銀河鉄道の父

宮沢賢治の父親政次郎が主人公。厳格な明治の父、古い商家のしきたりで本人は小学校卒。質屋を経営し財を成し、地元の名士である。5人の子供の父親として愛情にはあふれて、常に気にかけてはいるが、表には出さない。特に自由奔放な賢治とは折に触れて衝突する。クライマックスは長女の結核による早逝。有名な詩のイメージと異なり二十歳を過ぎての最期。ここか賢治の文才は一気に開花するが、彼もまた病魔に襲われる。ほとんど知られていない父親像を丹念に描く。直木賞はうなずける。