに過ぎる気はするが、TVの持つ影響力、洗脳力に警鐘をならす。結末は意外だが、カリスマの遺言書で再度主張をしたかったのだろう。楽しめましたがB判定。

砦なき者 (講談社文庫)

砦なき者 (講談社文庫)