2013-01-01から1年間の記事一覧

ゼツメツ少年

いじめに悩む小中学生の3人組が家出を目論む。それぞれ事情はあるが、家庭にも学校にも居場所の無い彼らはゼツメツの危機に瀕しており、著者の分身である作家に救いを求める手紙を出す。物語の中で過去の代表作の主人公たちが助けに来るが、苦しみを和らげ…

言える化

アイスクリーム専業の赤城乳業。ガリガリ君を軸として「強小企業」として躍進する原動力を探る。すべてにおいてオープンな組織で、若手にも発言の機会を与える「言える化」は、階層の薄い縦軸と、委員会組織の横軸で構成される。何よりもカリスマ社長の社員…

藝人春秋

たけし軍団の一人である著者が、芸人たちの身上と心情に迫ったノンフクション。決して超一流ではないが有名どころの笑いに対する矜恃を描く。身内に不幸やどんな事情があっても舞台に立てば、明るく笑いを取るところはまさにプロ。石倉三郎、稲川淳二のエピ…

犬の伊勢参り

江戸時代には単独で伊勢参りを果たした犬が多数いた。にわかに信じがたい事実を著者は丹念な文献調査で解明する。何かの事情で主人の代参として郷里を出た犬は、宿場ごとに申し送られ伊勢へ送り届けられる。神への信仰と恐れのなせる技であるが、共同体とし…

犬から聞いた素敵な話

14編の短編集。半分は飼主からの残りは飼犬からの視点で描かれる。いずれも人と犬との深い絆を描き、パートナーとしての存在価値を再認識させられる。悲しい時、苦しい時ほど癒してくれる人が大好きな犬たちに感謝。有りがちなエピソードではあるが、全く…

クロネコの恩返し

東日本大震災の直後から、ヤマト運輸が始めた寄付活動。宅急便1個につき、10円を寄付するというアイディアだが、実に年間利益の4割をつぎ込む英断。対象を産業や医療の復興に絞り、スピードと実効性を重視した。選定にはROIを評価するなどまさに民間の発…

破綻

突然破綻し長瀬に買収されたバイオ企業の雄林原。社長の実弟で専務の著者が一連の破綻劇の真相を激白する。帳簿上のミスをつかれ、銀行団主導で行われた更生処理。経営権は剥奪され、個人資産も弁済にあてられた。黒幕は不明だが、個人経営の優良企業が狙わ…

民主党政権失敗の検証

シンクタンクによる研究書。議員にアンケートやインタビューを行い政治の実像に迫る。改革勢力として風に乗り政権交代を果たしたものの頓挫した3年3ヶ月を検証する。選挙用のマニュフェストで美辞麗句を並べ、それが実現できず批判にさらされた。3代の総…

ようこそ我が家へ

気弱な中年銀行員が主人公。通勤途中のトラブルから、自宅はストーカーの標的にされ、出向先のメーカーでは実力者である営業部長の悪事に対処する。いずれも少しの勇気と周囲の協力で解決する。スリリングな展開は著者の得意とするところ。エンタメとして楽…

人生教習所

小笠原で開催された人材開発セミナー。そえぞれの事情を抱える4n人が父島での一次選考を突破し、同一グループとなる。2次セミナーは小笠原の特殊事情に焦点をあてる。戦後アメリカ領となりながら、返還。米系住民たちは国籍の選択を迫られる。個人の力を超…

ゲームのルールを変えろ

ネスレ日本初の日本人社長が自らの経験を元に著したリーダー論。グローバル企業でありながらローカルの裁量権は結構広い。キーワードは広義のマーケッティングとダイバーシティ。組織に忠実なものが評価される従来の日本的組織ではなく、積極的に提案しルー…

宰相のインテリジェンス

9.11と3.11日米を襲った二つの危機とそれに対処する政府首脳。インテリジェンスの有無とトップの決断に対する責任が際だった違いを見せる。ビンラディンを補足したオバマ大統領を賞賛し、右往左往したあげく現場に出向いた管首相には当然手厳しい。…

旅猫レポート

青年と飼い猫が友人を訪ねて廻る旅。それは不治の病におかされた主人公が新たな飼い主を捜すと同時に自らの来し方を確認する旅でもある。結局互いに別れる事が出来ず、猫は最愛の主人の最期を見とることになる。猫の視点から書かれる部分が多く、猫好きはお…

外尾悦郎ガウディに挑む

サクラダファミリアで石像彫刻に挑む外尾氏の半生を追うノンフィクション。大学を卒業してすぐ欧州に渡り、偶然たどりついたバルセロナでガウディの造形に圧倒される。言葉も通じぬ地でまさに無勝手流での挑戦。外国人が職人の世界へ溶け込み認められるまで…

パラダイスロスト

第3段。旧日本陸軍の秘密組織D機関の活躍を描く連作。部隊はドイツ、シンガポール、太平洋航路と日米開戦直前までを描く。パターンはいつも同じだが飽きさせない。残念ながら第一作の衝撃は薄れたきたかな。日曜一日で読破楽しめました。パラダイス・ロス…

総理の夫

国際政治学者から政治家に転身した美人妻と財閥一家の次男で鳥類学者の夫。妻が連合政権の権力バランスから日本初の女性首相となり、夫婦の周囲は一変する。消費増税をはじめまったなしの改革と政治の世界のどろどろした権力闘争を、純粋な理想とそこから発…

ゼロの血統

父子2代にわたる海軍パイロットの冒険譚。父は共産党のスパイへの機密漏洩を防ぐため殉職。子は第2次上海事変の最中の上海に満州国皇女を試作96戦で送り届ける。荒唐無稽ではあるが戦記エンタメと割り切ればの世界。日本側の主張がすべて正当化されてい…

運命のバーカウンター

リラクゼーションサロンを経営する著者の分身が主人公。経営に悩む若手社長がとあるバーで出会うメンタ−。酔っぱらいの「ベロベロ」社長が経営手法を指南する。含蓄のある教えが並ぶが、基本は権限委譲。日常業務は部下に委せ、一段高い経営判断に専念するこ…

水色の娼婦

アルゼンチンで日本人の母から生まれ、タンゴダンサーかつ娼婦として生きたヒロインの数奇な運命。大戦前後はベルリンに在住。愛人である日本陸軍のスパイと過ごした数年間が山場である。時代の流れに逆らい枢軸からの離脱と早期和平を願う努力は水泡に帰す…

巨大戦艦大和

沖縄特攻で沈んだ大和から奇跡的に生還した乗組員の証言で構成したNHK特集。当時10代の水兵たちもすでに90歳近くになり、取材はこれが最後の機会となるだろう。歴史となりつつある表層的な事実だけではなく、水兵たちの肉声で「死に方用意」の絶望的…

ソウルメイト

愛犬と飼い主の物語。犬種の異なる短編7編から構成。共通するのは人間と犬との深い絆と失うものの大きさ。いずれの犬も主人に忠実で賢い。東日本大震災ではぐれた柴犬を探し当てる感動の場面も。珠玉は最後の大型犬の喪失。愛犬を媒体として家族の絆も深ま…

野心のすすめ

著者がさえないOLから現在の地歩を築くまでの来し方を語り、現代の若者に前向きな生き方を促す。貧しい生活の中で自己研鑽のために投資し、チャンスを逃さず時流に乗った。女性としても貪欲で結婚、出産もこなす。常に自分を育てた母親への意識がある。全…

その英語、こう言いかえればササるのに

現役の通訳である著者が若者向けに書いた英会話の指南書。ビジネスシーンでよくあるシチュエーションで有用な言い回しを多数例示する。内容的には一応国際派を称する自分には常識の範囲。直訳の悪例を使うことはほぼ無いが参考にはなる。 This might be aski…

ヤッさん

銀座に巣くう角刈りのホームレス「ヤッさん」が主人公。矜恃を持つ生き方に主人公の若者は圧倒される。仕事はグルメ関係の仲介人。足と舌で稼いだ情報で築地と銀座の一流店を仲介する。短編5編からなる連作だが、それぞれの事件を解決するごとにヤッさんの…

99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ

できる人の仕事術。若いビジネスマンが対象のようだが基本的で常識的な内容。IT業界だけにスピード感に優先順位を置くがこれは全ビジネスで共通。全般に小技が目立つ。まあ知らない事項はなく読んで安心したのが最大の効用。 「とりあえず」でなく「まず」 …

ハイブリッドバブル

財政リスクを見れば、明らかにバブルでありながら、安定している日本国債の謎を、買い手側のメカニズムから解析する。微妙なバランスである「ハイブリッドバルブ」はアベノミクスによる日銀の大量買い入れで新たな局面を迎え、暴落あるいは安楽死のリスクが…

ボックス

大阪の私立高校ボクシング部が舞台。天才肌の暴れん坊ファイターと努力型の秀才ファイター。幼馴染の二人が同じ階級で他校の強敵に挑むと同時に、直接対決を含め競い合う。紆余曲折を経ながらの成長物語だが、ボクシングというスポーツの特殊性が著者の薀蓄…

日本建築集中講義

建築学者と日本画家とのコラボ。日本の建築史上重要な建物を訪ね、その解説を対談と漫画で綴る。対象は法隆寺から旧岩崎邸さらに昭和の住宅までを網羅。建築学上の解説と美学的な直感が直截的に述べられ興味深い。雑誌の連載だけあって軽めのエッセイのよう…

木皿食堂

人気の夫婦脚本家の作品を寄せ集めた構成。売らんかな出版であまり感心しない。冒頭のエッセイと巻末のシナリオは完成度が高くさすが。中盤の対談やインタビュー記事は作品を観ていない読者に取ってはややつらい。創作の苦しみはよく表現されているが。木皿…

信長の密偵

信濃の流れ者の兄弟が織田に捕らえられた歩き巫女を救出すべく尾張に向かう。折から今川の侵攻で風雲急な中、川並衆に紛れ込み、信長の命で砦の救出のため戦うことに。武勇と知恵を兼ね備えた主人公の魅力あふれるストーリー展開。エンタメ時代小説としては…