2023-01-01から1年間の記事一覧

ナポレオン街道

稀代の英雄の足跡を訪ねる紀行文。生誕の地コルシカ島からパリ、イタリア、エジプトと巡る。行く先々で無頼派らしくギャンブルと酒に興じる。それも旅情を掻き立てて良い。ナポレオンにまつわる書物は30万冊を超えるという。軍事的才能は言うに及ばず非常に…

トヨタのEV戦争

出遅れた感のある日本のEV車戦略。盟主トヨタの将来をアナリストが分析する。EVの神髄は電池とSDV(Software Defined Viecle)。特に後者は車のスマートフォン化として繰り返し強調される。この両面で立ち遅れる。テスラやBYDは垂直統合による内製化を完了。…

蔦重の教え

江戸中期の吉原にタイムスリップした主人公。出会ったのは蔦屋重三郎と喜多川歌麿。辣腕プロデユーサーでありながら、人情味あふれる蔦重の魅力に引き込まれていく。真面目に働き、浮世絵の制作過程を見るうちに、これまでの人生を見つめ直す契機となる。し…

政治はケンカだ

暴言市長として名を馳せ、マスコミの批判を一身に浴びた泉市長。元朝日新聞記者の鮫島氏との対談で、これまでの政治家人生を語る。貧しい漁村に生まれ、弟は障害者。10歳にして市長を志し、市民に優しい政治を目指す。東大時代は学生運動にかかわる。その後N…

かっかどるどるどぅ

4人の恵まれない人々の物語がそれぞれ進む。真面目に生きながらそれぞれ事情があり、破産や自殺の寸前。救世主となる老婆は自宅を開放し、ちゃぶ台で食事を提供する。自らも不運を乗り越え、人の輪を大切にする。最後は大往生。現代の世界情勢や環境問題もま…

2040年の日本

近未来予測。日本の未来は人口減少、高齢化により決して明るくない。成長率は良くて1%。政府試算の2%は現実を隠ぺいするためのまやかしでさる。急激に変貌する社会に対して、デジタル化が急務。それを担う人材が圧倒的に不足している。リスキリングを含め…

硫黄島上陸

太平洋戦争最後の激戦地硫黄島。軍事基地として一般人の上陸は原則禁止。戦死率95%の島にはなお一万以上の遺骨が眠る。著者は新聞記者でありながら自発的に収集団に参加。その現状と謎の解明を本書に託する。様々な神話があるが、外務防衛筋のアメリカに…

言い訳するブッダ

仏教経典の中の、矛盾を「言い訳」としてユーモアたっぷりに解説。ブッタの時代の初期から、現代の各宗派に至るまで、普通では解説できないところに辻褄合わせを行う。著者は浄土宗の僧で高名な仏典の研究者であるが、初心者向けに平易に解説。好感が持てる…

一流の共通点

著者はガンバ大阪のスカウト、育成担当として数多くの選手を育てる。必要なのは技術ではなく人間性。10のカテゴリーに分けるが、如何に素直に他人の意見を聞き、それを継続的に身につけることができるか。傾聴力と主張力も必要。つきつめて言えば、姿勢と心…

あの時やっときゃ良かったという後悔は即忘れよう

サブタイトルの通り、飲み屋のおっさん客113人に聞いた人生訓。気楽に笑える。下ネタが多いのは酒のせいか。つなぎの1冊。たまにはいいか。 「あのときやっときゃ良かった」という後悔は、実際にはやれる可能性などなかったのだからソク忘れよう 作者:「裏…

Chatter頭の中のひとりごと

ここでのタイトルChatterとは、自分自身の内なる声で、良くない予測を繰り返しネガティブな方向へ導く。誰にでも日常ある現象。心理学的な実験、解析によりそのメカニズムを解明、予防策を示す。結論は言ってしまえば当たり前で、ズームアウトし客観的な視点…

わからなくなってきました

エッセイ集。著者は劇作家。身の回りに起きた出来事をネタにユーモアあふれる文章で記述。雑誌掲載は90年代半ばで、さすがに世相は異なるが、あまり古さは感じない。年齢的には今の自分に近いせいか。談慶師匠の推薦本。愉しく読めました。 わからなくなっ…

吉本興業の約束

現会長大崎氏の対談をベースとする。ダウンタウンやハイヒールのマネージャーからスタートし、心斎橋2丁目劇場を創設。旧来の同族会社から近代的なエンタメ会社へ脱皮する。極めつけは反社会的勢力から決別するための非上場化。すべてを語られた訳ではないが…

岸辺露伴ルーヴルへ行く

映画のノベライズ。売れっ子漫画家の主人公が、謎の漆黒の絵画に挑む。若い時の自身の謎の美女との経験も絡む。最後はホラーサスペンス仕立て。まあエンタメとしては楽しめるレベル。 映画ノベライズ 岸辺露伴 ルーヴルへ行く (集英社オレンジ文庫) 作者:北…

人生は攻略できる

若者向けの人生の指南書。激しく変わる時代に合わせてこれからの生き方を示す。人的、金融、社会の3つの資本が重要。特に本人の能力を高めることで後の二つはついて来る。サラリーマン社会はやがて絶滅し、フリーランスの時代が来ると予測。ネット上での評…

安倍晋三実録

NHKの番記者として、長年安倍氏に張り付いた著者。没後にその実績、魅力を普段表面には出ない裏の部分まで踏み込んで記録。基本はシンパ。最大の功績は地球儀を俯瞰する外交。誰に対しても物おじせず、堂々と日本の国益を主張する。海外首脳と個人的なネット…

自然、文化、そして不平等

講演をまとめたもの。経済史上の格差問題について豊富なデータを基に平易に解説。各国ともに累進課税がその対策の中心となるが、レーガノミクスで緩和したアメリカを中心に格差が拡大する方向にある。より深刻なのは環境負荷で、富裕層の使用分がCO2放出の過…

魔法の読書法

著者のセミナーで推奨する読書法を紹介。数ある書物の中からいかにメンターに出会うか。基本は多読と速読による選別。また実を残すために読書会も有用。自慢話が鼻につくが、特にアメリカでの科学的な根拠を多数挙げているところは評価すべき。あまりにビジ…

旅がグンと楽になる7つの極意

最新の海外旅テクニック。ネットやスマホは積極的に利用。判断基準は楽になるかどうか。旅の本質には影響を与えない。伝説のバックパッカーもシニア層となり、スタイルは時代と自らの年齢に合わせているとのこと。文章は変わらず巧みで、こちらの旅心をくす…

ほんとうの豊かさってなんですか

「世界で一番貧しい大統領」として時の人であったウルグアイのムヒカ大統領。前半を対談、後半を池上氏の解説でまとめる。温和な人柄に見えるが、もともとテロ組織の闘士であり、長年の投獄も経験する。富の偏在、格差を憂い、政治による変革を求める。特に…

マチスのみかた

画家である著者のマチスへの想い。戦前のニースやパリで巨匠を訪ねた時の思い出が繰り返し語られる。マチスの制作はしっかりしたデッサンが基本でそこから余計なものをそぎ落とし簡略化していく手法。デッサンは何枚にもおよび、油彩に入ってからも書き直し…

60歳から幸せが続く人の共通点

共著。老人学と幸福学を専攻とする著者らによる老年幸福学。豊富な統計データから結論を導く。第2の人生では発想の転換が必要。特に男性の場合、難易度が高いケースがある。内容的には良く言われるケースで、地域で新たなネットワークを構築し、多少なりと…

落語で資本論

古典落語を引用し、難解な資本論を解説しようとする意欲的な取り組み。著者は慶応大でマルクス経済学を専攻したいわば専門家。どちらかというと落語の世界、とりわけ師匠である談志の言動にスポットが当たる。なんとなくだがエッセンスは感じられたか。読み…

静夫さんと僕

著者が同居する義理の父親。奄美大島出身の苦労人だが、天真爛漫な生き様。漫才のネタにもされているユニークな生活ぶりだが、なぜか憎めず愛すべき人物像。奥様の両親との同居は気苦労も多いが、親孝行の想いも満たす。文章も簡潔な短編であっという間の読…

ドーキンス博士が教える「世界の秘密」 

若者向け科学読本。本業の生物学から最新の分子物理、化学、天文学まで幅広く科学の基礎を解説。各章神話と実際の世界を対比させて平易に解説する。素晴らしいのはグラフィックでより理解が進む構成。9割がたは知識として常識の範囲だが、あらためて目を開か…

人類を変えた素晴らしき10の材料

材料工学エッセイ。専門用語はほとんど使わず、身の回りにあるものから重要な素材をピックアップし、その構造と発展を解説する。鋼鉄、紙、コンクリート、チョコレート、フォーム、プラスチック、ガラス、グラファイト(炭素)、磁器、インプラント(生体材…

RICE IS COMEDY

琵琶湖北岸、現在は長浜市だがかっての西新井町。人口4000だがご他聞にもれず過疎に悩む。中学同窓5人組が地域おこしに立ち上がる。キーとなるのはコメ作り。自慢の米を羽釜で炊いて配るパフォーマス。その名もゲリラ炊飯。リーダーとなる清水氏の熱量…

解剖京都力

読売新聞の地方版連載。観光だけでは無い京都の潜在力をルポする。キーワードは企業、老舗、大学、宗教、ソフトパワー。ユニークな組織が多く、魅力的な人材も多数存在するが、総じて右肩下がりなのも事実。人口減少がベースにある。特に伝統産業の衰退は深…

ガリレオの求職活動、ニュートンの家計簿

コペルニクスからニュートンまで、ルネッサンス以降の科学者の生活面に光を当てる。一言で言えば、パトロンの時代から近代的な研修組織への変遷。その偉大な科学的業績から、高邁な人格者であるように思われがちだが、それぞれに生々しい私生活がある。性格…

いつか王子駅で

抒情的な純文学。王子、尾久、荒川沿いが舞台。作者の分身である私が日常の中で文学や競馬などを回顧しながら物語は進む。馴染みのある風景が描かれて親しみが湧く。文体は古風であるが、慣れてくると読むづらくは無い。2001年の作品だが、あまり変わってい…