生活

誰も知らないジブリアニメの世界

著者による宮崎アニメの解析。子供向けファンタジーの前半、ファミリー志向となった中盤、魔女の宅急便から興業的には成功する。後半は私小説的な要素が強まり、解釈が難しくなる。基本的に宮崎ワールドには好意的。一般に知られていない裏話も満載で愉しく…

岡本太郎の見た日本

思想家でもあった岡本太郎の一面をその著作からひも解く。キーとなるのは戦後に書かれた三部作。パリ留学、中国への出征を経て、日本各地を訪ね民俗学的なフィールドワークの産物。縄文、東北、沖縄、韓国と原始宗教と結びつく日本文化のルーツを探る。東北…

春に散る

ボクシング小説。かってとあるジムの四天王と呼ばれたボクサーが、老年になり再集合。「チャンプの家」と名付けたシェアハウスで集合生活をしながら、有望な若手ボクサーを育てる。それぞれの必殺パンチを伝授し、最後は夢の世界チャンピオンを獲得する。引…

のっけから失礼します。

エッセイ集。女性ファッション雑誌への連載で巻頭に収録されたとのこと。自らの私生活ネタが中心であり、中年の女流作家の実情をユーモアたっぷりに記す。多分にデフォルメされている部分もあるだろう。家族も個性がたちユニークで笑わせてくれる。自身はE…

ブックオフ大学ぶらぶら大学

新古書店の巨大チェーンとなったブックオフマニアたち自身による投稿。独特の値決めシステムで思わぬ掘り出し物が手に入り、それを狙うコレクターやせどりを商売にする人々など、多くの人生を巻き込んでいく。一時の低迷を経て、現在はずいぶんと経営スタイ…

日本の進む道

対談。政治経済から教育、日本社会の特性まで幅広く議論。藻谷氏が問題提議をし、年長の養老氏が答える形で進む。二人とも「みんなで考える」=何も決まらない日本社会には辟易しており、2038年に予想される東南海地震での大変革を待つという皮肉な結論。日…

必ずできる。もっとできる。

駒澤大学陸上部を率いる大八木監督の自伝。平成には箱根駅伝で無敵を誇ったが、その後苦しい時代が続く。自らの指導スタイルを見つめ直し一新。これまでのスパルタ式から選手との対話を重視する姿勢に。根本にはよく観察し、個性や体調まで把握し、指導して…

かがみの孤城

ファンタジーSF。ひどいいじめに会い登校できなくなった中1の主人公。鏡を通して不思議な城に招かれる。同様の状況の仲間が男女計7人。願いがかなう鍵を探すなかで、それぞれの事情が明らかにされ、仲間意識が醸成される。同じ中学に属することが明らかと…

京都不案内

作家である著者による京都エッセイ。東京在住だが、時折京都に滞在し、北白川あたりに定宿を持ち、街歩きと文人たちとのネットワークを楽しむ。京大の先生方や卒業生がつぎつぎ登場する。予測していたよりは高尚な世界。それはそれで楽しいが、時間の流れ方…

悪名

ダルビッシュの実弟による自叙伝。野球エリートの兄と違い、多動性で小学生のころから、ケンカに明け暮れ、羽曳野に名を響かせる。逮捕歴は数えきれないほど、少年院やアメリカの隔離高校を転々とする。家族や周囲に支えられ、現在はようやくおちつき西成で…

ワンダーランド急行

SFユーモア小説。平凡な中年サラリーマンが、パラレルワールドに迷い込む。体験するのは3つの世界。個人の人生が何かのきっかけで別の道を選んだ異世界が提示される。行き過ぎた社会に対する風刺も効いている。スピード感よく読ませるのはさすがだが、読…

老舗書店有隣堂が作るYouTubeの世界

横浜の地元書店有隣堂。長期下降傾向にある書籍の売り上げに、社長がYouTube配信を指示。企業色を廃し、辛口で面白いコンテンツが話題を呼び、20万登録まで達成。ヒントはマツコの知らない世界。社内の特徴ある人材がプレゼンし、キャラのフクロウが突っ込み…

凛として弓を引く

弓道青春小説。高校入学を決めた主人公は、神社の境内にある弓道場へ。体験教室から入会。様々な年代の弓引と出会いながら、人間的に成長していく。最後は初段を取り、初恋もゲット。予定調和のハッピーエンドだがテンポ良く読ませてくれる。もともと興味の…

残月記

月を題材にした中編3篇で構成。いずれもパラレルワールドを描く。発送、設定は興味深いが、文体が重く読みずらい。表現はもう少し直線的でもいいのではないか。著者の作品は初めてだが、残念ながら趣味では無い。 残月記 作者:小田雅久仁 双葉社 Amazon

人生はそれでも続く

読売新聞に連載された「あれから」。様々な分野で脚光を浴びた人のその後を追うシリーズ。まさしくタイトルにあるように人生は続いていく。その後の生き方が重要。若手記者の力作ぞろいで読みごたえがあった。 人生はそれでも続く(新潮新書) 作者:読売新聞…

湯道

廃業寸前の地方の銭湯。兄弟の葛藤。建築家の兄は取り壊しマンションに建て替えるつもりであったが、生真面目な弟や、湯を楽しむ客たちになじむうちに心境が変化していく。タイトルの湯道は入浴を道に高めた家元の話。定年まじかの弟子の物語を絡ませる。予…

やっぱり食べに行こう

食に関するエッセイ。日本、世界各地を仕事で巡り、その土地土地に美味を発見。自らの思い出と共鳴させながら綴る。高級店は数少なくどちらかと言えば庶民感覚。取材旅行でパリ、スペインのネタが多い。毎日新聞日曜版への連載。軽妙な語り口はさすが。 やっ…

座右の寓話

古今東西の寓話を集め、そこから現代社会での生き方のヒントを抽出する。全77編。結論から言うと寓話がすごい。古人の知恵の集大成である。半分ぐらいは知っていたイメージ。もう少し解説を絞り込んだ方がいいかな。愉しく読めました。 -1.01と0.99の法則 -…

バカと無知

最近の脳科学、心理学の成果から人間の本質に迫る。社会的な生物である我々は生存のための戦略が遺伝子に組み込まれている。集団の一員としての機能と集団内で生殖のために一定のポジションを獲得する必要がある。前著の続編の位置づけ。言いにくいタブーを…

49%に嫌われ、51%に好かれる社長になれ

著者はキャバクラ嬢から経営者に。北新地で有名店を営む。華やかな女の世界の維持には気遣いが欠かせない。キャッチーなタイトルは部下との緊張感を醸成すること。組織の運営についてはどの世界も基本は一緒。部下に気づきを促し、成長させる。内容的には常…

脳は若返る

一般に粘れとともに老化が考えられる脳だが、著者は対応によって若さを保てると主張する。一言で言えば社会と繋がり、好奇心を持って挑戦を続けること。ドーパミンの分泌がキーとなる。エピファニーがあるとベスト。まさにアクティビシニアとなりエージレス…

その先の世界へ

日本の高校生バスケ選手を、アメリカの留学させるプロジェクト。スラムダンクの著者が基金を拠出。すでに10年を超える実績。圧倒的な体力差と語学の壁を乗り越え、現地でNBAを目指すか帰国してBリーグのプロとなる。プレイタイムの獲得がまず課題。アメリ…

会話を哲学する

会話を科学する。副題にあるようにコミュニケーションとその先にあるマニュピレーション。小説や漫画等フィクションを例にあげ、パターン化する。コミュニケーションでは一定の約束事を形成。その先で話者の関係性により複数の分岐が生じる。試みとしては面…

レッドゾーン

コロナ感染の初期。舞台は長野の公立病院。唯一の感染症指定病院となり、陽性者を受け入れる。立ち向かうはわずか3人の内科医のチーム。それぞれの事情を抱え、考え方も異なるが、厳しい対応の中でやがて一体感が生まれて行き、院内で協力者も現れる。ワクチ…

未来の地図帳

人口動向から日本の未来を予測する。これが第3弾。各地区、都市の予測を詳細に説明。全国的に出生率が下がり、自然減となるなかで、東京は辛うじて増加傾向だが、やがて供給元が疲弊するので、地方都市、大都市の順で減少が加速する。驚くべき数字がならぶ…

その本は

話題の共著。稀代の読書家の二人が、本に関するエピソードを創作する。本を擬人化しユーモアたっぷりにその存在意義をアピール。書籍とそれを取り巻く文化への愛しみが全篇から感じられる。 その本は 作者:又吉直樹,ヨシタケシンスケ ポプラ社 Amazon

銀河鉄道の父

宮沢賢治の父親政次郎が主人公。厳格な明治の父、古い商家のしきたりで本人は小学校卒。質屋を経営し財を成し、地元の名士である。5人の子供の父親として愛情にはあふれて、常に気にかけてはいるが、表には出さない。特に自由奔放な賢治とは折に触れて衝突…

すべてのことはメッセージ

荒井由実の伝記小説。幼少期からデビューまでを描く。八王子の資産家の家に生まれ、恵まれた環境で育つ。母親が当時としては時代の先を行く積極的なタイプ。本人は成績優秀、何をしても才能を発揮。立教女学院で自由奔放に青春を謳歌。GSや洋楽に触れていく…

世界の富裕層を魅了する日本酒の常識

著者は奈良大宇陀の蔵元。元銀行員で海外駐在の経験もある。日本酒の目指す方向性は、純米、生酛(キモト)。あえて大吟醸ではなく、米の削りをおさえて複雑味を残す。燗酒を推奨。明治時代の税制は酒税に頼っており、醸造後早い出荷が必要だった。今後は熟…

読書の絵日記

著者がSNSに投稿した絵日記。本の装丁をスケッチし、その内容を1頁にまとめる。選書は直感で行うということであるが、海外の文芸作品と絵本、童話がめにつく。著者の本業からして当然か。興味深い内容の作品も紹介されており、こちらも読みたいが手が回らな…