生活

目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

全盲の白鳥さんとのアート鑑賞貴。健常者が美術をまえに見た印象を会話することで、想像を膨らますようだ。面白い体験記が続くが、テーマは意外と統一性がなく、芸術論から優勢主義や差別の問題まで幅ひろく広がる。つきつめれば求められるのは人間同士の関…

夢ノ町本通り

これまで世に出した多数のエッセイから、書物、読書に関するものを再編成。膨大な読書歴の遍歴がつづられる。さすがに時代的には古いものも多く、書評欄では図書館にはない作品が並ぶ。中盤の本を編むではみずから編集に携わった山本周五郎の作品紹介が続き…

中田敦彦の妻になってわかった自分らしい生き方

芸能人夫婦の子育て記。著者は横浜国大のミスコンからデビュー。そこで知り合った売れっ子芸人のオルラジ中田と結婚。コロナ危機を契機に家族でシンガポールへ移住する。日本での殺人的なスケジュールから解放され、異国で子育て経験することで家族の絆が深…

展望塔のラプンツェル

舞台はおそらく川崎市南部。多民族が暮らし貧しい地区。不良やヤクザが跋扈し、様々な社会問題は日常茶飯事。主人公は児童相談所の職員として日夜搬送する。若いカップルと育児放棄された幼い子供。不妊に悩む中年主婦と3本の線が物語を織りなす。中盤で救い…

忘れられない一冊

蔵書に関するエッセイ。82人の著名人が自らの人生に大きな影響を与えた1冊を選び、思い出を語る。私と同年代の作家らが多く、選書もやや古い。手練れの書き手が短くまとめているので読みやすい。週刊朝日の連載。文庫で2013年。 忘れられない一冊 (朝日文庫)…

さすらい猫ノアの伝説

児童文学のジャンル。舞台は小学校。問題のあるクラスに登場する都市伝説の黒ネコノア。高学年の難しい時期に直面する問題を見事に解決に導く。基本みな好人物で、ちょっとしたズレが増幅していく。まっすぐに向き合って解決していくのは大人の世界も同じ。…

その疲れは最高のツマミになる

大型トラックの女性ドライバー。高校卒業後に上京。人間関係の少ないドライバー稼業を選択する。SNSが評判となり、一気に有名になる。生き方は愚直で不器用。きつい肉体労働にも真正面から取り組むところには好感。文章はまだ稚拙で、主張は常識の範囲内で平…

人はどうして老いるのか

人の一生、特に老いのメカニズムについて解説する。基本は「遺伝子の乗り物」であることに変わりはない。遺伝子に取って次世代の繁殖力が確立した際に、効率の悪い老年はその役目を終える。著者は「遺伝子のシナリオ」と呼び、その中でいかに生きるかは個人…

特攻服少女と1825日

著者はレディース向け雑誌「ティーンズロード」を創刊。編集長となる。派手な外見だが、投稿ページを充実させ、はみ出した少女たちから絶大な支持を得る。本書はその顛末記と総長たちの後日談を語る。厳しいルールに支配された縦社会。喧嘩や制裁は当たりま…

自由の丘に小屋を作る

フリーライターの夫婦が、自力で山梨に小屋を建てる。設計士や大工がボランティアで協力。チャレンジに面白がる人たちを巻き込んで3年がかり。途中コロナの影響や自らの著作の入選もあって、遅々として進まない。本書の主題はむしろ娘の成長期。不妊治療の…

ひとり趣味入門

人生の後半にかけて趣味開拓の勧め。大上段に振りかぶるのではなく、好きなこと、興味を持ったことから試してみるのが良い。若い時と違い、仲間とワイワイやるのではなく、一人でも楽しめることがポイント。本人も多くの趣味を紹介しているが、魅かれるのは…

東京ひがし案内

東京の東地区、東京駅から王子、町屋あたりを散策する。下町情緒あふれる一帯。作者の好みは歴史的建築に旨いもの屋。文学史も噛合わせる。秀逸な地図とイラストも掲載。2010年の著書であり、それからコロナもあり変わってしまった部分も多いであろう。馴染…

蔦重の教え

江戸中期の吉原にタイムスリップした主人公。出会ったのは蔦屋重三郎と喜多川歌麿。辣腕プロデユーサーでありながら、人情味あふれる蔦重の魅力に引き込まれていく。真面目に働き、浮世絵の制作過程を見るうちに、これまでの人生を見つめ直す契機となる。し…

かっかどるどるどぅ

4人の恵まれない人々の物語がそれぞれ進む。真面目に生きながらそれぞれ事情があり、破産や自殺の寸前。救世主となる老婆は自宅を開放し、ちゃぶ台で食事を提供する。自らも不運を乗り越え、人の輪を大切にする。最後は大往生。現代の世界情勢や環境問題もま…

一流の共通点

著者はガンバ大阪のスカウト、育成担当として数多くの選手を育てる。必要なのは技術ではなく人間性。10のカテゴリーに分けるが、如何に素直に他人の意見を聞き、それを継続的に身につけることができるか。傾聴力と主張力も必要。つきつめて言えば、姿勢と心…

あの時やっときゃ良かったという後悔は即忘れよう

サブタイトルの通り、飲み屋のおっさん客113人に聞いた人生訓。気楽に笑える。下ネタが多いのは酒のせいか。つなぎの1冊。たまにはいいか。 「あのときやっときゃ良かった」という後悔は、実際にはやれる可能性などなかったのだからソク忘れよう 作者:「裏…

わからなくなってきました

エッセイ集。著者は劇作家。身の回りに起きた出来事をネタにユーモアあふれる文章で記述。雑誌掲載は90年代半ばで、さすがに世相は異なるが、あまり古さは感じない。年齢的には今の自分に近いせいか。談慶師匠の推薦本。愉しく読めました。 わからなくなっ…

吉本興業の約束

現会長大崎氏の対談をベースとする。ダウンタウンやハイヒールのマネージャーからスタートし、心斎橋2丁目劇場を創設。旧来の同族会社から近代的なエンタメ会社へ脱皮する。極めつけは反社会的勢力から決別するための非上場化。すべてを語られた訳ではないが…

魔法の読書法

著者のセミナーで推奨する読書法を紹介。数ある書物の中からいかにメンターに出会うか。基本は多読と速読による選別。また実を残すために読書会も有用。自慢話が鼻につくが、特にアメリカでの科学的な根拠を多数挙げているところは評価すべき。あまりにビジ…

60歳から幸せが続く人の共通点

共著。老人学と幸福学を専攻とする著者らによる老年幸福学。豊富な統計データから結論を導く。第2の人生では発想の転換が必要。特に男性の場合、難易度が高いケースがある。内容的には良く言われるケースで、地域で新たなネットワークを構築し、多少なりと…

静夫さんと僕

著者が同居する義理の父親。奄美大島出身の苦労人だが、天真爛漫な生き様。漫才のネタにもされているユニークな生活ぶりだが、なぜか憎めず愛すべき人物像。奥様の両親との同居は気苦労も多いが、親孝行の想いも満たす。文章も簡潔な短編であっという間の読…

RICE IS COMEDY

琵琶湖北岸、現在は長浜市だがかっての西新井町。人口4000だがご他聞にもれず過疎に悩む。中学同窓5人組が地域おこしに立ち上がる。キーとなるのはコメ作り。自慢の米を羽釜で炊いて配るパフォーマス。その名もゲリラ炊飯。リーダーとなる清水氏の熱量…

解剖京都力

読売新聞の地方版連載。観光だけでは無い京都の潜在力をルポする。キーワードは企業、老舗、大学、宗教、ソフトパワー。ユニークな組織が多く、魅力的な人材も多数存在するが、総じて右肩下がりなのも事実。人口減少がベースにある。特に伝統産業の衰退は深…

いつか王子駅で

抒情的な純文学。王子、尾久、荒川沿いが舞台。作者の分身である私が日常の中で文学や競馬などを回顧しながら物語は進む。馴染みのある風景が描かれて親しみが湧く。文体は古風であるが、慣れてくると読むづらくは無い。2001年の作品だが、あまり変わってい…

いつか王子駅で

抒情的な純文学。王子、尾久、荒川沿いが舞台。作者の分身である私が日常の中で文学や競馬などを回顧しながら物語は進む。馴染みのある風景が描かれて親しみが湧く。文体は古風であるが、慣れてくると読むづらくは無い。2001年の作品だが、あまり変わってい…

この夏の星を見る

コロナ禍の学校生活。多くの行事が中止となり、部活も制限される。感染の拡大により、家業や家庭への影響も出る。中高の天文学部がひょんなことから繋がりそれぞれ自作の望遠鏡を製作、スターキャッチのコンテストを開催。各校ごとのドラマが展開される。巧…

フィリピンパブ嬢の経済学

著者は大学院生時代に、フィリピン出身のパブ嬢と巡り合い結婚。本編は続編で出産、子育てを中心に描く。ほとんど日本語がわからず、何事にも逡巡する妻。周囲のサポートもあり、逞しい母親に成長していく。そのうらで不法入国者たちの厳しい現実がレポート…

失踪願望

コロナ下の日記と闘病記等の短編で構成。冒険作家として名を馳せた著者も80歳前。わりと初期に罹患し生死の境をさまよう。ネットワークは多彩で種々の遊びと酒の日々。終活は常に意識している。日頃の生活の中で夫人との固い愛情が微笑ましい。文章はキレ…

誰も知らないジブリアニメの世界

著者による宮崎アニメの解析。子供向けファンタジーの前半、ファミリー志向となった中盤、魔女の宅急便から興業的には成功する。後半は私小説的な要素が強まり、解釈が難しくなる。基本的に宮崎ワールドには好意的。一般に知られていない裏話も満載で愉しく…

岡本太郎の見た日本

思想家でもあった岡本太郎の一面をその著作からひも解く。キーとなるのは戦後に書かれた三部作。パリ留学、中国への出征を経て、日本各地を訪ね民俗学的なフィールドワークの産物。縄文、東北、沖縄、韓国と原始宗教と結びつく日本文化のルーツを探る。東北…